市ヶ谷、3市長パネルディスカッション

 市ヶ谷で開かれたパネルディスカッションに出席。ディスカッションのメンバーは、1月のシンポジウムの時の発表者である熊谷千葉市長と山中松坂市長、それに今回は松本和光市長が加わる。
 会場に少し遅れて入ると、松本和光市長が発表している所だった。
 和光市はかつてホンダの本社工場の所在による法人税で潤ってきた。ホンダの工場の世界各地への拡散で以前の税収は到底見込めず、財政悪化阻止と豊かな時代の市民サービスの見直しが市長の最大目標です。
 地方交付税の不交付団体だったのが公布団体となり、市民にいかにその意義を理解してもらい、財政再建と市民サービスのバランスをとっていくか、松本市長の基本的姿勢は、徹底した情報公開と市民参加です。
 情報公開は徹底しています。各部長の事業実施方針、市長と部長出席のトップレベルの会議の議事録公開までおこない、市長のマニフェストに基づく市政全体の方向の周知に努めています。
 市民参加は、審議会や各種委員会、公開会議等の頻度や規模の拡大という、従来手法に頼りながらその機能と効果の上昇をはかっているようです。
 松本市長の発言は最後のところしか聞けなかったのですが、市長の悩みは、市民参加の拡大を目指してもその範囲と厚みの拡大というところまでなかなか行かない、ということです。どうしても同じ顔ぶれが出てきてしまう、これは従来から言われてきたことで、それを補うためにアンケート等の手段を組み合わせることはどこの自治体でも行われていることです。
 松本市長は、市民の直接の声を聞くシステムの充実を試行錯誤していますが、市長はまだ1期目、こういう努力の成果は一朝一夕では出てこない、我慢してやっていけば浸透する時期がくると思います。財政が豊かであったために市民サービス料金が異常に低いのを改定するために、市民説明会での財政の説明では必ず市長自ら行っています。市議時代からその姿勢でやってきて2人のベテランを破って市長に当選した松本氏のことだから、強力な市民参加構造を作って安定財政を築く勝算はあるのだと思います。
 一方の山中松坂市長。こちらはまったく逆です。既存の審議会や委員会は消滅させる方向を模索している、というかすでに代替システムを構築しました。この仕組みと市長の直接行動で既存の意思決定とお金の流れを変えつつあります。松本和光市長よりも、こっちのほうが伝統的行政システムの破壊を狙っています。
 簡単に言えば、各地域、松坂市でいうと48地域に地域協議会をつくり、そこを市民の声を聞く中心組織として予算も流すという仕組みです。そこから市民自治を作っていくという構想です。これも新しい発想ではない、地域協議会は各地でできているが、山中氏によれば、それは似て非なるもの、行政の責任回避と新たな無駄を招くもとになるかもしれないという。そうではない組織、役所のスタッフも専任を付け、自主的決定組織の育成を目指すという。
 日高市でも区長会にそういう役割を担わせようという意見もあり、審議会の委員になっているメンバーには、そういう意見を審議会席上で繰り返し述べています。日高市ではとてもじゃないが、その条件は整っていないというべきでしょう。矛盾の塊になりつつある区長会は、どこかでばらして考える必要があるからです。
 地域協議会を自治の主組織に育てようとする山中市長の“特技”が直接行動です。市民を市庁舎に呼ぶのではなく、すべて自ら出かけ市民と話す、交渉する。休日は必ずどこかの住民集会に出席しているという。そこから直接の声を聞き、自治組織の足腰強化にフィードバックさせていく山中氏の行動は、市民参加と地方自治確立の試行錯誤です。
 熊谷千葉市長。こちらは折衷型というべきか。自ら動こうとしないしない市民は“やってくれ”に凝り固まってしまっており、補助金はそれを助長させているという。行政が付き合う組織は50年前の古い組織が圧倒的に多く、意思決定と予算の流れが時代の変化に対応していないとする。議会も含めて、教育や商工、農業あらゆる組織の意識変革を迫り、新しい時代にふさわしい行政との関わりを作っていきたいとしている。そのための一つの試み。学校の生徒会選挙を行い、自治の経験を子どもから育てることを始めた。
 三者三様、手法は異なっても、目標は同じである。国や県のいいなりにならず、自分たちの地域は自ら考えてつくる、という強力な目的意識です。地方主権地方分権はもう理念の時代ではない。市民と行政の具体的な発想と仕事の役割分担の話です。マニフェストを介して強力な権力を実行できる仕組みもあるからだが、3人の話に議会はほとんど出てこない。古い組織を代弁する議会を相手にしていては、困難な時代を乗り切れないという認識が共通にあるからです。
 市長選が始まります。どのような内容のマニフェストをどのような気概で示してくれるのか、じっくりと見るべきです。新しさの装いの中に何か潜んでいないか、新味なき前例踏襲と安定指向か、具体性なき理念倒れになっていないか、等々いろいろなポイントがあります。
 私は議会人として、どなたが市長になっても姿勢は同じ。地方自治の困難な時代に財政の確立と時代に合ったサービスを市民に提供できるか、今から言葉を磨き手ぐすね引いて待つ、という思いです。
 それにしても、毎度のことながら3人の市長の正確な言葉・表現には感心します。若かろうが年を食っていようが、あのくらいの識見がなければ、議会と行政各部を相手の競争とリーダーシップの発揮はできないね。
 あのエネルギーに触れもっと勉強しなければという思いを新たにし、お堀端公園の緑陰の下を歩いた。


 お堀端には大学の施設が目立ちます。中央大学の大学院。確か中央大は近くのアジア経済研究センター跡地も購入したはず。八王子の山の中に行った中央大の都心回帰が目立ちます。

 法政大学大学院。右方の近くには理科大学。