選挙の公約

 首長選挙におけるローカルマニフェストについては、公職選挙法の解禁で平成19年3月からビラの配布が可能となりました。A41枚の両面で1万6000枚が市長選挙では認められています。今回3人とも選挙期間中に公約を配布しました。しかし、財源や達成期限等の数値目標を含めて具体的に説明しているかといえばそうではなく、従来の討議資料の延長という形です。一方、議員についてはローカルマニフェストはまだ認められていません。
 したがってその候補者がどんな政策で臨むかは、選挙公報と公約及び討議資料と称する告示前に配布されるパンフレットを見て判断することになります。
 選挙の候補者パンフレットには、たくさんの「いいこと」が書いてありますが、よく見ると、その羅列の中に、おやっと思う重要なこと、候補者の核心部分が出ているところがあります。
 特に土地政策、都市計画に関する部分はインフラの基本的なことに及ぶので、簡単なワンセンテンスに示された中に重要なヒントがあります。
 例えば、私がおやっと思ったことが2つありました。他に、こうしたい・こうします、ああしたい・ああしますということはたくさん書いてある中で、最初にパッと目に入りしっかりと頭に入ったことです。
 一つは加藤清氏のマニフェスト要約パンフレット。氏の個性が出ていて、賛否は別問題として、分かり易い内容でした。各分野にわたって進めるべき方向性がよく出ていたように思います。
 その中の「都市経営の再構築」に関するところに「都市計画法34条地域の見直しを行います」という文言がありました。それを見て思わず、おーっと出ているなぁ、と感じました。これは、平成23年に策定された最新のマスタープランに基づく土地利用方針と計画を変更することを意味しています。
 昨年策定された総合計画とマスタープランは、大沢市長の1期目の当選時の公約とその後の方針を反映させたもので、いわば大沢市政の集大成を目指すものです。住宅地に関する都市計画法34条に対しては、争点であっただけに明確に出ていますが、産業系についてはその後の進展にともなって拡大に転じました。
 簡単に言えば、住宅地に関しては規制緩和を中止し既成の市街地の育成に転じましたが、産業・工業系の土地利用は拡大一途でむしろ34条の規制緩和を促進しました。その結果、産業・工業系の土地は市内7か所に拡散し、さらに増勢の傾向です。県の一定規模の土地における数量認可という枠組みはあるものの、それを満たしたうえで、さらに市街化調整区域の空いているところは緩和を適用して拡大するという形です。計画があっての適用ではなく、地図に新たに付け足していくというやりかたです。
 加藤氏の公約は、恐らく住宅地に関しても規制緩和を再び適用するというものだったと思います。当落には影響なかったと思いますが、首長の公約は極めて重要、当選すれば市民の生活を左右する絶大な権限を行使して総合計画の変更ができるのです。どんな内容が含まれているのか、公約や討議資料はよくよく見ないと分かりません。
 もう一つは市議選挙で当選した猪俣氏の例です。氏は選挙公報にも討議資料にもこういう文章がありました。
 「住民がもっと暮らしやすいよう、買い物、子育て、医療、介護施設等を充実させることが大切です。そのために都市計画の変更と整備が必要と考えます」。パンフレットではこの文章の下に、猪俣氏、谷ケ崎氏、小谷野氏3人が手を取り合う写真が掲げてありました。
 「都市計画の変更と整備」とは具体的に何なのか現文章では分かりませんが、これも基本的なインフラ整備に関わる非常に重要な政策変更を意味するかもしれません。今後の氏の発言によって明らかになると思います。
 因みに、猪俣氏は昨年策定された現総合計画のマスタープラン策定委員で都市計画策定の当事者です。谷ケ崎氏は大沢市政継承で、現総合計画の継続が基本です。小谷野氏は都市計画法第34条の規制緩和をめぐって大沢市長と争いました。
 さて私には、ここからはパズルです。どんな政策協定があるのかないのか、それは分かりません。カギは執行権者として強大な全権を握っている市長の今後の市政の進め方に出てくるでしょう。