一昨日触れた上野千鶴子さんの発言について

 一昨日、朝日新聞の特集「政治時評2011」での上野千鶴子さんの言うことに同感だと書いたが、その内容に触れませんでした。同感だと書いたのは、長い記事のうちどこなのか。私はその時、記憶で書いていたので、もう一度確認しようと読み返してみました。
 特集のテーマは、「強さに傾く有権者、それでいいのか」
 大阪ダブル選挙で当選した橋本市長の手法と有権者の反応を取り上げた内容です。
 結論を先に書くと、私が反応したのは最後の部分でした。

 「地方議会から変える、か。いいですね。それならなおさら小粒で身の丈の政治家でいいじゃないですか。過度な期待はせず、嫌なら自分がやればいい。定数削減ではなく、議員報酬を削減し、パート議員にすればいい。政治参加のハードルを下げるのが民主主義です」

 これは記事の最後の部分で、結論的なところ。私も以前からこう考え、議会改革、特に定数削減に関して同じ発言をしてきました。同感! ということで、、頭にしっかりと残りました。「政治参加のハードルを下げる」ための条件というのが肝心なところで、そこの議論を制度的にするのが重要なのですが、それは議論のまた別の範疇となるでしょう。

 もう一人の論者である宇野東大教授の結論的言葉はこうです。

 「国の政治がなかなか変わらないのに対し、地方レベルだと劇的に変わる可能性がある。変革への願望が首長選挙で噴出する瞬間があるんです。デマゴーグが登場する恐れもあるが、だから地方に任せるのは危ういという議論にはくみしたくない。地方議会を機能させて首長との間に新しいチェックアンドバランスをつくるべきで、いまの動きを止めるべきではないと思います」

 これも当然のことで、この通りで反対することではありません。その前の部分、民主党と政党については、こう言っています。発言部分を趣旨違えないようにつなげてみました。

 上野さん「政権交代は期待はずればかりではない。政管癒着で隠されていた事実が出てきた。自民政権なら隠ぺい体質が出た。東電ももっと守っただろう。レスワース(よりひどくない)の選択という見地からすると、民主党政権のほうがマシだった」
 「われわれが論じている政党は50歩と51歩。ダメと言ってすべてをゼロに戻すべきでない。メディアや知識人が失望をあおっては困る。政党や政治家への過大な期待を捨てたほうがいい。小選挙区政治家はコマ。しょせんは消費財だ。そこそこの政治家、自分と同じ身の丈の政治家を送り込むのが民主主義の証。ベストではない、ワーストではないレスワースな着地点を探る」

 この部分も記憶に残ったところ。民主党と政党についても同感、自分の依って立つ地点もこんなところだろう、という感じです。
 結局、この2箇所が頭に残って、自分の言いたいところが記事にある、と書きました。

 さて、この特集のテーマ設定「強さに傾く有権者、それでいいのか」です。橋本大阪新市長の「強さ」に傾く(支持した)大阪の有権者の判断はそれでいいのか、といことになります。これが特集の議論の出発点になっています。
 この問いかけに対して、

 上野さん「強いリーダーシップへの期待は思考停止や白紙委任につながりかねません。“ハシズム”(橋本旋風=筆者注)の風に不吉な予感がします。」
 宇野さん「閉塞感と不安にかられて魅力的に見える人に全部放り投げる。その人の破壊的な言動に快感を覚える。それが橋本さんらが支持されるゆえんです」

 これについては、? 本当にそうかな、です。学者は、マスの現象を総体的にとらえて分析し、それを適切に(学者にとって)選択された言葉の連続の中に落とし込んでいきますが、そこは学者だからといって真に受けると危険です。紙面が限られた中での発言なので事実関係を省いているのかもしれませんが、多様性の中からの都合のいい事実をつなぐことは、社会科学の学者のマスコミ発言によくあるところ。日高市で講演を行う学者にも、この典型ではないかと思う人がいます。
 また新聞記者にもよくあるところ。彼らは本当に気をつけないと常習的ですから。市民はそこまで知らないだろうから、という先入観を感じる時があります。もちろん、このお二人についてこんなことはあてはまらないと思うのですが、記事からはそう感じました。学者、新聞記者の共犯が無意識に行われた時には、特に危険です。上野さんも、民主党と政党についての発言の際に警告を発していますが、メディアの中での言動は難しいのではないかと思います。
 大阪市民の「強さ」に傾いた理由はなんなのか。やはり爆発せざるを得ない歴史的理由、地域的理由が積み重なってそうなったのではないか。
 火山はマグマの滞留が少しずつ増えて爆発する、地震はプレートの圧力が少しずつ重なって跳ね上がる。自然現象に例えるのは行きすぎかもしれませんが、橋本氏は市民のマグマと圧力をうまくつかんだのかもしれません。次の記事を読んでそう感じました。
 二重行政についてはたくさんの情報がありますが、検索して一番先に出たのを読んだら、自分の要求を満たす記事だったので、引用します。
 http://www.senkyojapan.net/sp_oosaka/arukikata01/  
 日高市にマグマはあるのか。
 今の議会では、ちょろ火も見えないでしょう。せめて見えるようにして、焚き付け材料を増やしたいと思うところです。