日高のみつばちも全滅?

 以前、みつばちが蒸発していることを書きました(http://d.hatena.ne.jp/hideoyok/20090429/p1)。そして、文芸春秋社からローワン・ジェイコブセン著/中里京子訳『ハチはなぜ大量死したのか』が出版され、この本についても触れました。
 それ以降、1カ月の間にたくさんのテレビ番組で、この問題が取り上げられたようです。私は番組表を見ないので、たまたま見た印象でもそうなのですから、実際は相当、放送されたんではないでしょうか。その証拠に、周囲の多くの人たちが「ミツバチが死んでいて大変だ」という事実を知っているということです。
 一夜にしてミツバチが原因不明に大量に失踪する蜂群崩壊症候群と言われる現象は、世界的に起こっていることで、原因は各国で研究されているにもかかわらず不明です。最近急に発生したのかと思ったら数年前からの現象で、2007年には、朝日新聞アメリカの事情を報道しています。
 それが世界に広がり、日本でもハウス栽培での受粉に導入されるセイヨウマルハナバチが飼育国オーストラリアが輸出禁止にするなど、農業への影響が広がっています。テレビでも、授粉不十分になったハウスでのいちごの不出来を放送していました。また、養蜂業者のミツバチでは以前から発生していたことが農水省の調査で分かっています。
 原因各説について、フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』で非常に詳しく解説されています。市民が執筆するので玉石混淆のウィキペディアですが、「蜂群崩壊症候群」は専門家が書いたらしく、各国の文献に基づいて各説客観的に公平に書かれていると思われます。
 さて世界的現象で日本各地でも発生しているこのミツバチの異変が、日高市でも起こっているようです。
 日高では専門的に養蜂を行っている人が何人かいますが、一人を除いてこの異変が起こって全滅に近いそうです。もちろん原因はわからいとのこと。
 養蜂は、単にミツバチが集めてくる蜜を横取りしているわけではありません。群を維持するために動物行動の知識と専門技術に基づく不断の手入れが必要とされるそうです。
 ミツバチの大敵であるダニは、失踪・蒸発の原因の一つとされています。ダニはミツバチの首の周りにつくのですが、この駆除のために日本では農薬メーカー1社しか作っていない特効薬があるそうです。巣箱の中に吊り下げられて使用されるこの薬は、日高市で生き残っているミツバチに使われているとのこと。
 ウィキペディアでも解説しているように、ダニそのものとそれを駆除する農薬もいずれも原因説として挙げられています。また環境に放出される農薬全般もまた原因の一つとされています。
 失踪・蒸発に共通の原因が見出せないように、生き残っているのが偶然なのか、必然なのかは誰も分かりません。管理がいいからだ、と生き残り所有者は言っていましたが、それはもちろんあるでしょうが、身近なところで起こっている原因不明の世界的現象の本当の原因は何なのか、関心を持たざるを得ません。
 自然界には、まだ分からないことばかりです。農業の観点から言えば、作物の根の周辺で起こっている成長へのメカニズムと生物の共生の仕組みはほとんど分かっていないそうです。特に、土の中の微生物の役割に関しては未知の領域です。
 現在行われている、作物の成長に良いとされる微生物を選択的に投与して土を改良することがどんな結果をもたらすかわかりません。あるいは遺伝子操作で作物そのものを改良して、成長を早め収量を多くすることがどんな結果をもたらすかは誰も予測できません。
 私が『自然農業』に魅かれるのは、未知の領域はそのままに、観察に基づく自然の姿・摂理を再現することに主眼を置き、自然の改変を出来るだけ少なくするという考え方に基づいているからです。
 その考えを基盤にして、畜産を含めて農家の経営が成立する規模やコストの経済合理性を体系的に確立させています。そこが「自然農法」とはいわず『自然農業』と称する所以で、単なる言葉違い以上の大きな意味があります。ミツバチから話題がそれました。
 いつも思うことがあります。巾着田で農薬の使用だけはやめられないだろうか、ということです。水路で遊ぶ子供たちを見て切実にそう思います。景観を枕言葉にし観光の産業振興を言うのは結構ですが、同時に別の感性を併せ持つことも必要だと思います。
 止める必要性と止められる条件がそろう可能性があれば追究した方がいい。それで止められれば人間にとってもミツバチにとっても、世界から見てピンポイントであっても意義は大きいのです。
 こういうことも含めて目に見えない価値を創り出していくビジョンをいつ、どこだ誰が語るのだろうか。