実りの秋


 実りの秋が近付いてきました。日に日に田の色が変わっていきます。4種類の稲を作ってある田んぼは、色の違いがはっきりしてきました。手前の方から農林48号、もち米、赤米、みどり米、農林48号。
 農林48号は穂が出るのが遅く、したがって実りも遅く11月でも青々としている、とモミをいただいた農家の主人は言っていました。しかし、早、重たげに頭を垂れ黄金色が深まりつつあります。この4種の中では一番早く稲刈りができそうです。
 ――この文章を書いた後確認したところ、11月に実るのはみどり米で、農林48号は10月初めから中旬ころだとのこと。私が聞きちがえていました。それなら現在の生育状況からして納得です――
 師匠は、今年は「進むのが早い」と言っていました。つまり、作物全般が熟すのが早い、というような意味ですが、自然現象として例年に比べ、そういう感覚が直観としてあるということです。明白な理由をあげませんがまた断定もしませんが、天候と作物に関しての師匠の直観には、いつも聞いてから大分後になってから、なるほどそういうことか、と思います。
 さて農林48号。もう一度おさらいです。
山梨県教育委員会の峡南教育事務所地域教育推進担当が作成するHP「やまかいの四季」に分かりやすい説明がありました。このHPは地域の資源を解説して中学、高校の理科教材にしようという試みです。
「美味しいお米というと、新潟魚沼産のコシヒカリが全国的に有名だが、魚沼産コシヒカリに勝るとも劣らない美味しいお米が山梨県武川産の農林48号という米だ。農林48号は、現在美味しいお米のルーツになった農林8号と陸羽132号を交配して、昭和24年に愛知県の農業試験場で誕生した。
 開発当時は、味が良く収量も多いので富山、栃木、山梨で奨励品種に指定されて盛んに栽培されたが、出穂期が遅く、冷害やイモチ病に弱い、乳白色の粒や未熟米が多いので、検査評価が低くなって高く売れない、などのため、現在では山梨県武川村周辺以外ではほとんど栽培されていない。
 しかし、この農林48号はタンパク質、アミロース、水分、脂肪酸度などの成分による比較でも、ヒトによる食味検査でも、魚沼産コシヒカリに匹敵する高い評価を示している。特におにぎりにして食べた時の美味しさは他の追従を許さない。最近、その味の良さが広く知られるようになったが生産量が少なく、あまり市場に出回らないため「幻の米」などとも言われている」
 確かに、所々、実が入っていない真っ白な未熟の穂が何本かありましたが、気になるほどではありません。しかし、この気にはならない点が、現在のコメ検査制度では大きな意味を持ってしまいます。乳白色の粒や未熟米が混ざっていると一等米にはならず、買上げ価格が下がってしまいます。
 色の付いた米の混入率が1000粒に1粒(0.1%)が一等米、1000粒に2粒(0.2%)が二等米、1000粒に3粒(0.3%)は三等米に、7粒(0.7%)は等外米にという格付けがあります。一等米と二等米は60キロで約1000円の買入れ価格の差があるため、一等米にすることは米農家の死活問題です。そのため農薬を使って見栄えのいい米を作り、そして早く実って生産性、経済性のいい特定の品種に偏ってしまうわけです。
 この検査があるために、どれだけの無駄な制度にお金と人が使われているか。私はそういうところに気を使う必要がないので、純粋な自然栽培ができます。
 稲の成長期にはわかりませんが、実ってくると、栽培法による違いが分かってきます。一本の苗からこれだけ太い茎が増え、しかも全くの無肥料でこれだけ実るのです。水さえあればそして欲を掻かなければ、おいしい安全なこめを誰でも食べることが可能となるはずです。
 消費者から生産者まで、米を“欲”でくるんでしまったことが消費低減の原因があるのではないか。この制度の外で米を作れば、環境と安全が両立する地産地消が可能となります。環境も食料の安全も別個のものではなく、一本につながったものとして見る発想が広がれば変わっていくと思います。


 みどり米は今、穂が成長する時期です。こんなに穂の色が違うとは思いませんでした。田植えの後の補埴をやった時、どこかで苗を取り違えてしまったのですが、この色のお陰で2枚目の48号の中にまとまって混じっていることが分かりました。印を付けておけば刈取りを別にできます。