私は考えを変えようと思う――TPPについて

 参加か不参加か揺れていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に対する日本の方針は、参加の方向をにじませたあいまいな色彩になったようです。民主党のどの政策もみな後退や玉主色や曖昧になるなかで、TPPが参加となるのか注目していましたが、やはり明確な意思表示となりませんでした。
 TPPは国会議員の賛否が党派を問わず分かれました。日本の命運に関係するこの大テーマにどう自分の意見を表明し態度を明らかにしたか、全員、はっきりすべきです。民主党議員でも110人が反対したという。賛否を世間に公表することが国会の責務であると思うし、新聞はそれを報道すべきです。
 私自身は最近、参加すべきかなと思うようになりました。今までは私も、「日本の農業を守るべき」「自給率40パーセントを維持」「自由化すれば日本の農業は壊滅」というような、国民の生命線であるが故の外圧防止をよしとしてきましたが、TPPの議論を吟味することでこの考えを転換した方がいいかもしれないと思うようになりました。
 開国すれば日本農業は守れない、壊滅するというような脅威論だけではもう日本の農業の変革はできない、と思ったからです。開国して揺り動かすことが必要ではないか。守れない部分、もしかしたら壊滅する分野も出るかもしれない。しかし、それも新しい生みの苦しみ。投入する資源とエネルギーを進むべき方向に転換し、日本の農業の改革を阻んできた仕組みを根底から変えるてこになると思うのです。
 こう書くことはまだためらいはあるが、開国に進むべきと思う。今までどんなことをしても、どんなに国費を投入しようとも、米あまりは進み、放棄農地は増えるばかり、農業従事者は減るばかり――何ら良くなる燭光すら見えない状況に、もう国内擁護論には説得性は薄いと思います。
 農水省の開国が及ぼす影響の推定に対する専門家の検証を読んでみると、脅威より開国の方が納得いきます。中でも農水出身の民間検証者の考えは、手の内を知った上での批判だから、なるほどそうなのかと思う所が多いと感じます。
 但し、開国するとすれば、国内農業の育成・保護は、今までとは全く違う発想に立たなければならない。直接支払いの仕組みです。国家として未体験の関税ゼロ時代の農業のあり方は、農業界だけにまかせず国民の幅広い意見を聞く必要があります。
 膨大な国費をかけても農業再建に失敗してきた仕組みを壊し、いくつかの大筋を設定した簡素な直接支払い制度を作ることです。もちろん、直接支払いと言っても、民主党が行おうとした既存のシステムを前提とする“ばらまき”ではなく、日本の農業を根底から変えるものでなければなりません。
 では、直接、支払う先はどこなのか。開国とセットで進める日本の農業の将来ビジョンが示されなければ、目前の対応による継ぎはぎあるいはパッチワーク農業になってしまいます。。