女影の耕作放棄地再生利用緊急事業実施に至るまで

 女影の河川汚染に関係する件で区の会合に出席し、一昨年、埼玉県によって整地工事が行われ、牧場がトウモロコシを作ることになった耕作放棄地再生利用緊急事業の概要について報告しました。話した内容は、以下に書いたことの一部です。

 一昨年(平成21年)の確か年末頃から始まった田の整地を見ながらこの事業の内容を調べてみようと思い、専らネットで関係記事を集めてきました。概要は大体、それで分かったのですが、今回の汚水の問題発生を機に関係機関に直接話を聞くなどして確認しました。
 田の整地が始まった時、地元の何人かの人に聞いてみたが、事前に行われた説明会の詳しい概要が分からなかった。埼玉県、農林公社等関係者の名前だけは出るのですが、誰がどうしてどうするのか、その辺のことは不明で、ただハンコを押した、押さなかったという結果のところしか出てこなかったことを記憶しています。
 この事業のことを理解するためには、当時の状況を考えてみる必要があります。
 まず農地法の改正です。この耕作放棄地再生利用緊急事業は、改正農地法の30条、遊休農地の状況を毎年調査すること、それを農業委員会が行うことを根拠にしています。
 平成21年度(6月公布、12月施行)の農地法改正の一番の目的は、農地制度の基本を「所有」から「利用」に転換したこと。この点が従来の180度変換を意味します。貸しやすく、借りやすい制度としたもので、平成の農地改革とも言われる理由です。農地の所有者や借り主に農地を本来の農業目的で利用する責任があることを改めて示した(1条、2条等の改正)。
 農地法30条の改正は、前記の趣旨で農業委員会の権限と指導を強くし、毎年、農地の遊休状況を調査し、耕作放棄かどうかを認定するわけです。耕作放棄となった場合は、他に貸したりする公的理屈付けが行われたことになり、再生利用の対象となります。
 遊休や耕作放棄農地に関して、そういう集約の地ならしというか環境を作った後の出番となる別の法律があり、農地法の改正といっしょにこちらも内容が変わりました。それが「農業経営基盤強化促進法」です。その前は「農地保有合理化事業」という名称でした。
 この法律が、前記の農地法30条で耕作放棄と認定された農地を“ガラガラポン”してまとめたりくっ付けたりして、農地の“合理的”再配分・再配置を行う根拠となります。
 農業関係の法律は都市計画法と同様に分かりにくく、いろいろと解説はありますが、女影のような事例に沿った解説は少なく、私の解釈が正しいかどうか一抹の不安はありますが、方向は間違っていないだろうと思います。この辺の法律の説明をやっていたらいくら書いても書き足らないし、行政や公的機関の行動を織り込んで説明すると、ますますこんががってくるので、このくらいにしておきます。

 平成21年からの農水省事業として、耕作放棄地再生利用緊急対策が当初予算206億円で開始されました。さらに実績もないのに補正予算で同年度に150億円が積み増しされ、22年度分としても70億円が概算要求されました。
 9月の次年度概算要求時で21年度の予算執行率は5パーセントと低く、目標には到底届かないことは明らかだった。耕作放棄農地の再生の趣旨は分かりますが、体制も整わない中で予算だけを増やそうとしたわけです。
 この辺が事業仕分けで問題とされ、補正の150億が国庫返納・執行中止、22年度分50億円が計上中止となりました。21年度分の予算も、この調子では返納かもしれないという懸念が出てきました。この頃ではなかったかと思います。21年度の国の予算を当てにして事業を進めようとしていた地方自治体が、仕分けで中止となる前に発注をどんどんして既成事実化を行ったこと。
 女影の耕作放棄地再生利用緊急対策が実行されたのも、こういう機運の中であったと思います。最初の説明会が行われたのが9月。説明資料もなく口頭のみで、とにかく急げや急げの調子で、ハンコを押すことをせかされた、というのが事実らしい。この辺から現状の汚水漏出への点と線がが繋がっていくような気がします。