距離感のわかる猫


 この面構えと目つき、お化け屋敷に出てくるような怪猫の目である。私との距離1メートル。動けばパッと方向転換して一目散、という態勢に入っています。この目がなかなか魅力的ですが、れっきとした野良猫です。
 このノラはここ2、3カ月前から見るようになった新参者です。いつも小屋の周辺をうろついていたのは気が付いていました。最初は3メートルの距離。私の姿を見るとさっと3メートル先に離れ、目が合うと小さくニャーと鳴きました。他の野良猫は私の姿を見ると、雲の子を散らすように逃げていくのですが、このネコはいつも3メートル先で佇み、こちらを眺めています。
私は、3メートルの距離が気に入って、これがいると、オッスとか何とか言って声をかけていました。向こうも、ニャーを、ある時は積極的にある時はめんどうくさそうに返してきました。
この声掛けを何回かしていたら、3メートルが2メートルになり、最近は1.5メートルにまでなってきました。それでも、いつ何時でも、逃げる態勢感を身体全体にみなぎらせてのことですが。
 この距離の短縮には、ある行動が伴っています。ねこに親愛の情、または敵対しているのではないというサインを送る行動です。
 目を細めて瞬きをする、これだけのことなのですが、この表情を何回か繰り返すのです。このことは、テレビでネコ番組を放送しているとき、聞こえてきたナレーションを聴きながらちらりと見たことが記憶に残っていました。
 本当か、いつか試してみようと思っていたところ、格好の相手が出てきました。3メートル先から目を細めて瞬きをすると、相手も同じことをするではありませんか。出合った時に、これを1、2回やることを続けていたら距離が縮まってきたのです。
 その結果としてこの写真、距離は80センチです。このノラは謙虚なところがあって、最初はいつも小屋の入り口の地べたに座っていました。私の顔を見ながら許可を求めてきているようでもありましたが、知らん顔をして時々、瞬きをしていたらござの上に乗るようになりました。ま、いいでしょう。苗床に雲古をしなきゃいいよ、と思いながらチラリと見て知らん顔です。


 少し安心した状態。



 フラッシュで何枚か撮られ落ち着かない状態。



 こちらに他意はないとみて、背中を見せている。