自然農業の基本資材、天恵緑汁づくり

 私がやっている自然農業では、「天恵緑汁」が最も重要な資材です。これは、自然農業を創始した韓国の趙漢圭(チョウハンギュ)氏が考案したしたもので、野草の若芽を黒砂糖に浸けてできる発酵液です。
 黒砂糖の浸透圧で抽出された液は、植物の血液であり、自然の精気を余すところなく取り出したもので、これを作物に施すことで生物としての自然の力をみなぎらせる効果があります。その結果、病虫害に強く、作物本来の能力を発揮できるようになります。
 天恵緑汁づくりは春の今時の最も重要な作業、今朝は材料を採りに近くの沢に下りていきました。材料としての野草は成長力旺盛であれば何でも良いのですが、私が使うのは、ヨモギ、セリ、カンゾウなどです。本来は朝日が上がる頃の植物の活力が最も盛んな時間に採りに行くべきと、自然農業の教科書は教えていますが、今日は7時頃の出動。
 自宅から歩いて5分のこの沢には1反半ほどの谷津田があります。耕作しなくなってから何十年も経ち、畔も崩れてしまっていますが、田んぼであったことはかろうじて分かります。6年くらい前にこの田を復元しました。深い泥田で日陰でもあり、稲の出来は悪かったのですが、愛着がありました。樹木にさえぎられた沢筋にあり、外部からは完全に遮断されています。森を抜け、降りていくとぽっかりとした空間が突如現れ、この中に入ると日常とは異なる時間の流れがありました。

 人がほとんど入らないので自然の宝庫。田んぼをやっている頃は、サワガニとそれに食いつくヒルが沢山いて、湿地と山地が具合よく接しているためトウキョウサンショウウオもよく目にしました。ホタルも沢山出た。
 田んぼを続けたかったのですが、沢筋全体に広がっていた川の流れが上流で一本化されてしまったため、田に水が入らなくなって断念。残念なことでした。
 田んぼ諸体験の熱意と意欲できれいに復活させたところは、今はこの通り。人手が入らなくなると2,3年で山林に戻っていきます。

 左の杉林の上が私が耕作している畑。

 1年中水が枯れない流れ。

 採取したヨモギカンゾウで天恵緑汁を作ります。重量の半分くらいの黒砂糖にまぶし、カメに浸けて1週間ほどすると、液があがってきます。ヨモギはほとんど水分がでません。それだけに貴重です。