地域福祉へのBさんの思い

 高麗の郷でBさんから話したいことがあると言われました。ロビーでの一時、Bさんの話を聞きました。
 Bさんは福祉の分野で活躍していて、まだ福祉ボランティアについてはあまり認識が高くなかったずっと以前から地域での助け合いの必要性を訴えてきました。ある講演会場で参加した友人たちに熱心に説いて回っていた姿を思い出します。その熱心な奔走で日高で初めての福祉NPOが実現し、いま困っている人の役にたっています。
 そういう熱心な方だから、行政の福祉政策の行方にはとても強い関心を持っています。Bさんも私も現在、社会福祉協議会が主催する地域福祉の活動計画をつくる会のメンバーです。昨年開催された、地域福祉計画をつくる市の市民会議でも一緒でした。ボランティアとして日頃から場を同じくすることも多く、その考えには教えられることが多い。
 情熱がほとばしる話し方に、その場で理解ができないことも時々ありますが、じっくり話を聞いたり、文章で読むと、なるほどと思うのです。今日のBさんの話し。
 先ほど触れた社会福祉協議会の会議での議論についてです。いま地域福祉の活動の方法を議論していますが、序論を終えてようやく本格的な議論に入ってきたところです。しかし、議論の性格上、どうしても昨年行われた市の社会福祉課が担当した市民会議の議論と同じ傾向になっていきます。
 これにBさんは懸念を持っています。もう理想論ばかりを並べる“言葉遊び”をやめ、本人自身が思うしっかりした議論をしようという。これには同感です。かみ合った議論の積重ねがないと、また成果を実感できない結果になる恐れは十分ありそうだと、私も思っていました。そう思ったから、当初から議論の方法については発言してきました。
 Bさんは、言葉遊びでない、自分が本当に考えていることを言うべきだと言います。私もそう思います。自分の主張を言うのであれば巧拙はあっても自分の言葉で語れるし、各人の主張を議論で掛け合わせていけば、過程を踏んだ結果としての成果が得られるはずです。とは言っても実際の議論では難しい。そこは少しの工夫で、例えば簡単なメモでも作っての発言であれば全然違います。
 さて、Bさんの考えの具体的内容。簡単に言うとこうなります。
 「都市化や核家族化およびプライバシー偏重で地域社会と個人の生活の隔離がある。そういう地域社会状況の中で、日高市では、地域で暮らす個々人の生活の課題を共通の課題として検討する地域懇談会が成立しない傾向がある」
 大体こういうことだろうと思います。これは重要な指摘です。地域福祉の問題はこの「地域懇談会」ということにすべての問題が集約されるはずです。「地域懇談会」に参加する構成員がどのような個別テーマでどのように連携していくか。言葉では簡単に表現できますが、実際はBさんの指摘するように「成立しない」状況にあって、個人も集団もタコつぼの中から外をうかがうような状況です。
 なぜ成立しないのか――議論はここに向かって行けば、日高市の地域的特徴や市民意識、市政の状況など、捉えどころのむずかしい大きな問題になっていきます。やはり、これは身近なところでの成功体験から出発するより方法がないのではないかと思います。最近の話題です。
 「こまむさしだい福祉ネット」による武蔵台での市の開設。初めての試みとしては成功でした。人が集まってくれるかどうか、おっかなびっくり始めた企画でした。共催とはいうものの実際は福祉ネット単独の企画で、他の団体は引きずられる形ではなかったかと思います。
 しかし、人が集まる、ものが売れる、ふれあいができる、楽しい――となれば、これはもう最高の地域の再生です。この成功体験をもとにおのずと、求めるところが同心円的に形成されていくでしょう。自治会も商店会も本当の意味での“共催”に自然になっていきます。
 今回は十分ではなかった子どもたちの参加が実現すれば、確かな形が作られます。学校がPTAがボランティア団体がと参加するものが増えてくれば、それは同時に、「地区懇談会が成立する」条件が自然に自ずと作られていくことになります。
 しかし言うは易く、です。福祉ネットの活動に参加していると、まさに小さな力の積重ねを実感します。Bさんが言う成立を阻害する大状況を、成立への小さな可能性から変革していく、こういうことだと思います。Bさんの問題提起は、改めて問題を正面から考える糸口を提供してくれるものでした。