またドブ板

 そういえば、「ドブ板」に傍線を引いた本がまだあるなと思い出し、確認してみたらありました。
 『若者のための政治マニュアル』山口二郎講談社。著者は北海道大学法学部教授で東大法学部卒。テレビのコメントや討論番組でも見かけるし、新聞や雑誌にもよく文章を書いています。

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

 この本は“若者のための”とタイトルにありますが、若者のために書かれたわけではなく、“オジサン、オバサンのための”としても別におかしくない内容の本です。実際、オジサン、オバサンの知識と経験がないと、行間を読んでまんじゅうが膨らむような読後感は若者では得られません。この本は。
 本のタイトル付けは、営業面のことを考え羊頭狗肉をよくやります。中身が大したことがないのに立派なタイトルを付けたり、内容とはあまり関係ないタイトルを付けたりすることです。とにかく読者予備軍に手にとってもらい、財布の開けてもらわなければならないのです。もちろん、本書の場合、学者としての知識を動員しての立派な内容です。
 本のジャンルと特徴にもよりますが、編集の最終工程のタイトル吟味では編集者の頭のモードは、営業に切り替わります。一般的に、です。出版社の編集・営業方針でかなり変わりますから。内容に沿おうと沿うまいと、営業や編集長や社長の意向が加わり、売れるための“化粧”が施されます。タイトル、キャッチコピー、装丁、宣伝……等。
 時々、あります。タイトルに惹かれて買ったら、自分の知りたいことは何も書かれていなかった、ということが。だからネットでの本の購入には失敗もあります。中身の吟味が出来ないわけですから。
 ちょっと話がそれましたが、要するにタイトルとは違いますよ、ということです。この本のタイトルは、『オジサン、オバサンのための政治マニュアル』でもいいし、『キミはドブ板を踏めるか』でもいいということです。どれがいいかは誰にも分かりません。売れて部数が伸びれば勝ち、一般書籍の場合は大体こういうことになります。
 この本の企画・編集担当は、あとがきを読むと、若い女性であることが分かります。山口教授は、タイトル付け等、最後の仕上げを彼女に委ねたのだと思うが、本当は別のタイトルにしたかったのかもしれない。しかし結果オーライ。売れれば著者のメッセージを、新たに開拓した読者に届けたことになります。

 さて傍線の所です。なぜ、“ドブ板”に線を引いたかですが、議員というのは、どういう行動をし、どのように仕事をしたらいいのか、当初、今でもそうなのですが模索していたからです。
 私が傍線を引いた山口教授の文章です。
 「地域を回り、人々の具体的な注文や要求を聞く手法は、どぶ板と呼ばれて、しばしばバカにされてきた。どぶ板ばかりしていると、政治家はものを考える暇はない、政策を勉強する暇はないと思われていたからである。改革に関する高尚な議論が好きな政治家はどぶ板を軽蔑する」(109頁)
 理論家山口教授にしては、「逆張り」の印象を受ける言葉です。この後に、事例が続くのですが、それが「えーっ」と思わず言いたくなるようなこと。また傍線部より以前の内容の論旨展開も「??」という感じです。
 しかしその?を書くとなると、とても1時間では済まない。前日の記事で引用した飯田氏とは違って、理屈を言うな、どぶ板踏むべし、とあの高名な学者が言っているということの指摘だけに今夜はしておきます。


 今日の産経新聞に、国際興業のバス撤退記事が出ていました。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120105/stm12010510590000-n1.htm
 飯能地区の路線に関することのみでしたが、目新しい内容はなかったと思います。バス問題については、今までと今後について大体話の骨格が決まったので、まとめて書いてみようと思っています。