小川町での「無農薬・有機稲作のための育苗技術」講演会に参加

 小川町に有機稲作の第一人者である「民間稲作研究所」の稲葉光圀氏が講演で来られるということをメルマガで知りました。しかも小川町主催で他所からの参加も無料でOKですと。うーん、何というベスト企画! こんないい機会はない、即申し込みました。
 稲葉光圀氏は自然農業協会とも関係の深い方で、その考え方は、雑誌の文章や著書で大体知っていました。しかし無農薬稲作に賭ける情熱は有名で、こんな近場で本人の言葉で話が聞ける機会は逃せません。
 開催内容は以下の通りです。主催は、下里農地・水・環境保全向上対策委員会。申込みが町の産業振興課とありますから小川町が後援しているようです。
 「下里」というのは小川町東部の山間の槻川沿いにあり、全国に轟き響き渡る有機農業の盛んな地域です。その地域の有機農業の代名詞のような存在の方が、金子登美氏です。有機農業だけでなく農業後継者造りや食の問題や自家製バイオガスなど話題は広く、日本の有機農業の先導役として知られています。
 また「農地・水・環境保全向上対策委員会」というのは、農林水産省が平成19年度から導入した政策で、、農業者だけでなく地域住民や自治会も一緒に農業・農村の基盤づくりと環境の向上を行っていこうというものです。農村の景観や自然を地域共同体として維持し、化学肥料や農薬も減らして
環境負荷の少ない農業を目指すことも目標です。農水省に申請して補助金が貰えるので全国各地で実施されています。日高市でも高萩地域で一件の活動組織があり、草刈や花植えなどを行っているようです。
 
【下里農地・水・環境保全向上対策委員会特別講習会―有機農業専門研修】
時:3月26日(木)10時〜15時
所:小川町農村センター
小川町下里459-1
講師:稲葉光圀 氏 NPO法人 民間稲作研究所代表
内容:育苗、肥培管理、栽培理論、輪作体系(稲、麦、大豆2年3作)など
定員:80名(受付 2/16〜3/18)
会費:無料
問合せ・申込み:小川町産業観光課 農林グループ農林担当
主催:下里農地・水・環境保全向上対策委員会

会場となった小川町農村センター。山裾に槻川が流れており、裏から田んぼになっている。

 さて、当日は朝の農作業を終えて出発、早く出たのですが道に迷ってしまいました。会場の下里農業センターは町の国道から山間に相当入ったところ。途中のJAで道を聞いたのですが、いただいた地図をよく読み込めませんでした。会場に入った時、ちょうど稲葉氏の講演が始まったところでした。
 道すがら眺めた下里の農村景色は素晴らしいものでした。槻川に沿った基盤整備された田んぼと山際の畑が連なる美しい里山です。低い山が間近かに迫っているので、日高ほど開けた印象はありませんが、道路が幹線ではなく地域の生活・農業用なので、沿道の開発が進んでおらず、落ち着いたローカル色があります。
 有機農業の里というにふさわしいイメージで、小川町はいい財産があり、それを活かしていっているな、と思いました。有機農業を始めた一部の人々の粘り強い努力で、全国から青年が有機農業を目指して集まってきています。あちこちの農家に研修生として無農薬農業の技術を学び、そして全国に散っていき、あるいは小川町に就農・定住する、今や国の大規模農業化とは違った意味で農業の先進地となりました。行政も応援している状況が、最近の小川町の情報から良く分かります。
 日高市はどうなんだろうか。平成21年度日高市農業委員会の目標、およびその達成に向けた活動計画(案)が発表されました。閲覧をいま行っているので、読んでみようと思っています。“地域の農業者のみなさんからの意見・要望も募集します”とあるから、農業者以外の市民が入っていないんですね。農業委員会の仕事は具体的な農業施策とはちょっと違うのですが、問題の本質は共通しています。まず、ここだと思うのです。
 稲葉氏の講演は素晴らしかった。稲作のプロ農家向けの話で非常にレベルの高い内容でした。私も失敗ばかりですが全部経験した内容なのでよく理解できました。、しかし、その通り出来るかどうかはまた別の話です。
 東京教育大学・現筑波大学農学部大学院を出て農業高校の教師をされていましたが、有機JAS制度の発足を機に、教師を辞めて無農薬稲作の普及を目的とする「民間稲作研究所」を創設しました。外国の有機米に席巻されないための国産技術開発をめざしたのです。情熱と使命感に基づいた言葉の一つ一つに重みが感じられました。

稲葉光圀氏「米を食べて丈夫になった。もっと美味しいコメを作ろう」と呼びかけた。