満水の田に笑みも浮かぶが忍び寄る恐怖

 ほぼ毎日、田の水の状態を見に行きます。今年は行くのが楽しい。もちろん、水がたくさんあるからです。今までの経験からすると、水があってもお天道様が照れば、流水の供給が断たれあっという間に干上がってしまいました。
 1本植えのスカスカ状態でまだ見栄えはよくないが、4枚の田に行き渡っている水を眺めると自然に笑みもこぼれてくる。この状態がいつまで続くか。
 今日、田に下り立ったらあのカルガモの親子がいました。随分大きくなった子供たちに向って言ってやりました。「おーい、いつまでお母さんの後を追っかけているんだ」と。

 彼らの姿を見ると気も和むが、視線を田の中に移し目を凝らして水中をを眺めれば、そこには恐ろしい光景があります。発芽したヒエです。ヒエは発芽しても水が10センチから15センチあれば伸びてきません。そして伸びないうちに稲が大きくなってしまえばいいのです。深水管理、これが有機・無農薬の稲作の絶対条件とされています。

 しかし水が切れ水深が浅くなったり底が空気に触れるとどうなるか。ヒエは槍の刃先を天に向け(光合成で葉先を突きたて)、ゾンビのように一斉に立ち上がります。そして2、3日で田は緑一色になり、稲がどこにあるか分からなくなってしまいます。
 さぁ、今年は田車の出番があるぞ。いつ出動させるか。無農薬稲作の必須道具と何年も前に買った田車は出番がなく小屋の中で眠っていました。初陣の時期は師匠に相談してみよう。
 カルガモの他に、今日は見たことのない鳥が田んぼに来ていました。

 棒の先に止まっているのはカワセミでしょうか。この鳥は、空中でホバーリング、つまり羽ばたきながら空中の一点に止まります。そしてそこから急転直下で水に飛び込み、獲物(多分おたまじゃくし)をくちばしで捕えました。