日高市国保の県移管、私の見方と質問

国民健康保険都道府県移管が、具体的な財政支援を伴った形で、2018年に移管される方針となりました。移管自体は以前から決まっていましたが、財源のないまま赤字を押しつけられることに反対していた都道府県に対して、今回の通常国会で関係の法律改正を行って財源を確保した上で移管とするものです。
市町村規模では財政規模が小さく、入りが小さく出る方が多くなることは構造的問題で、単独では解消が難しかったのですが、規模拡大による解決を目指します。財源確保の手法は、例によって複雑そうです。国が中小企業の「協会けんぽ」に出す補助金を、余裕のある大企業中心の健保組合と公務員・教員の「共済」に肩代わりさせ、それによって浮いた国費を国保支援に回すという方式です。
国保の赤字解消の問題は、それを補填する市町村の一般会計にとっては大きな課題でした。改善の成果が明確に見えない加入者一人ひとりの健康維持によって、どう赤字解消に結びつけるのか。この市町村共通の難題に取り組む対策を昨年9月の第4回定例会の一般質問で質しました。以下はその主な内容です(太字は、私の問題意識)。


◎まず国保の赤字についての認識を問う。

(1)国保会計の実質単年度収支の赤字の原因をどう認識し、今後の推移をどうみているか。
○ここ3年間を見ると、歳入歳出の単純差額である形式収支は黒字だが、実質単年度収支は、平成23年度:3億8063万円、24年度:3億4513万円、25年度:3億3813万円の赤字となる。25年度を例に取ると、前年度からの繰越し分1億1857万円と一般会計からの繰入金3億7000万円がマイナス要因となり赤字となる。原因を箇条に簡潔に伺う。また今後の推移について。                                                    
(3)赤字補填のための「その他一般会計繰入金」が減少しない理由は何か。
○繰越金以外の赤字要因である一般会計からの「その他繰入金」が23年度3億5000万円、24年度・25年度3億7000万円と増加している。国保は保険税と国庫負担で賄われるべき。市の財政運営を制約し、国保の被保険者以外の市民にも負担となる繰入金は止むを得ないとされるが増加の原因は?


国保会計の保険料収入を増加させることが財政改善になることは明らかで、料率を上げることと賦課方式を変える手法が検討されています。しかし、それは重い被保険者の負担をさらに重くすることなので、両面から問いました。
(4) 国民健康保険税は毎年1000万円台の減収を辿っているが、税率変更の考えはあるか。
○医療費が増加に見合う必要な保険料収入を確保するためには、 被保険者の負担を重くする対策が採られる。?保険税の保険料率(所得割率)の引上げ ? 賦課限度額(一定金額以上で打ち切り)の見直し。
○賦課限度額については、平成23年3月の国の法令での規定:医療費分51万円、後期高齢者支援分14万円、介護分12万円。平成25年度3月までに国で決めているこの限度額を目一杯適用。増収効果は約390万円。
○さらに地方税法の改正で平成26年度より、後期高齢者支援分14→16、介護分12→16
○増収効果を見れば、より顕著な増収効果がある税率変更(上げること)の選択がある。これによって財政の均衡を確保した自治体もあるが、消費税10%の実施可能性、物価高騰・実質賃金低下の経済情勢の中での税率変更について。
(5) 国民健康保険税を納める際の市の計算方式は、所得割、平等割、均等額割、資産割を合計する賦課4方式だが、2方式への改定が近隣も含め多くなっているが、市の方針は。
○保険料(税)は被保険者の保険料負担能力に応じて賦課される。応能分(所得割、資産割)と、受益に応じて等しく被保険者に賦課される応益分(均等割、世帯割)の4種類から構成。日高市はこの4方式を採用。一方、所得割と均等割の2方式もある。
○県は、平成22年「埼玉県市町村国保広域化等支援方針」を策定、強力に2方式への移行を市町村に促している。理由は、4方式の中の資産割が固定資産税との二重課税という批判、都市部と農村部の不動産価格の差が大きく県全体ではバランスが取れない、等。 ・63市町村のうちまだ52?市町村が資産割を実施だが、近隣は移行を掲げている。市の方針は。また資産割の税収に占める割合、低所得者への影響は。

◎以下3項目の質問は、歳出を減らすための対策をどのように行っているのかを問うものです。私が特に問題としたかったことは、赤字解消のための数値目標を伴う計画を策定していないこと。これは大体、どこの市町村でも策定しています。これがなければ、各種の保険事業は、成果がなかなか現れない上に散漫になる可能性があるからです。
(6)財政悪化防止のための第2期「日高市国民健康保険 特定健康診査等実施計画」が目標値を大幅に下げて実施されたが成果について伺う。
生活習慣病は発症すると長期療養が必要、医療費増大の原因となる。
○予防が第一、ということで、市は国の「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、日高市国民健康保険特定健康診査等実施計画を策定、現在第2期目。40歳から75歳未満の被保険者に対する生活習慣病が義務づけられた。
○第1期の実施率目標:健康診査65%(実際は31%だった)、保健指導45%
○第2期:25年度40%、20%。段階的に29年度60%までアップ
○受診促進を行っても目標達成に至らなかった原因と新目標の成果は?
(7)歳出減に貢献する国保データベースの活用はどういう段階か。
国保データベース(KDB)システムは、国保連合会が管理する給付情報(健診・医療・介護)等から「統計情報」を作成するとともに、保険者からの委託を受けて「個人の健康に関するデータ」を作成し、提供する。
○医療費請求のチェックや個人の健康データ追跡による効果的医療・保険事業が可能となり、今後の国保改革の切り札。今までほとんど利用されていなかった。
○市の活用の段階と体制及び内容について。
(8)歳入、歳出の両面からの財政検討と、予防と健康づくりの再構築を含めた総合的な国民健康保険特別会計の赤字解消計画についてどう考えているか。
○被保険者の税負担は重く、本来独立採算が基本である国保の運営は非常に厳しい。
○しかし保険者の責務として市民の「医療のセーフティーネット」の役割を持つ国保制度を堅持しなければならない。
国保財政の収支不均衡を改善し、将来にわたり市民が安心して医療を受けることができる環境を維持するためには、財政、保険事業各方面からの計画が必須だが見当たらない。重要性に鑑みて計画無しはあり得ないと思うが策定の予定は?


