若い林業家がんばれ!

 何日か前から斎場近くの山中で木を切っていました。間伐のようだと思い、買い物に行ったついでに、ゴルフ場へ行く道に車を止めて見に行きました。間伐を大掛かりにやるのはめずらしいことです。西武鉄道のような大手の会社の持ち山だからこれだけの間伐ができるのだろうと思ったのです。
 丸太を積んでいるところに立っていたら、しばらくしてトラックが来ました。荷台にリフトのような機械が設置されていますが、その先端のクワガタの角のような大きな機具は余り見かけないものです。運転手に聞くと、これを操作して丸太を積み込むのだという。

アームを伸ばして一度に5、6本の丸太をくわえ、瞬く間に運転室の屋根近くまで積み上げてしまった。うーん、これはすごい。森林機械の生産性の向上は知っていたが、実際に見たのは初めて。
 運転手に聞いてみました。「こんな機械を持っているのは山仕事専業ということ?」
 やはり間伐・伐採の専門会社でした。
 「いま林業が注目されているし、国もいろいろな形で支援しているから、こういう新しい機械に設備投資して景気はいいんでしょう?」
 そんなことはないという。補助金は条件が厳しくそう簡単にはつかえない、新しい機械はこれだけで他の機械は20年ものだとのこと。仕事も少なく経営は厳しい。近くで作業している3、4人を指差して、従業員はあそこにいる4人だけ。30歳台の2代目伐採会社の社長に聞いた山仕事の話は面白かった。
 伐採と搬出を専門に行う会社は、飯能から吾野にかけての地域で唯一。と言っても競争がないから仕事があるというわけではなく、山林地主は後継者もいないし山の維持に金をかけようとしない。秩父の方の山は荒れ放題でこの辺はまだ良い方らしい。
 この仕事は県の補助事業。西武鉄道がこの辺一帯を含め天覧山から多峯主山の山林を保存・維持することは積極的なPRもあってよく知られています。そういう所に補助金を投入して、こういう森林事業の専門会社が多少でも潤うことはいいことだ。それに山奥ではなく人の目に触れる所で山が整備されていけば、森林整備への市民の理解も深まる。そこからどんどん山奥に広げていけばいいと、素人ながら思います。
 新聞やテレビで森林再生や森の整備がよく伝えられるが、現場の人の話を聞くと現実は理想と違うことが分かります。お金を重点的に配分することも必要だと思うが、山仕事専門だなんて全国にそうあるわけはない。そうすると、政治家にとっては票にならない、農業のような圧力と実績のある利益集団へのカネのばら撒きとなる、子育てのような人気の即効性ある所へのばらまきになる、その数パーセントでも山林事業への直接支払いに使えばいいと思うのだが――山林関係の制度や仕組みをよく調べたわけではないのですが、そんなことを思いました。
 国のお金の使い方は難しいが、広く薄くがいいのか、特定課題への集中・傾斜がいいのか。今朝の新聞にも、医者の地域偏在が取り上げられていました。森林の再生のことが国土の課題だと言われて久しい。今日来た農水省メールマガジンでも、FAO国際林業会議への参加、第6回森林組合改革・林業事業体育成検討委員会の開催、と林業関係の会議が予定されています。

 先代の後を継いだ2代目は、最近まで飲食店を経営していた。危険と隣りあわせで将来性も危ぶまれる伐採事業への転進は決意が必要だったが、今となってはよかったという。客と味への気遣いが大変だったが、自然の中で仕事をしているのは楽しい。農業では土建会社をはじめ他業種からの新規参入が可能だが、間伐・伐採では特殊なノウハウもありそう簡単にはいかない、という。
 これから活躍の場が広がることを期待して、がんばれと言いたい。
 見に行った最初の動機は、稲のはざがけに使う足が出るのかどうかを聞いてみたかったことです。そんな細くてめんどうなものは商品にならないので、どこにも無いようだ。
 新しい田んぼ用で組むはざがけの足を調達しなければならない。渡し棒は地主のを借りられるが足がない、さてどうするか。