『税金を払わない巨大企業』

今朝の新聞の見出し
「法人減税の2年で3.29% 税制大綱きょう決定」とあります。これは政権が6月に閣議決定した成長戦略としての法人減税の実現です。現在の法人実効税率は34.62%で、これを2年間で3.29%引き下げて31.33%とするとのこと(図表:朝日新聞12月30日)。

しかし、法人減税の話題は政治課題として頻繁に出ますが、いつも不思議に思うのですが、外国と較べて高くない、という専門的意見があるのに、マスコミは徹底的検証を行っていない感がします。
目をこらして見ているわけではないので見落としているのかもしれませんが、政府税調の決定をそのまま伝えるだけで読者が必用とする情報になっていません。こういう記事に接すると、これこそ新聞の編集のあり方として、反対論を見極めた上で併置すべきだと思います。
そこで、以前に買ってあって積ん読になっていた本を引っ張り出しました。『税金を払わない巨大企業』

著者は中央大学名誉教授の富岡幸夫氏。この人の本は、産業論か何かを読んだ記憶があり、税の専門家であることは知っていました。怒濤のこのタイトル、それも保守系大出版社、文藝春秋の新書なのである。
著者のあとがきにある一節が素晴らしい。
「税制は政治のバックボーンであり、社会の公正さの鏡です。公正な法人税制を再建すれば、国民から信頼される政治が確立すると共に、企業国家としての発展が期待できると信じています。……税に70年近く携わり、税を50年以上研究し続けて、税の表も裏も知り尽くした私が、日本の財政や税制を真に改革するための遺言として本書を著しました。」
まだ読んでいませんが、税を納めるデータから実際の企業を丸裸にする実証的研究は、完全無敵、どんな減税論も蹴散らしてしまうオーラを発散させています。それは表紙の「ソフトバンク純利益788億8500万円 納税額500万円 0.006%」「日本の法人税は本当に高いのか」というキャッチコピーからもその先入観破壊力の威力が分かります。
読んで見るべし。91歳の老学者の学者らしい信念と情熱と何よりも学問的真理は、正に「遺言」にふさわしい(私がこう言える訳はないが、こう言いたいので敢えて言う)と思います。