新しい公共と「あっ工藤だ」

 17日に嵐山の国立女性会館に行きました。年に一度の日高市ライブリーカレッジの宿泊学習です。今回は、土曜日の夜に自治会役員会があったために宿泊せずに2日目だけの出席です。8時に家を出てちょうど9時に到着。
 年間スケジュール表に書いてあった「これからの生涯学習」しか頭の中になかったので、そういうテーマでの話だろうと思っていたら、レジュメを見ると、「市民自治新しい公共」という重量級のテーマです。
 前半は、地方自治に果たす市民自治の役割の話、現在の制度の中から新しい公共を生み出すにはどうすればいいか、後半は、コミュニティの課題から新しい解決を探る、という話だったと思います。話される個々の項目は大体知っていることですが、はっきりした問題意識のもとに配列されると、時代が必要とするテーマの輪郭がより説得的に浮かび上がります。
 講師は北本市の市議会議員の工藤日出男氏。ユーモア豊かに理論と体験・実践の両面からの話は本当におもしろかった。議員にはめずらしい型にはまらない、本音の話しっぷりは、きっとファンも多いのではないかと思いました。
 市民と議員の関係は、人と人との一対一が基本、これを忘れてはならない、という発言が印象に残り、共感を覚えました。当選したときから日が経つにつれ、これを忘れていくのが大半のようです。「一人の人間」はマスとしての票扱いの中に埋もれ、票をめぐる駆け引き・取引に捉われるようになってしまう、政治屋の末路がこれです。
私は当時のことはしりませんが、工藤氏はライブリーカレッジの“生みの親”とのことです。そういえば、いただいた名詞に「生涯学習コンサルタント」とあり、そういう関係の出版社に在籍したとありますから、外部からの協力者として創設に関与したと思われます。
 質疑の時間になったときに、講師が空き農地の問題に触れました。“空”の概念は、レジュメの中では4つの“空”として図示されました。空き農地、空き家、空き教室、空き商店です。この図に面白さを感じていたので、空き農地の話題になったので、質問をしました。
 質問は二つ。一つは、空の解消についてです。もう一つは、講演の後半が新しい公共を担うコミュニティについてだったので、自治会の問題について質問しました。
 4つの空について国の政策を例示しながら前例にとらわれず進めれば、解決策を見出せるはずだとし、日高市の例として、農業政策の問題を取り上げました。
 日高市は、地形が複雑で農地が分散しているのに、自民党時代の大規模化と農地の集積という政策をとり続けることのミスマッチが空き農地が減らない原因ではないかと思うがどうか?
 この質問に対し工藤氏は、九州の有機農業の町おこしで有名な綾町をとりあげ、町長が農協の反対を押し切って有機農業の推進し成功した例を話しました。綾町のことは私もよく知っています。その他、市民農園には反対で、農業をやりたい人には本格的にやってもらう方式の工夫など、ほぼ私の考えている方向と同じでした。要は、大規模化は日本の農業にふさわしくなく地域に応じた工夫をすべきということ、まったく大賛成です。
 自治会に関する質問です。いま私は自治会の役員をやっていて、思うところは多くあるのですが自分の意見はいわずに、新しい公共という観点から自治会をどう思うか? と聞きました。
 工藤氏は、自治会は行政の末端組織で“官治”であると喝破しました。この官治をやめないと自治会にはなりえないというのです。これも同感! 地方自治体が霞ヶ関から自立することが地方主権の始まりであるなら、自治会も役所から自立して地域づくりに住民主権を進めるべきだと思う。住民の一番近いところで自立が不足し、右にならえの金縛りでは地方主権も絵に描いたもちになってしまいます。
 本来は、その回答から第二、第三の質問が出され、議論の面白いところになると思うのですが、時間の関係でチョン。残念至極! エンドレスの議論をやってもいいと思うのだが。何かもう一つ、物足りなさを感じての閉会でしたが、工藤氏のキャラクターの魅力を感じつつ新しい公共についてのイメージを再確認できたことは大きな収穫でした。
 工藤氏の名刺には驚いた。感心した。今まで貰った名刺の中で強く印象に残ったもののうちの1枚です。