見えてこない日高市総合計画策定(3)

 ここで、私が出席した「第5次日高市総合計画策定に関わる各種団体懇談会」について詳しく触れておきます。
 「市民意見を次期総合計画に反映させる方法の第1弾として、日頃から様々な分野で積極的に活動されている方々に、市民の代表としてお集まりいただき、懇談会を開催することといたしました」(HPより)というのが懇談会の趣旨です。
懇談会は、昨年の9月末から10月にかけて次の日程で行われました。
・9月30日(火曜日) 農林業分野、環境分野
・10月1日(水曜日) 教育分野、福祉分野
・10月2日(木曜日) まちづくり分野、商工業分野
・10月3日(金曜日) 安心安全分野、協働分野
 それぞれの分野で参加した団体は次の通りで、市からの指名によって参加しました。
・農林業分野――日高市農業会議所、日高市農業会議所婦人部、高麗アグリ女性埼玉、高麗高齢者農業生産集団、 ブルーベリー研究会、ぽろたん研究会、養鶏部会、養豚部会、酪農組合
・環境分野――日高・緑の会( エコ・ガーデニングクラブ、自然農業を楽しむ会、ひだか憩いの森サポートクラ ブ、日高ごみ減量推進市民ネット、日高まちづくり研究所、小畔の会、生活クラブ生活共同組合、チャレンジ・ひだかの会観光ガイド部会、日高環境浄化の会、日高ふるさとの会、緑の少年・少女K O M A アウトドアクラブ)、環境ボランティアの会
・教育分野――P T A 連合会、高麗川小学校学校応援隊、日高市文化協会、日高市子ども会育成連絡協会、青少年育成日高市民会議、日高市体育協会、日高市レクリエーション協会、日高市スポーツ少年団本部
・福祉分野――日高市民生委員・児童委員協議会会長会
・まちづくり分野――日高市都市計画マスタープランまちづくり市民会議( 平成20 年7 月4 日市長への提言を行ない解散。)
・商工業分野――日高市商工会
・安心安全分野――日高市消防団
・協働分野――日高市区長会役員会
 この団体名を見て分かるのは、環境分野を除いては、大体行政と協力して市の各分野を運営している団体であるということです。
 総合計画を策定する際に、市民参加をどういう形にするか自治体によって様々です。前回書いたように、従来の策定の欠陥を修正し策定過程に出来るだけ市民の意見を反映させようとする場合は、つまり欠陥修正に意欲的な自治体は、市民から意見を聞く仕組みをつくり、1年とか半年かけて行っています。趨勢としては大体、そのような方向であると思います。
 その他に、市民アンケートや地区懇談会を行って多様な意見の集約を図る、というのが共通したところです。市が指名し、市と協力関係にある団体だけで多角的な意見の反映に十分であったかどうか、議論の余地があります。 
 一例を言えば、福祉分野に民間の福祉団体が一つも入っていません。社会福祉協議会はどうなのだろうか。民生委員と児童委員も日頃の活動から立派な意見と視野を持って活動していることはよく承知しています。しかし10年先の日高の福祉のイメージを描くのにより多様な団体の意見を聞く必要があったと思うのです。
 「第5次日高市総合計画策定に関わる各種団体懇談会」は、主担当の企画課のほか各分野の担当者9人とコンサルタント会社から2名が出席、総勢十数人の出席がありました。
 会議は「懇談会」としていますが、実際はワークショップでした。事前通知にワークショップという言葉がなかったので、この会議運営に抱いていたイメージと実際の形式に参加者がギャップを感じたようです。
 具体的には、いわゆるSWOT分析です。SWOT分析とは、経営分析の手法で最近公サービス分野でも使われるようになりました。懇談会では、この手法について特に説明はありませんでした。各語の意味は次の通りです。
 S:strength(強み) 
 W:weakness(弱み)
 O:opportunity(機会)
 T:threat(脅威)
 このうちSとWについてのみワークショップで紙に書いて提出、まとめられました。なぜOとTについて除外されたかは分かりません。推測ですが、OTは、過去の市政の反省・批判が伴います。また、SWに基づく分析による判断という側面があるところから、そこは市民はやらなくていい、行政がやる、ということかもしれません。
 本来は、SWOTがどのように戦略課題に結びつくのか説明し、この手法でやるならば全過程への参画が必要となるはずです。公表されている企画課の資料「新たな総合計画の策定に向けて」によると、市民会議による市民参加は、出来上がった計画への部門別担い手としての参加と位置づけられているようです。
 この懇談会の終盤、コンサルタントの紹介がありました。その時のコンサルのリーダーと思われる人は、とうとうと日高の“個人的”将来像を語り、異様な感じを受けました。「ぎょうせい」という会社は、全国の地方自治体に隈なく浸透し、出版やコンサルでの実績は大変なものです。その自負が社員にも現われているのかもしれませんが、市民を前に勝手に将来像の見解を述べる姿に、私は不快の思いを持ちました。そういうコンサルがどういう指導をするのか、当初から心配でした。
 「戦略課題の設定」は、これによって主要な日高市の目標と具体的な事業が決められていくでしょうから、非常に重要です。当然、予算の裏付けも次期総合計画が始まると同時に行われます。そういう意味では、予算の骨格と市民サービスの選別につながることで、ここにこそ市民的議論が集中されなければなりません。
 今までの進行と考え方・手法には、それが見えてきません。見えてこないどころか、説明不足と情報開示の不足は、これが市の根幹の計画を策定する場であるのか、と思ってしまいます。一次情報としての市民の意見を聞くことを形式上行えば、後は“専門的で高度なレベル”だから自分たちで進める、というのでは、市が盛んに標榜する「協働」が泣きます。
 総合計画だけではありません。マスタープランの策定過程でもそれを感じました。
 策定の詳しい工程表もあるはずですが、公表されていません。市役所内でのプロジェクトチームも編成されて恐らく実作業は進行していると思われます。そういう場で検討材料となっている、市が目指す「戦略課題の設定」の基礎となるデータもあるはずです。
 議論の共通基盤となる情報の公開は不足しています。公開しても何の不都合もないと思うのですが、市民参加や公開による議論や対応が“めんどうくさい”という姿勢が垣間見えてきてなりません。