◎そして県への移管についてです。これほど大きな問題で、すでに移管の方針は国で決定しているのに、市の国保運営協議会では報告も行われず、議論の対象になっていない、移管の具体的手法、すなわち今国会で審議される財政措置が最終的に決まっていなかったとはいえ、ほぼ議論は出そろっており、情報提供と解説の義務が事務局にあるはずなのに行われていないことは問題でした。各種審議会で、市民に直接関わることでも国や県の動向が報告されないケースが、総じて多い。したがって、審議会の議論が浅く役割を果たしていないと思われる事例も見られるが、国保移管もその一つと私は見ました。そういう問題意識のもとの質問です。
(9) 2013年の社会保障制度改革プログラム法成立によって、国民健康保険制度運営の県への19年度移行が決定。市への影響と今後についての把握と運営協議会への報告について伺う。
国保は、平成 29 年度を目途に都道府県単位で保険者移管を行うこととし、必要な法律案を平成 27 年通常国会への提出を目指すスケジュール。中間的な取りまとめが出た。
○移行に向けての協議会始め情報共有体制。現在までどのような情報が提供され、話されたか。


◎保険事業や健康推進事業をどれだけ実効性ある事業として行うかが重要です。これは先の赤字解消計画の数値目標と結びつくのだが、統一的実効性ある計画がなければ、個々の事業は惰性になってしまいます。余程インセンティブをつけるか、市が本気で音頭をとらなければ効果は出ないと思う。市民の健康へのモチベーションを保持し向上させ持続的運動とするための方策を問う質問です。実は、これが移管後は極めて重要となり、市町村の努力の違いが数字となって出てくると、私はみます。
2 健康づくり推進事業について
(1)武蔵台で有志による朝のラジオ体操会が、毎回約100人の参加で続いている。今年度戦略プロジェクト「みんなの健康プロジェクト」の施策としての「健康づくりの推進」でラジオ体操の活用や具体的奨励策はあるか。
○“戦略”という言葉を冠してのプロジェクトの重要性を考えれば、健康作りへの全市民的な関心、効果、参加が求められる施策なり事業に取り入れられているのではないかと。
知名度、全国的な展開、市民に馴染みがある、効果に関しての高い評価など、位置づけの要素に事欠かないが、活用策をうかがう。

(2)ラジオ体操による「健康タウン構想」を目指す公益法人の全市町村アンケートを踏まえた市の実情をどう把握しているか。
○調査の名称は「保健所・市町村保険センターの受け持ち地域におけるラジオ体操・みんなの体操の普及状況調査」。
○平成22年度に、ラジオ体操の実態、また健康志向や介護予防との関係、市町村の健康づくり事業での取り組みなどを明らかにするために行われた全国調査。1910カ所の保健所・市町村へのアンケート実施、報告書にまとめられた。
日高市のアンケート及び調査結果を踏まえ、うかがう。

(3)高麗建郡1300年記念事業としての「特別巡回ラジオ体操」の誘致を計画。観光的観点と健康作りの関係性及び健康福祉部、教育委員会との連携は。
○今年5月にNHKラジオ体操指導者を招いてラジオ体操講習会を開催、特別巡回はそれに続く結構なイベントだと思う。ラジオ体操という特徴から趣旨の明確化と連携及び継続性が必要と思うが、どのように考えるか。
○各部門や地域参加の実行委員会の設立について

(4)教育委員会、学校はラジオ体操に対してどんな方針か。
○参加子ども達に聞いてみた。「学校ではラジオ体操について何か言われるか」と。何もないようだが、方針は。

(5)健保財政の赤字解消のために具体的効果を目指すラジオ体操を含む健康づくり事業ミックスとインセンティブの必要性について。
○前半で質問してきたように、地方自治体は国保の赤字に苦しんでいる。歳出の削減、健康を維持し医療費を少なくするための健康作り事業を工夫しているが、即効性はない。
○市も26年度予算約1100万円(健康相談含む)を投じて事業を行うが、単発事業の継続だ。市の健康資源(例えば地場野菜・米、安全食品、温泉など)との連携やインセンティブとして組み込んだ事業ミックス(体操、歩く、走る、泳ぐ等々)の必要性についてどう考えるか。改善の兆しを掴んだ自治体事例も出始めている。
(―般質問内容ここまで)


健康寿命伸びれば医療にかかるコストを大幅に削減できる、という試算が厚労省から出ています(朝日新聞12月28日)。「健康寿命伸びれば」とは言うものの、どんな事業を選び組み合わせるか、そこに市町村の創意と工夫が求められます。今後の市の対策が望まれるところです。