土地の規制緩和

耕作放棄地に係わる日本全体の大きな問題は、今年度以降、少しずつ法律の改正が進み、TPPや農協問題と軌を一にして、あるとき、どーんと来るかもしれない。
地方6団体の10数年来の要望が受け入れられ、今の国会に農地転用の権限委譲の法律改正案が提出されたようですが、内容は今のところはっきりしていません。4ヘクタール以下は県に農地転用の許可権限が移り、条件が合えば、市町村でも2ヘクタール以下の権限委譲があるようなことも報道されています。せいぜい、この辺までしか分かりません。
しかし、市内全域の農業振興地域に係わる権限委譲がそう簡単に市にくるはずはありません。工業地域に指定された中での2ヘクタールなのか分かりませんが、いずれにしろ、大きな変化の兆しで、小さなの穴から堤防が崩れていくこともあり得るかもしれません。地方創生推進の中で、人口の地方分散とカネのかからない都市構造ということで、コンパクト化が推奨されています。自治体をそれに向かって動かすために、農業振興地域や農地転用に係わる農業委員会及び農協などの戦後の主な農業基盤がどんどん壊されていくでしょう。
線引きの下で全く農業振興地域に手を出せない状況で如何ともし難い状況を打破しようとする全国的動向は、今後、一気に進むと思われます。そのとき、どうするか。その動向の中で何が地域にふさわしい選択なのか。今後、そこが一番問われる。日高市は単なる「地方」ではなく「首都圏」であることを念頭に置く必要があります。
地勢的・経済的に企業誘致が日高市の選択一つであることは明らか。企業誘致と観光が市の施策の目玉のように言われる気配があるが、内閣府の地方創生の趣旨でも紹介されていますが、東京人の4割が地方移住の希望を持っていることを考えれば、住みやすいまちづくりを行い、定住移住者の誘導を図るという選択肢も見えてきます。
そういうことも考える出発点となるのが、地方創生の地域版総合戦略です。地域間競争の生き残りをかけて知恵を絞らなければなりません。既に60以上の市町村が国の認定を受けて走り出しています。否が応でも、そこに加わらざるを得ない。

最近、おもしろい不動産広告が入っていました(写真は紙面の半分)。以前にも入っており、文面を見るともう3回目とのこと。土地の規制緩和を求め、農地転用の全面解禁が間近に迫っているような書き振りです。意見広告だと言っています。これも顕在化していなかった考えが、政治の動きに呼応して出てきているのかもしれません。
市街化調整区域に関わる地方分権の不徹底と、農地転用の手続きに関する農業委員会関与の方法が時代遅れであることは、今や一般的常識です。しかし、地方分権が秩序ある街並み形成にどう関与するのか、その手法が開発されていない段階での、単に「農転許可権限」を地方に移譲して済む問題ではありません。
“意見広告”が言うように、線引きが問題であるとすればそれに代わるゾーニングの考え方をどう規定するのか、そこに都市づくりの前提があります。
戦後から始まった農水省建設省の省益・権益争いにキチンとした決着をつけずに、目先の政治的目的で緩和すれば混乱に拍車をかけ、無秩序に輪をかける結果になります。
広告主が、本当の所、土地の正論を吐きながら何を志向しているのか明確に分かりません。広告に書かれているように、「感情や損得で物事を判断すると末代まで禍根を残し時代を見誤る」。ここは正にその通りなので、国民的議論が必要です。