蔦谷氏講演会、充実していた、面白かった

 さて、蔦谷氏の講演会「TPPを考えるシリーズその1――TPPの前提知識 ウルグアイラウンド、WTO、FTA/EPAの実態と影響」。どんなところが面白かったか、満足したかです。
 氏は前日まで外国旅行中で、資料は不完全とのことだったが、3種の資料は全23ページ。議論に必要な最新データが項目と図表で簡潔にまとめられ、一見してこれは役に立つぞ、という印象です。
 講演会は1月と3月の2回に分けて行われます。今回は、標題の通り「前提知識」です。その前提とは? レジュメの大見出しだけを取り出してみるとこうなります。
 TPP問題の構図と本質
1 TPPとWTO
 WTO、FTA、EPA、ASEANN、TPP
2 関係国のスタンス、事情等
 アメリカ、中国、韓国、タイ、インドネシア、日本財界・マスコミ
3 重要な幾つかの指標
 産業全体、農業関連、財政支出
4 TPP問題の構図と本質
 各国がブロック化して自国の利益をぶつけ合い戦争に至ったことを反省し、戦後体制の一環として48年に発足した組織がGATTO。1では、農業の例外化をどのように一括交渉の原則へ進めてきたのか、自由貿易の世界的流れを俯瞰。そして、ガットウルグアイラウンドの合意で、米の輸入自由化が一定の税率で実現した歴史的意義の解説。
 2は、その流れの中で各国はどう動き、最近の動向に日本の財界とマスコミの姿勢はどうか、について。
 3は、TPPの農業への影響をどう数字的に予測できるか、各種の統計と試算を紹介。
 4は、以上の前提を踏まえると、TPP問題の国際的構図がどう捉えられるか、日本のとるべき国の形をどう考えるかの提起。
 これらの内容は、私が新聞を読んでも、関連がなかなか分らないむずかしい分野でした。断片的には知識があっても無理で、総合的な構図を描きながら理解するのが最も難しい分野と言っていいと思います。
 万巻の資料を読んでも正確な理解ができるか覚束無い。この2時間の講演では、戦後自由貿易への見取り図と、TPPに至る流れが、実に簡潔・明瞭、必要・十分な事実をもとに、わかり易く説明されました。聞きたい要求をほぼ完全に満たしてくれる講演会などそうないと思うが、蔦谷氏の話は本当に参考になりました。
 3月の2回目の講演が、以上の理解を前提とした本題の議論となります。私は、質問時間に3点を言いました。数字のみに頼る議論は、ウルグアイラウンドの国内対策の二の舞になるのではないか、また前提となる農水省ほかの数字についてはよくよく考えるべき、そして、国の破産に直面して再生した韓国の事例に注目すべき、と。
 蔦谷氏は、次回の話の骨子を紹介しながら、自分の考え方の一端を述べました。果たして、どういう展開になるか。司会者は、次回までに意見をよく磨いてくるよう参加者に促していました。楽しみです。私自身が意見の転換を修正する必要があるかどうかも含めて。

蔦谷氏の著書。私はこの本を買って読んでいました。