川越市立図書館に行って思ったこと

 ある専門雑誌を調べたいので日高市の図書館を検索したが、案の定、ありませんでした。近隣の図書館に順番に電話してみたところ、川越市の中央図書館だけにあることがわかりました。そこで直接出かけ、コピーサービスで希望の資料を入手することができました。川越市民ではないにもかかわらず入館もコピーも身分的確認は不要でした。

 最近は、広域図書館システムがあるので便利になりました。日高市飯能市の相互利用と川越都市圏まちづくり協議会(日高、川越、川島、鶴ヶ島、坂戸、毛呂山越生)の二つがあり、自由に閲覧、貸出しができます。また埼玉県のネットワークで県立図書館も利用でき、専門書籍も借りることができます。
 それにしても、川越市の図書館の充実していること。市域も広いこともあるかもしれませんが、中央図書館のほか三館があります。中央図書館の設備や蔵書数など、うらやましい限りです。
 「館内環境維持」も行き届いています。年配の女性の館内係がいて巡回しながら監視の目を光らせています。携帯が入ったので部屋の外に出て階段でそっと話していたら、いつの間にか後を追ってきて背中をコンコン。腕を交差させて×印でした。
 しかし、専門雑誌のバックナンバーを3年経ったら廃棄してしまうのは早すぎます。雑誌の一律規則でしょうが、図書館の本来のサービスを考えてしまいます。
 図書館の充実度から思ったことは、図書館だけでなく市民サービスのあらゆる面に違いがあるだろうな、ということです。今後は自治体によって格差が生じる時代になっていくと言われています。普段はそのサービスの違いに直接遭遇することはないので意識することは少ないのかもしれませんが、実際には生活のいろいろな面に及んでくると思います。
 税金も違う、サービスも異なるとなると、どこに住むかが選択の対象となる時代がくると思います。最近の話題では、払う部分の違いを明確に訴えようと、名古屋市の新任の河村市長が市民税の10パーセント減税を打ち出しました。仕組みは違いますが、杉並区も長期的減税を打ち出しています。名古屋市に住みたい、杉並区に住みたいという人を、この策で増やすのだという。
 将来は、他と比較して税金を少なく払い、受けるサービスは多い、ということを、自治体が宣伝する時代がくると思います。そこに広告代理店が新しいマーケットを開拓していくでしょう。
 数値で比較して判断するのが一番分かりやすいですが、他にはない特徴を備えていることも“売り”にする所も出てくるかもしれません。いずれにしても、どこに住むかで生活の質や楽しみが変わるという時代がいずれきます。
 定住者を惹きつけるために何を訴えていくかが問われます。どういう街づくりをしていくか、現在と将来に亘るビジョンと政策が示され、それに沿った市民、事業者、行政の自治体構成員の連携の在り方が課題となります。
わが市はどういう方向にいくのでしょうか。最近の動向を見ていると心配になります。活かすべき資産を食い散らし、気が付いたらサービスは劣る、住みにくいということにならないようにしたいものです。大沢市長は最近、新しい標語として“小さいながらもきらりと光る元気な日高”というキャッチフレーズを使うようになりました。
 さて、この標語はどこかで聞いたことはありませんか。
 平成の合併問題が一巡して全国の自治体は平成11年に約3000あったのが平成22年2月には1755になりました。その中で合併を主体的に拒んで自主独立の精神を発揮しよういう自治体があります。矢祭町をはじめその取組がずいぶん話題になりました。それらの自治体は町村レベルの小さな自治体で、「全国小さくても輝く自治体」という名称を冠して毎年フォーラムを実施しています。
 それらの自治体は、国から入金するお金が少なくなって財政が苦しくなっても、“小さくても輝く”存在であり続けようと、市民も議会も行政も協力して地域運営に努力しています。フォーラムは、その具体的ビジョンを首長が表明し、議会が自らを律し役割を果たすため意見交換する場です。市民と協力できるビジョンをどう打ち出し、それをどう磨くか、そこには地方自治本来のあり方を目指す熱い議論があります。
 “小さいながらもきらりと光る元気な日高”。この標語に見合う日高市長のビジョンは、どこにあるのでしょうか。

 川越市立図書館は母校のすぐ近く。久しぶりに寄ってみました。2本のクスノキはさらに巨木になっていて、この下から眺める校門方向の眺めがはるか昔の記憶と同じ印象でした。放課後は、クスノキの向かいの図書館でボーとした時間を過ごしていました。階下の音楽室からいつも芸大希望が弾くピアノが聞こえてきました。あの頃、女子大を卒業したばかりの司書が二人いました。記憶の断片です。