介護保険申請でわかったこと

 母が8月に要介護を認定されて2カ月が過ぎました。その間、ケアマネージャーと相談しながら何種類もの書類を書き、サービスを受ける手続きを経験してみて、介護保険の仕組みがようやくわかってきました。
 福祉の制度や実態についてよく知らなかったので、3年前に始まった日高市の地域福祉計画策定市民会議の委員に応募して、2年間、議論し勉強してきました。また、それに続く地域福祉計画推進委員会にも所属して計画の具体的な実行案作りにも参加してきました。こういう立場になれば、制度や仕組みについても嫌でも勉強するだろうと考えたわけです。
 福祉に詳しい委員の話や役所の説明を聞きながら非常にたくさんのことが勉強できました。しかし介護の現場にも多くの問題があることは分かりましたが、それが制度の仕組みとどう関わっているのかなどについては、理解する所まではなかなかいかなかったというのが実情です。
 周囲の詳しい人も、やはり家族が当事者となって経験したからだと言う。この2カ月の経験で、やはり、介護の渦中に入ってみないと制度の課題なども見えてこないものだと思いました。介護制度は、個人個人の機能と実態に即した仕組みになっているので、特にそう感じます。

 平成12(2000)年実施から10年が経過した介護保険は、制度的にもいろいろな改良が加えられてきましたが、高齢化の進展で制度の課題は、ますます浮き彫りになってきています。この2カ月にわたる、申請からサービスを受ける過程を経験しただけでそれを実感しました。
 市の介護福祉課が発行する介護保険についての利用ガイドブック「みんな笑顔で介護保険」は、発行:日高市となっていますが、これは厚労省が作成した全国共通のガイドブックです。だから、ここに書かれていることが国民共通の標準知識といえます。複雑な保険の仕組みや使い方が分かりやすく説明されていて初期知識としては十分です。実際は、ほとんどケアマネジャーの助言に頼ることになりますが。
 当然のことなのですが、一人の要介護者に関わる関係者が非常に多い、ということ。
 リハビリ診療と介護の認定に応じて受けるサービスの設計を行う介護支援専門員(ケアマネージャー)とその周辺のサービスの実施に関わる人等々。実に多くの人々が一人の要介護者に、決められた役割分担にしたがって関わります。
これは機能を失っていく人間の動きを日常生活レベルで補うわけですから関わる人とサービスが増えるのは当然のことです。また、一人の要介護者の認定度が進めばさらに多くなっていきます。
 認定の申請からいろいろなサービスを受ける過程で、この単純な事実を改めて認識しました。減ることはない、増えるばかりの老人と、個々の人間が人の手を借りなければ生きていけなくなる現実。生物として老い衰退していき誰でも弱者となったとき、それを平等に支えていくためのお金。これも減ることはない、際限のない増加です。
 2000年の制度開始時に比べ要介護者の数は2倍、介護保険にかかる総費用も2倍になりました。私が75歳ころには高齢者は約3500万人。現状でも足らなくて、介護に関わる人たちの待遇が十分でないのに今後必要なお金をどこから持ってくるのか。避けては通れない問題です。
 足らないお金をどこかから持ってくるのか。これは単純な明快な問いです。各人が負担する保険料を増額するのか。あるいは、お金の調達が困難で負担の増額も嫌だ、ということになれば現状のサービスの水準を下げるという選択も考えられます。
 折りしも国の次期介護保険計画の検討が始まりました。それに併せて、地方自治体の介護保険計画の見直しも始まります。それにしても、人間の機能の衰えを一つ一つの現象に応じて補うわけですから、いくらでも手が欲しいことになります。それをまず身内がどう対処するか、制度がどう対処するか。家族としても国や自治体の制度としても線引きのむずかしい問題です。