女影地内のほ場に関する調整会議

 19日18時半より市役所3階会議室で、女影の田んぼ埋立地から出ている汚水に関しての説明会がありました。表題にある「女影地内のほ場に関する調整会議」が行政の会議名です。今回の対象者は、水利組合と田んぼ耕作者関係です。
 行政側の出席者は、日高市市民生活部産業振興課課長(新任で県からの出向)、産業振興課農政担当主幹ほか2名、県農林振興センター担当者2名。発生源当事者の牧場。
 地区水利組合と耕作関係者は10名。
 議題は、下記の3つ。
 1 水質検査の結果について
 2 汚水の流失防止について
 3 作付けに関して
 資料として次の4点が配布されました。
 1 報告書「水質検査測定結果一覧」
 2 採水検査地点地図
 3 農業用水水質目標値
   排水基準(1)(特定事業場排出に適用)
 4 報告書「顕微鏡検査結果」フシミズカビ、埼玉県環境検査研究協会
 議題に入る前、課長よりこの会議の意義についての説明があり、牧場社長よりお詫びと対策の挨拶がありました。資料に基づいた各議題の説明が一通りあり、その後、質疑です。
 説明についての結論的な部分を簡単に書くと次のようになります。
・汚水の水質は法令上、問題ない。
・農業用水として使うのに環境基準上、問題ない。窒素が多いが成育にどう影響するかは何とも言えない。
・油分は発酵に伴うもので問題ない。
・フスミズカビは有毒なものではない、水温が上がると消える。
・農林振興センターとしての認識:牧場の土壌改良としての有機質の投入のやり方はよくなかった。
・漏出している黒い液と臭いは、埋められたチップが嫌気性発酵をして腐ったもの。
・流失防止:汚水をせき止めてバキュームカーでくみ上げたが、車が土に沈んで作業不能。穴を掘って流し込む。
 【質疑】
・会議の記録はどうなっているのか。録音と書記は。詳細な記録を残してほしい。
 ―録音は行っていないが記録は書記が作成する。
・なぜ地元の公民館等で行わないで役所の会議室に呼んだのか。地元でやるべきではないのか。
 ―配慮が足りなかった。今後地元で行うようにする。
・土地の貸借の当事者である県農林公社が出席していないのはなぜか。
 ―出席を要請する。
・この問題は、水質が法令上適合しているか否かだけからの判断の問題ではない。生活の基本としての食料を作る場に直接関係し、また、この川は地域の景観を作っている基本的なものであり、住民の生活心理、風水的な面からも重要である。そのことを踏まえ、チップの埋立て以前の川の状況に復帰させることが前提であることを認識すべき。
・水質汚濁の観点からの検査では不十分である。排水という前提で出発している。廃棄物処分場的環境になっているのだから、投棄された元の部分で検査すべき。表土から50センチ下の投棄物の検査を行うべき。漏出物と同時に元のものを検査すべき。管理型処分場と同じ状況としての漏出と考えるべきではないか。
・油分の検査の方法は適正か。
・生産したコメの食味、臭い等、例年と異なった現象が出て、自家消費、販売のいずれにおいても損害を被った場合、補償を要求するが、それはどこがしてくれるのか。
・その他、水を散布した野菜等の影響、被害についても補償は同様である。
・農業用水として法令上、問題ないとしているが、無生物状況を作っている水を田に引いて問題はないのか。
・タナゴ等が生息して生物相が豊かだったが、現状、生物が全く見られない。
・鳥がいなくなった。川の汚染が影響しているのではないか。
・収穫時に問題なくても、過熱で臭いが出るケースがあることを認識しているか。
・一昨年のチップ埋立てでは漏出はなかったが、今回ではなぜ漏出があるのか。
・チップ埋立ては処分場投棄と同じことで、半永久的に汚水の漏出があることでなないのか。
・チップ埋立ては土壌改良なのか、基盤整備なのか。
・県はチップ投棄を想定していなかった、またやり方もよくなかった、としたが、具体的にどういうことか。
・チップに堆肥を混入させていないと明言できるか。
・チップの搬入、中身を全部チェックしたのか。
・チップは、どの業者が、いつ、何を、どのくらい、いくらで取引したのか、その詳細が分かる伝票データを公開すべき。
・埋め立てたチップを回収し、元の状況に復元できないのか。
・フシミズカビについて、安全としているが根拠はあるのか。イネの根を溶かしたり、野菜への有害という説もある。
・安易に根拠なき安全説を唱えるのは問題だ。
・フシミズカビについての専門家の鑑定を行うべき。
・川への流出が続いている。とにかく流出を止めるべきだ。
・嫌気発酵を止めてエアレーション等で進めた方がいいのではないか。
○川の状況を地区全体が心配している。水利・耕作者関係のみではなく、地区住民全体への説明会も必要に応じて何度でも行うべきである。

《会議を終えて》
 市役所の会議室に呼ばれての会議で、まず、なぜ地元に出向いてこないのか、という疑問が湧きました。この点は聞いてみると、皆漠然とそう思っていたようです。大体、一般人は役所に呼びつけられて説明を受け、法的に何も問題はありません、と言われてしまうと、反論することはなかなか難しい。もし、そういう効果を考えてのことであれば(それ以外に理由はないはず)、行政の不純な動機であり、これだけの反環境、反地域状況を招いているのに認識不足も甚だしいと言わざるを得ない。私は、この意味も込めて、まず冒頭でこのことを質しました。
 出席者の方々は、ご自分の心配と懸念を念頭に、また経験・調査を踏まえて、あらゆる観点からの疑問をぶつけました。それに対して行政側の回答はいずれも不十分で、各議題にわたって再度(状況によっては何度でも)会合を開くことになりました。また地域全体への説明会も開くことも約束しました。
 環境、地域の問題は、法令適合性だけの問題ではなく、それは一部であってより重要なのは生活と健康・安全、そして景観や環境悪化による地域心理の実態に即しての解明です。どんな素朴な疑問、心配でも地域住民の意見をぶつけるのは当然かつ必要なことです。以前の記事で書いたように、そのことが行政を叱咤激励し、行政の軸足を市民・住民に移すきっかけとなるはずです。
 私は意見を聞きながら、市民・住民と行政の関係を在るべき関係にしていくいい機会だと思いました。今回の案件は、遡れば農業政策、環境政策、地域政策に関する国、県、市町村の一連の行動について評価を行う機会であるとも思いました。一昨年の初め、ほ場整備の開始と同時に、農水省と県による事業予算が日高市に適用される過程に注目して独自に調査してきたが、こんな形で活かされるとは思いませんでした。また、県農業公社による整備終了後に私の田んぼのすぐ上で始まったチップ埋立てを、業者の話を聞きながら懸念したことを思い出しました。
 事業は予算の無理やり消化のため、チップ埋立ては湿田を乾田化する無理やり経済性確保のため、――私の目にはこう映る。それはより詳しく実証しないと断言できないが、まず間違いないはずです。そのことは、日本の大きな課題に通じます。