総合計画市民会議と市民コメント――その7;提出した市民コメント

 市民コメントの対象として提示されるのは、ほとんど日高市としての最終的な形の案だと思います。市民会議の提言や市民アンケート、及びそれを材料に様々な庁内の打ち合わせを経て練り上げられたもので、余程のことが無ければ基本的な骨格はもちろん細部の文言まで変わらないと見ていいと思います。
 市民会議のメンバーとして私が発言したことは、すべてこの市民コメントを募集する際に市民に提示された最終案に折り込み済みと言えます。経緯を振り返れば、私の意見も含まれた「市長への提言書」がどう判断されたかが、コメントととして書くべきこととなります。
  市民会議の提案に対して、個々のメンバーに対して文書での回答がありました。その中で、「提言書」の一つ一つの提言に対してそれぞれの採否とその理由が述べられています。それは次の三つに分けられます。
 ①意見を採用する(全体または部分)
 ②採用しない
 ③当初案の記述に含まれている
 ④施策の中で検討する
 総合計画は広範囲な対象をカバーすることになるので、抽象的な表現になることが多い。したがって、提言の具体的内容や文言が意味としてその表現に含まれる、とされる③と④のケースが多くなります。
 問題となるのは②で、なぜ採用されないかに関しては理由も述べられています。私が市民コメントで出した意見は、それでも納得できない2点に絞って、市民会議の際と同じ意見を敢えて提出しました。
 第1点は、「里山」という言葉を採用しないで、「平地林」という言葉で代替するということ。
 第2点は、「緑の基本計画」を採用しない、ということです
 2の中で太字は追加した部分です。
 この2点以外にも個別に意見は多々ありますが、この時点では一応、検討されふるいにかけられた結果となります。  


1 「里山」について

 里山と言う言葉を入れることについては、「平地林」という言葉で替えるという方針を示されました。一歩前進と思いますが、全体を読んで、やはり「里山」を全体の方向性を示すところに入れて頂きたいと思うので、市民会議の際の文を修正してコメントと致します。

日高市の豊かな自然環境の代名詞的言葉として、「日和田山巾着田高麗川」の3つが必ずセットで使われます。
日高市の自然環境資源としては、この3つだけでなく、市内全域に残る平地林や里川などのいわゆる里山は大きな資源です。市民生活に恩恵を及ぼす自然環境資源としては、むしろこの「市内全域に残る里山」が重要ではないでしょうか。
 環境や景観および福祉など、日高市での住みやすさについての基本的な感覚は、里山の豊富さに起因しているところが非常に大きいといえると思います。今回の総合計画においては「里山保全」を積極的に評価し施策に取り入れようと言う視点は、希薄です。歴史的にも日高市の総合計画では、先の3点セットのみを観光資源として評価し、以外は開発の対象か触れることはありませんでした。
 大多数の市民は、市内全域に残る里山を景観として、また生活環境、福祉資源として評価、住むに値する要素と認識しています。自然環境資源、福祉資源、生活アメニティ資源、教育資源として、まちづくりの重点方向に加えることを望みます。
 「里山」は今後の環境重視の市民生活に取り入れられるべき概念として、いまや世界的に通用する言葉となっており、専門の学会ができているほどです。
 また、埼玉県においても、里山保全は積極的に施策に取り入れられています。首都圏にこれほど里山が存在している地域は他にありません。この資源を日高市のまちづくりの基調として活かすことは、日高市の今後10年のまちづくりに必要不可欠と考えます。
 環境省は、里山の環境を生物多様性のモデルとして、名古屋で開かれる「国連地球生き物会議」で提案します。日本各地、世界各地の里山の事例を集め連携し、自然と共生する社会の実現を進めようという計画です。世界の里山への理解のレベルはここまで来ています。

2 みどりの基本計画について

 緑の基本計画は、平成6年の都市緑地保全法の改正による制定以来、全国で80%以上の自治体が策定しています。これは緑に関する総合的なマスタープランともいうべきもので、総合計画の中で緑に関する考え方の基本となるものです。
 緑の基本計画は、市民の良好な生活環境をつくり、自然環境を計画的、体系的に保全、また新たにつくっていくためのもので、日高市もまちづくりの重点方向として「豊かな自然環境の保全」をいうのであれば、緑の基本計画の策定を施策の展開の主目的とすべきと考えます。また、この中に、先の3点セットと里山を位置付けるべきものと考えます。
 土地利用のマスタープランと環境基本計画の策定と連携して、この3つがそろってこそ自治体のまちづくりのビジョンが示されると言っていいと思います。みどりの基本計画は、景観条例とは別物で、すでに自治体の政策として実績のあるものです。