地域の知識人

 日高市には、都内および近隣の都市にある大学に勤務する先生方が居住されているようです。大学の教員といえども勤め人で、授業や研究・学会および学生の指導や管理業務にと非常にお忙しいことは想像に難くありません。何かと問題が指摘される現代の若者に教え、研究でも業績を残し、大学の管理業務もとなると、その忙しさは大変なものだと思います。そうすると、地域社会への参加や貢献などについては、当然、時間も余裕もないということになります。
 しかし大学の先生が授業が忙しい、研究が忙しいで片付けてしまっていいのだろうか、ということです。専門とする分野によって度合いは異なるでしょうが、地域が、大学の専門的知識や知恵を必要とする場合があると思います。
 自治体なり地域の公的組織からそれを求められることはあると思います。しかし日高市では、審議会のメンバーに加わることは非常に稀ではないか。行政も自らはそれを望まないし、大学人も国や県ならいざしらず、求められなければ、そこまでの活動の範囲を想定していないのではないか。
 もうひとつは、地域の市民団体やNPOなどと関わりを持つことです。最近のように急激に社会や政治が変化する時代に、市民も関連のの知識や専門的知恵を必要とする場合があります。そういう時に地域にある学問の人材は頼りになります。
 昨年、環境保護里山トラストをテーマとする講演会を「日高みどりの会」で開催し、飯能のNPO「「天覧山多峯主山の自然を守る会」」の代表者を招きました。その中で出た話です。
 大手不動産が開発する宅地造成を前提とする都市計画に反対した際、市民が求める考え方を入れた修正案を作成して提出しました。都市計画法は専門家でも難しい複雑な法律で市民が対応するのは到底無理です。そこで、市内にある駿河台大学の法律の専門家にアドバイスを求めた所、全面的バックアップを得られたとのこと。その結果、市の計画に対抗できる都市計画案ができ運動の成果を高めました。
 市内に駿河台大学という社会科学系の総合大学を擁する飯能市は、同大学の学問的資産を公的あるいは市民レベルで提携・活用することがどんどん進んでいるようです。同大学には地域との連携を促進する部署が設けられており、飯能市はじめ近隣地区の公的関係に参加する教員メンバーのリストが発表されています。何とも、うらやましい限りです。市民、地域の実力と住みやすさは、こういう成果が目に見えない形で知識・知恵基盤として育っていくのではないかと思います。
 最近、このことを改めて強く思うことがありました。ある社会科学系が専門の先生にアドバイスをお願いしたのですが、忙しいという一声で会ってももらえませんでした。この方の専門は地域にも関係があることで、当方が聞きたいことそのものが専門領域のはずなのですが。
 もう一人の先生。日高市近郊の大学のこの先生はいまマスコミや講演会に引っ張りだこで、普通ではとても会えません。大学の教務係も到底無理というなか、運よく電話連絡がつきました。そこで、趣旨・要件を伝えたところ、授業時間の合間で2時間空くのでその時間はどうかとのこと。
 当方、この先生の最新の著書を携え、約束の時間に行けば、先生もパソコンのデータを参照しながら大いに語って下さり、大変参考になる話がが聞けました。