太平洋セメント訪問とごみ有料化


 過日、太平洋セメントを訪問しました。用向きは労働組合にお会いして選挙での推薦のお礼を申し上げるためです。
 太平洋セメント労組は、連合(日本労働組合総連合会)に参加しているJEC連合(正式名称:日本化学エネルギー産業労働組合連合会)のセメント部会のメンバーで、日高市の埼玉工場の労組は埼玉県連合会(連合埼玉)に参加する支部となります。推薦を受けるに当たっては、さいたま市の連合埼玉の事務局長にお会いして面接したり文書提出などを行いました。
 今までゴミ問題の勉強で何度か行く機会はあったのですが果たせず、今回、工場に入ったのは初めてでした。組合の役員の方は業務中とのことでお会い出来なかったのですが、運よく総務課の担当者が応対してくれました。「太平洋セメント埼玉工場」「AKシステム」「21世紀の都市ごみセメント資源化システム」という3冊の立派なカタログもいただきました。
 入ってすぐ目の前に大きな煙突があり、製造工場としての古典的イメージそのものです。昭和29年に建設に着手された工場だから歴史を感じさせます。事務室も古いながら落ち着いた雰囲気で、昭和映画に出てくるような印象でした。 太平洋セメントは、都市ごみをセメント原料にする技術の開発に熱心で、現在、灰水洗システム、AKシステム、エコセメントの三つを実用化しています。このうち、AKシステムが平成14年から日高市のごみを対象に事業開始されました。灰の処理が不要な、他に例のないゴミ処理システムとして、日高市はこの技術の恩恵を受けている世界唯一の都市です。
 AKシステムの特長として必ず挙げられるフレーズが「生分解反応(発酵)による都市ごみのセメント資源化システム」(カタログ見出し)です。今まで何度もこのシステムの解説をごみの勉強で読んできましたが、いまひとつ腑に落ちなかったのが「生分解反応(発酵)」ということでした。――なぜセメントの製造に発酵が必要なのか?
 生分解反応(発酵)という言葉は、実は、自然農業では日常的に使い、また私が実際に行ってきた過程です。自然農業の体系ではまず最初に天恵緑汁を作り、これを水分調節剤も兼ねてぬかに振りかけ混合すると好気発酵が始まります。好気性菌がぬかの窒素を食べ尽くし1週間くらいで熱が下がると「ぼかし肥料」ができあがります。
 「ぼかし(す)」という言葉は、“あいまいにする”とか“形をはっきりさせない”とか言う意味であるように、最初の有機物の形が崩れて別の形態になることを意味します。

 カタログにある図(全体の半分)にそって説明するとこうなります。図の左半分がAKシステム、つまり生ごみの発酵工程の説明になっています。
 1日目:ごみ袋が破れ細片化
 ――これは、ごみ袋の中身の生ごみが出て回転によって混ぜ合わさり、有機物として好気発酵菌のエサになることです。
 2日目:好気発酵が高速に進行
 ――落ち葉や土に好気性菌がいるので発酵します。高速に発酵、とあるから何か強力な菌を加えているのかもしれない。それにしても3日で発酵とは早いです。
 3日目:発酵によりセメント資源(原燃料)化
 ――窓写真にあるように、好気性菌が有機物としての生ごみの窒素を食いつくしてしまうと発酵が終わり、原形をとどめない(ぼかす)さらさらした状態になります。これが「資源化物」です。資源化物というと言葉のイメージがいいから使ったのでしょうが、正確には、「原料化」です。
 簡単な事実でした。窓の写真を見てパッと分かったのですが、セメント原料とするための「前処理工程」だったのです。自然の仕組み・現象を、このような大規模製造のベルトコンベヤーシステムに組み込んだ所が一番の特長だと、私には思えました。
 日高市は平成14年から、ゴミ処理をこのシステムに依拠しています。現在の委託料はトン当たり4万950円。平成21年度の処理量は1万1837トンで金額にして4億9500万円、収集運搬費に7500万円。
 市は処理費の削減とごみ袋の販売による収入増の一挙両得を目論んで、以前から日高市廃棄物減量等推進審議会に「家庭から出る可燃ごみの有料化」を諮問してきました。ところが賛否が分かれて有料化の一本化ができず、諮問で提議された市民集会を開いて決着を図るという。
 これは、いくらでも突っ込み所がある難しい問題です。
 ・生活に一番近い所から税に等しい料金を徴収して、一般会計に入れてしまっていいのかどうか。
 ・統計から見ても、経済活動や高齢化の影響で現状のごみ収集量は低下傾向にある。
 ・分別を要しない特殊な収集環境の中での住民啓発をどれだけ行ってきたか。
 ・事例が示すように有料化は減量効果が持続しない。
 ・有料化に代わるごみの発生抑制が今や先進となってきた。
 等々の課題がある中で、私にとっても今後の大きな勉強テーマです。選挙のお礼の話題がごみの話題になってしましました。