イノシシと知恵比べ

 夜10時過ぎに軽トラを畑の入口に置いて帰る途中のことだった。すぐ近くに幼稚園の畑があります。先日、イノシシにサツマイモを全部喰われてしまって、園児たちは残ったチョボチョボの芋ほりをしました。
 暗闇の中で突然「ブホッ」という声がしました。そして目の前を大きな一頭のイノシシが跳梁し反対側にあっという間に走り去って行きました。びっくりしました。こちらも、とっさに威嚇のつもりでブホッ、ブホッと叫び、足をドタドタとさせました。街灯の光に浮かび上がったイノシシの姿が目に焼きついています。
 昨年も、幼稚園のイモはやられました。イノシシは覚えているのです。うまいものがあるところは。しかし、山からの通り道は塞いだはずなのだが、こんなところに出るとは、ヤツは新しい通り道を開拓したのだろうか。
塞いだというのは、こんな具合です。


 これは、水田の耕運やしろかきに使うかご車輪と、鉄筋入りの床コンクリ工事に使うメッシュを組み合わせたバリアです。メッシュは、品質劣化ものが安く売り出された時に30枚ほど仕入れてあったものです。このメッシュを使ってバリアを作ろうとしたのですが、支える杭を自前で揃えようとしたため、何時までも完成せずにいました。
 イノシシは山の下の沢から上がってきてこちらにきます。夏前から彼らは出没し、カボチャ、トウモロコシ、ウリ、スイカを食いつくし、畑を掘り返し、好き放題暴れまくっていました。やられっぱなしで、もう仕方ないかと厭戦気分だったのですが、メッシュを買ったのを機に、簡易でもいいからバリアを作ろうとしました。
 以前、2000円出して農文協のイノシシ対策本を買って読んでみたが、結論はメッシュを使って堅固なバリアを作ること、草刈りをして、人間様の領地だから入って来るなというサインを送る事、この二つでした。200ページ満たない本の、この結論で2000円かよ、と思いました。
 版を重ねて売れているのを見ると、皆、万事窮して、この本に頼ってくるのではないか。農文協も商売がうまい、わらをも掴む気持ちをなんとやら……だろうな。それにどこかで書いた気がするが、カリスマ野菜栽培農家の売れに売れている本、とっくの昔に亡くなっているのに相変わらず奥付は生きている。
 メッシュをとりあえず立てておこうとして思いついたのが、2セット持っているカゴ車輪を使うことでした。これが具合いい。重いので動かない。それに、やはり、しろかきに使う耕運機の後部に付けるレーキをツッカイにすれば微動だにしない。さらに、材木をカゴ車輪に渡せば強度は飛躍的に上がります。
 さて、バリアを作ったとしても、イノシシは、当然、それを避けた侵入を仕掛けてくる。どうも、今回の遭遇はそれが成功した結果かもしれません。