しろかき

 ようやく、しろかきを終えました。
 疲れたー……。以前は、こんなに疲れることはなかったような気がするが。
 年かなぁ、とも思います。タテ・ヨコそれぞれ3〜4回耕運機をかけていきます。それだけでも大変な物理的運動量で、まず普通の人ではこなすのは無理でしょう。広さは違いますが、全部で5枚に分かれているので、それぞれに繰り返していきます。
 最初はしろかきレーキを下に強く押し付けて、移動させる土の量を出来るだけ多くします。回数が進むにつれ、水と土が混和してくる塩梅に応じて耕運機を持つ手に加減を加えて水平を調節します。
 泥の下の固い耕盤はつるつるとすべるし、耕運機は高速で移動させなければならない。泥水化してくると、鉄車輪がはねあげるしぶきが容赦なく全身に降りかかります。
 1年に1回の耕運だから、おこした土塊はなかなか崩れず水になじむのに時間がかかります。収穫の後の秋に耕運するのは、土の塊りが霜と氷で細かく粉砕され、しろかきが容易になるという効果があります。とにかく、しろかきは年寄りには負担の大きい作業で、湿田が放棄されていく理由の一つと思います。
 大変とはいっても、米作りの楽しさ・面白さを思えば、どうってことありません。

 しろかきで仕上がった鏡のような水面。真ん中の、あと一枚を残すところまできました。耕運機でならした後、最後に全面に重い平たいものを引きまわして、平滑にしていきます。水と泥がなじんで自然に表面が平滑になっていきますが、しかし、耕運機の轍(わだち)の後はどうしても残ってしまうので、それを消すための作業です。
 普通は、木製のはしごを引きまわすのですが、木に水が浸みこんで非常に重くなります。私は、機械を軽トラに積み込むときに使うアルミ製の道板を使います。これは非常に具合がよく、この作業にためにあるのではないかと思うほどの、工夫の成果でした。
 水と土を相手にする作業で、いわば大地の凹凸と地球の引力と格闘することです。それだけの大きな視野で考えれば、作業の大変さも何のその、段取り・工程の意味も面白く感じられます。
 重いはしごや道板を引きます作業も力作業です。水がたっぷり入る田んぼではここまで丁寧にやる必要がないのかもしれませんが、水が入らない田んぼでは、平滑・均平にすることは必須です。なぜか。凹凸があると、凸の所から雑草、特にヒエが生えてくるからです。
 先日、近くの田んぼで、トラクターでしろかきをやっているのを見ました。車を止めて見学したのですが、すごいスピードで円を描くように走り回っていました。正に走り回る感じです。これだけ粗っぽいしろかきでも、用水の水がたっぷり入って深水管理が可能で、さらに除草剤を撒けば雑草対策は大丈夫でしょう。
 広い面積を耕作していれば、どこでどう省力化していくかは、経営的面と品質の兼ね合いで重要です。昔は、牛や馬でこの作業をやっていたわけです。しろかきをやっていると、稲作民族の根源に思いを馳せることになります。
 

 泥水の浴びた耕運機。鉄車輪のはねあげるしぶきで、私自身もこれ以上の“雄姿”です。作業を始めた時、この耕運機を見た近くの知り合いが、「あれっ、新しくしたの?」と言いました。
 よく、わかりましたね、と返すと、バイクや機械の修理が好きで関心があるからとのこと。そうです、これは二代目のマメトラ。昨年のしろかきでエンジン焼き付けを起こして鉄クズ化させてしまったものと同型機です。
 近くの嵐山町の元農家からネットオークションで出たものを数千円で買ってきて、2台を分解し部品を入れ替えて完全再生しました。