サツマイモはなぜ太ったのか

 収穫したデカ太りサツマイモのことが知りたくて、県の農林総合研究センター園芸研究所の露地野菜担当に電話してみました。
 応対に出た女性に、状況を簡単に説明し担当者を、と言ったら自分が担当であるとのこと。彼女は、そういう報告は聞いたことがないが実物を見ての判断が一番いいというので、持参して話をきくことにしました。
 鶴ヶ島農業大学校の敷地の一角に、埼玉県農林総合研究センター鶴ヶ島試験場はあります。鶴ヶ島は支所で本所は久喜にあります。仕事は、ホームページによると園芸作物の品種の育成及び選定、園芸作物の営農技術及び商品化に関する研究開発、とあります。

 電話の女性は農家の若奥さん風。イモ類の栽培技術の研究が専門だという。さすが専門家です、実物を見てすぐ状況を判断しました。
 結論はこうです。
・私には品種は不明だったが、これはベニアズマ。埼玉県のサツマイモ生産の9割を占める品種。
・ベニアズマには、こういう肥大化は一般的に起こることで、プロの生産農家にもめずらしいことではない。
・苗の状態や植える時期、気候、土壌の条件などでよくおこる。また収穫が遅いと肥大化が進み商品価値がなくなるので、普通は早く収穫してしまう。
・太らすと甘みは増えるが、ホクホク感が減っておいしい感覚が無くなる。
等々。
 何ということはない。収穫せずに放っておいたのも一因。放射性物質のせいだろう、なんてことはとんでもない誤見当違いでした。ちなみに、サツマイモについても県内4か所で放射性物質調査を行っており、不検出とのこと。
 まだ掘り出していないのがたくさんあるので、横着心が起こって聞いてみました。サツマイモは、掘り上げずに生かしたまま冬越しをさせるのが出来るか、と。
 答は、南方系のサツマイモは絶対ダメで、寒さに極端に弱く、温度管理一定の保存が必要、ということ。
 サトイモやヤツ頭は大丈夫だがなぁ、というと、彼女は窓の外を指差して、はい、その通り可能です、と言った。遠くに盛り上がった畝が何本もあり、みなサトイモの植えたままの保存でした。茎の切り口に雨が入らないようにビニールマルチが必要。
 途中から研究所副所長も加わって、イモと農業談義。
 副所長曰く、サツマイモは簡単そうで、非常に気難しいというか、よくわからない適応性がある。同じ畑でも、土や肥料の条件を変えたわけでもないのに、同じ品種で場所によって味がかなり変わるらしい。収穫の手伝いに来る近所の奥さん方は、あそこの畝だ、こっちの場所だと言って旨いイモを選ぶという。
 自然には不思議なことはいくらでもあるようです。
 この園芸試験場と農業大学校は平成25年に県の方針で熊谷に移転します。跡地については、県が戦略的環境影響評価報告を策定、縦覧や説明会を行って3案の評価を行いました。目の前が圏央道、金の卵を産む場所です。環境面重視の案か企業誘致重視の案になるのか、境を接している日高市でも説明会が今年初めに行われました。
 帰りに、師匠のところに寄って年末のあいさつ。ストーブ小屋に日高で一番のコメ作り農家も来ていました。
 師匠に田んぼが出来なかった弁解とご無沙汰のお詫びをした後は、3人でコメ作りの話。
 師匠「来年はやるのか」
 私 「もちろん、やる。早植だ」
 師匠「聞いておくよ。証人もいることだし」(笑い)。
 久しぶりに畑と田んぼの話で楽しかった。