吉田太郎氏の「キューバの有機農業」紹介がおもしろい

小川町からの「吉田太郎」情報

 昨日、ゲバラキューバ有機農業について書き、その中で、吉田太郎著『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』という本について6年前に書いた文章について触れました。ところがその原稿を書いているちょうどその時、配信されてきた「まぐまぐ」のメールマガジンに面白い内容がありました。
 『革命50年・ゲバラ生誕80年記念友好フォーラム――知られざる豊かな国、キューバを通して見えてくる世界』
 こういうタイトルです。タイミングいいメルマガでした。主催はキューバ友好円卓会議。今週24日(土曜日)の開催です。行ってみたいが土曜日はいつも畑が最優先です。
【日時】 2009年1月24日(土) 午後1時30分開場
【会場】 なかのZERO小ホール http://www.nices.jp/access/zero.html
JRまたは東京メトロ東西線中野駅南口から徒歩8分
【参加費】第1部 1000円 第2部1500円 1部2部通し券2000円
第1部 フォーラム 午後2時〜5時
 第2部 キューバ音楽とサルサの祝祭 6時開場 午後6時30分〜9時  
 パネラーは、ジャーナリストで、NGOストリートチルドレンを考える会」共同代表の工藤律子、写真家・カーニバル評論家の白根全、作家の戸井十月の各氏と『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』の著者である吉田太郎氏。これらの方は、流行ではなく一貫してラテンアメリカキューバに関わってきた人たちで、現地での経験を語れる数少ない専門家です。
 私が配信を受けているこのメルマガは「小川町マップ」といいます。埼玉県の小川町です。発信元は生活工房「つばさ・游」。3人の主婦が10万円ずつ出し合って始めた地域づくりニュースを発行する集まりで、その設立の言葉はこうです。
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 埼玉県の西北に位置する比企郡小川町は、自然豊かな山里です。
 この自然がいつまでも、と願っています。
 今住んでいる、この町が大好きです。
 だから、この町のことをもっとよく知りたいと思いました。
 どんな人が住んでいるのか、買いたいものはどこに売っているのか、
 どんなお店があるのか、どこで講演会が催されているか。
 そんな情報を手に入れたいと思いました。
 送り手と受け手の間を情報が行き来する町であってほしい。
 ふつうに暮らす町の人たちと、自分の思いや人生、お互いの知っていることを語り合いたい。
 生活工房「つばさ・游」は、主婦3人のこんな思いから生まれました。
 生活という視点から町を切り取り、紹介していきたいと思います。
 みなさんの声と情報をお寄せください。
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 生活工房「つばさ・游」は小川町に関する生活ニュースやイベント・講演会情報を集めて発信し、地元産の有機農産物、有機食品の紹介と販売も行っています。
 有機農業では小川町は良く知られています。余りにも有名な有機農業農家の金子美登氏と氏を中心とする有機農業集団。金子氏の霜里農場には全国から研修生が集まります。生活工房「つばさ・游」のような市民による情報発信組織もあり、有機農業の層の厚さを感じます。日高市には、残念ながら有機を宣言している農家は未だありません。

吉田太郎氏のキューバ有機農業紹介がおもしろい

 吉田太郎氏もかつて、東京都に勤務しながら金子氏の農場で土日の研修を経験しました。吉田氏は1961年東京生まれ。筑波大学自然学類卒。同学大学院地球科学研究科中退。『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』を書いた時は東京都の農業関係の職員をしていました。現在は「長野県農業大学校勤務」となっています。
 この本を書いてからの氏の活躍はすごい。キューバへの並々ならない傾倒が氏の情報収集力を一層高め、未だかつて日本人が知らなかったキューバに関する新しい情報とそれに基づく新しいキューバ像を私たちに示してくれました。それは360度転回の全く従来とは異なる斬新なものでした。これほどの情報転換はめずらしいものでした。
 それまでは、年配者ならケネディキューバ危機、ソ連の属国などのイメージもあるでしょうが、大半の者が砂糖生産だけのイメージであったと思います。無理もありません。アメリカの経済封鎖で、キューバはいわば鎖国状態だったわけですから。世界の経済発展から取り残される、いやこの表現はよくないですね、世界の価値観とは別次元の独自の社会を作ったのです。
 その独自性を吉田氏は私たちに克明に説明してくれたのです。独自性は社会構造から生活様式まですべてに亘っていたので、吉田氏の書くべきテーマは無限に広がっていて、氏の筆力は俄然、怒涛の勢いをもってほとばしったのです。
 それにしても、すごい筆力・文章力です。小川町での研修時の仲間はこう言っています。「当時から彼は、物事の本質を見極める抜群のセンスと緻密な調査能力と明解な文章を迅速に書き上げる 才能を持っていました」(「石ころ農場」より)。それと語学力も抜群、東京都に勤務しながら、土日には小川町での農家手伝いに出かけてくるフットワークのよさ。吉田氏にとっては、東京から小川町までの距離とキューバまでの距離の違いはなかった。その後、氏はキューバに足繁く通い、見聞の成果を私たちに開陳してくれることになったのです。
 それにしても、。『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』はすごかった。これでもか、これでもか、まだあるぞ、と事例、エピソードが次から次へと出てくる。総ページ数416頁。各章各節が一冊に値する内容である。いま、それが、新たな取材と分析が加えられて次々と出版されています。福祉、医療、教育等々。私たちの経済社会と対極にある社会の仕組みと人々の生活がリアルに楽しく描かれる――行ったことにない観光地の面白さに似た陽気な面白さ、それでいて経済を競って崩壊していく社会のアンチテーゼをしっかりと認識させてくれる、そんな魅力があります。
 氏の本を読み情報に接する時は、キューバに関することであるがキューバだけに関することではない、と言えます。キューバを突き抜けた文明論だからです。そこにキーワードはいくらでもあります。成長なき経済、そのもとでの福祉、石油なきエネルギー社会、等々。我々の生活の対極をイメージすればいいわけです。そこには、どんな博識傍証の理論より説得性あるかつわかりやすい文明論があります。
 吉田太郎氏の本をとサイトに触れてみることをお勧めします。
 http://www14.plala.or.jp/Cuba/