佐倉市議会の改革

2 2つの事件
 平成21年1月に、ある議員が議員の地位を利用して市職員に対して不適切な働きかけをしたことが明らかになった。佐倉市では、平成14年から「佐倉市市政に関し職員が受けた働きかけの取り扱いに関する規定」を制定し、議員の利益誘導等の介入を組織的に防ぐことを行ってきた。
 実際にそういう介入ががあったときは、それを職員が文書で市長に報告することになっていた。その報告書が情報公開によって明らかとなり、新聞報道されたのである。
 市民の議会に対する目が厳しいものとなり、議会としても行動しなければならなくなった。この事件をきっかけに、3月「議員の政治倫理に関する決議」が賛成多数で議決され、その中で、政治倫理条例を含めた議会基本条例の制定に向け取り組むことが明記された。
 この議決に基づいて。7会派からの委員で構成される議会改革特別委員会が設置されました。
 もう一つの事件は、「志津霊園問題」といわれるもの。都市計画道路にかかる霊園の立ち退きにについて、執行部が議会に相談しないで、30億円ものお金を支払ってしまい、後で回収が行われたが1億5千万円の金額が行方不明となってしまった。
 これは市政の底に流れる課題として、また議会は何をしていたのか、という行政監視の問題として、市民の厳しい目が向けられてきました。このような市政を揺るがす過去の事件に常に向き合わざるを得ない環境にあったと言えます。
 こういう問題は、地域の“恥ずかしい問題”として、水に流すか意図的に忘れるかの集団的催眠行動になってしまうものですが、佐倉市議会はこれに正面から向き合いました。前者の事件は決議に明記し、後者の事件は、逡巡はしたものの、議会基本条例の前文に明記されました。議会が忘れてはならない象徴的出来事として、永遠の記録とされたのです。
 悪材料を改革のエンジンに変え、それを議会の認識として市民に粘り強く訴えてきたことが成功につながりました。議長の説明を聞いていて、よくぞやり遂げた、という思いに駆られました。もちろん、いろいろな裏があるでしょうが、経過の努力・苦労についても、また作り上げた成果に対しても、素直に拍手する気持ちになりました。
 日高市では議員の市役所各部への特定利益を代弁する働きかけはどうなんでしょうか。
 
3 市民の反応
 説明を聞いていて、おもしろいなぁと思うことがありました。
 これだけの“不祥事”があれば、市民が怒るのは当然でしょう。その水準が高ければ、市政に関心を強く寄せるハイレベルというか過激な市民の塊り、一団が現れてくるのは自然の成り行きです。それは個人でありグループであったりいろいろでしょうが、横の連絡等はないが極めて意識の高い層という意味です。
 議会基本条例の素案ができて、市民の意見を聞き、さらに説明を直接行うことになります。寄せられた意見は、長文でも要約等の手を加えずにそのまま発表しました。誠意、平等、僭越でないこと等、この点は非常に重要なことだと思います。公平を考えてのことでしょうが、
行政がやるときは普通は短くしてしまいます。意が通じません。
 説明会は行政の手をかりずに一切を自分たちで行いました。5カ所で開催した説明会には、かのハイレベル市民がいずれの会場にも現れ、批判の高エネルギーを議員諸氏に照射しました。これは非常に高いハードルだったという。 反対ではないものの過激な意見に会場が荒れ、険悪な空気になったこともあったという。それでも辛抱強く耳を傾け、妥当な点は修正し原案を作り全戸配布して市民報告会に臨んだ。最後には、批判市民も「よくやった」という言葉をかけてくれたそうです。
 やはり説明と報告は愚直に行い、対話が必要です。これは議会だけでなく行政にも通じることですが、恐れをなして逃げるか無視するか放置するかして、却って疎遠な関係になる、これが一番避けなければならないことだと思います。最初は時間がかかるかもしれないが、一旦ルール化されたら、これ程強力な関係はない。それを築けるかどうかが自治体の能力という時代になると思います。
 
 4 議員の格差
 佐倉市議会では、先に書いたように、この議会改革を会派代表者で行ってきました。いろいろな局面ではもちろん、委員会に参加していない議員の意見を丁寧に聞きました。
 委員は、緊張感を持って市民と真正面から向き合い、民主主義の道具としての知識も磨き、委員会総体としての改革への実力を備えた時、何が明らかになったか。参加していない議員との能力の差がはっきりしてきたという。それはそうでしょう、3年にわたる実務と調査と研究を重ねれば。
 多数の議員から構成される議会の場合、そこが難しいところです。日高市議会は18人、全員で行って不都合は何もありません。代表者という意見もありましたが、全員となりました。私も当初から主張しておりましたので、いいことです。
 分科会、これも集団で議論するときよく言われますが、私の経験ではいい結果は出ません。もちろん人数にもよりますが、分かれて議論すると、理解の程度や方法や段取りがグループごとにバラバラになり、後でまとめるのに困難。全員で行えば理解の平準が進み、何よりも進捗への意思が生まれます。

 個別の改革項目についてはリストにまとめてみます。