凧揚げ大会に出ます

 昨年、日高市コミュニティ協議会主催の「日高市手づくり凧揚げ大会」に運営をお手伝いする役員として、所属するボランティア団体ソクラテスの会から参加しました。その時、自分の子供の頃や子供たちに教えたことを思い出し、また凧の簡単な造作と風の関係やらに興味を持ち、来年は参加するぞ、と公言してきました。
 そしてシーズン到来、今年も運営役員を買って出て、さらに凧もあげることになりました。といっても凧は作ったこともなし。竹と紙で何とかなるさ、と内心では思っていました。そう思っていた矢先、ソクラテスの会の会員から電話がありました。「凧上げの上手な人がいて、凧揚げ大会に出るなら自分の凧をゆずってもいい」とのこと。これは何というグッドタイミング。一瞬、自分で作る工夫がなくなるかな、と思ったのですが、名人のノウハウを教えていただくいいチャンスだ、と有り難く頂戴することになりました。
 凧に興味を持ったのは、揚げる面白みはもちろんですが、飛行機にもあります。畑は入間、横田両基地の飛行コースの真下にあります。いろいろな飛行機が離着陸の態勢で通過していくのをいつも見ています。田んぼはコースから少し離れていますが、里山の中から浮かび降りていくのがよく見えます。
 原理は知っているけれど、やはり巨大な鉄の物体が飛んでいくのを見ると、ただ単純にすごいことだと思ってしまう。揚力と推力の物理的関係と言ってしまえばその通りなのだが、理屈ぬきに自然の力を利用する技術の力に感心します。凧にも何となく、飛行機に対するそんな思いと同じものがあって、風任せではない空気の流れをコントロールする何かがあるんではないかなという関心がありました。
 さる日の夜、凧を提供して下さる方の話を伺いました。やはり名人は違いました。Kさん、凧揚げではよく知られた人で、経験20年。微風でも高空に豆粒になるほどよく揚がる凧を作り、凧そのものも鑑賞に値する工芸品としての価値あるものを作る人です。

 2年以上乾燥させた真竹を削ってつくる凧のホネ、小川の和紙、映える絵の書き方、まさに職人の年季の入った技術には感心するばかり、竹と紙で何とかなるさ、ではありませんでした。風にまかせてあがるのかもしれませんが、それでは風と対話することにはならない、心を込め、空気の流れを受け止める技を磨かなければいけない。自然を相手にする心構えは、どんなことでもその精神は同じだということです。
 作る凧は、見本と同じ形で、角が上に付いた変形と横に長い四角。サムネールに書かれた設計図と寸法が書き込まれた和紙、さらにそれぞれの凧の削られた真竹、と至れりつくせりの準備です。感激しました。
 風と対話するための細かい工夫を、竹と紙の二つの簡単な材料にどう盛り込んでいくか、また見て楽しく、美しく仕上げるためにどうしたいいか、独自の経験と工夫を披露して下さいました。糸を繰り出すカイコの糸車、糸がからまないための釣りのサルカン、と創意・工夫も随所です。

 Kさんのレクチャーと提供していただいた材料で、気合いが入りました。風まかせでない、糸を通して伝わってくる風の“感触”を楽しめる凧を作ります。
 新聞にも凧特集が出ました。全国には凧の愛好家も多く、土地に伝わる流派があるそうです。簡単な構造ながら、風との対話を引き出すさまざまな形に、凧揚げの奥の深さを感じます。