水質検査運動の意義はどこに?

 荒川流域ネットワークの水質検査の打合せで鶴ヶ島へ。
 途中、駅に向かう住宅地を走っているときのこと。はるか前方を何か長いものが動いて横断していく。随分でかいヘビだなぁ、と思い目をこらしました。それにしてはなめらかな動きではない、何かごそごそと動く感じです。
 少し走って分かりました。何とカルガモの親子だった。1羽の親を先頭に5羽の子供がくっ付いた一列になって道路を渡っている。カメラだ、助手席に置いてあるカメラを片手に持ち前方を撮った。2回シャッターを押したが失敗、親子は渡り切って畑に消えていった。残念、惜しかった。
 その時、今度は前方から走ってくる人間の親子に気付いた。小さな女の子を先にして、若いお母さんが何か叫びながら。カメラを片手に、やはりカルガモの親子が目当てだったのです。目があったので、残念という気持ちを込め、カメラをかざしながら行っちゃったよと声をかけました。
 一昨年田んぼをやっていた時は必ず来ていましたから、久しぶりに見ました。

 水質調査は、荒川流域ネットワークが毎年行っているメインイベントの一つです。1995年に始まったこの調査には荒川流域の数十の団体が参加し、一斉に決められたポイントで採水しCODと電気伝導率を調査します。2004年からは、全国水環境マップ実行委員会に参加。
 毎年の結果は、A2の大きさの地図に記録します。写真は4折にした1面。多くの市民団体や学校が参加する調査の意義は大きく、川の水質向上に役立っていると言えます。と、これは運動の“決まり文句”です。
 しかし、川に関するイベントや市民運動は、水質調査ほか川の再生、里山づくり、川の守り人等、いろいろな形で主として官の主導によるものとして行われていますが、それが実質的に水環境の向上に役立っているのか、私は疑問をもってきました。
 それが、下小畔川の汚染に直面することになったいま、一層強くなりました。
 現在、川の汚染の発生源別の負荷割合は、圧倒的に生活排水がトップで71パーセント。下水道と合併浄化槽でそれを制していこうというのが基本です。市街化区域の下水道は都市計画の中心であり、国家的事業として推進されていますが、調整区域の合併浄化槽は自治体の政策として義務付けられていても遅々として進んでいないのが実態です。
 また、水質汚濁法は、浄化槽に入る前程の汚水を流したとしても何も罰則はなく、合併浄化槽が進まない原因となっています。下小畔川の例のように、明確な汚水の発生源がBOD2400、COD610、EC290という高汚染の水を流しても「法令上問題なし」という事になってしまいます。
 こういう実態に水質調査運動がどれほど作用しているのか、見えてこないところに問題を感じます。他の川の再生的イベントが官の主導によるイベント化しているように水質調査にもその傾向があります。その成果をもってより直接的に官に働きかけを行ってもいいのではないかと思いますが、そういう気配はありません。
 ちなみに、この種の河川啓蒙運動には国や県から補助金で成り立っています。水の汚染は水に流されて見えなくなってしまうだけに、むずかしい問題があります。