雑兵はなかったが漫画は面白かった

 雑兵(ぞうひょう)のことを、家にある本で調べてみました。この本です。『少年少女日本の歴史』です。「小学館版・学習漫画」のシリーズとして、全20巻、昭和50年台後半に順次出版されました。『人物 日本の歴史』というシリーズもあります。

 我が家では、3人の子どもが順にこれらを読んでいきました。熱心に読んでいたのを覚えています。全巻そろえて本棚にしまってあったのを取り出したものです。3人が読んだのでさすがによごれていますが、固い上製の造本はしっかりしていて、開き具合は手に馴染んで非常にいい。妻の意向で、この本だけでなく読み聞かせた童話などみな保存してあります。片付かなくて始末にわるいのですが孫にくれるらしい。読んでくれるのかな。
 さて雑兵(ぞうひょう)です。結論として一字もなく、やはり大名と武将とその周辺の人物の物語になっています。室町時代の後期の出来事として、『立ち上がる民衆』の巻の中に「野武士たち」という、集団としての登場人物の紹介があります。雑兵に近いのはこれでしょうか。
 傭兵として各地を転戦していくのが雑兵なので、記録が残らないのかもしれません。戦の場で手柄をたて、運良くその地の武将に召し抱えられればよし、そういうチャンスがなければ、また戦という“職場”を求めて流浪の身となります。このイメージは、なにやら現代の「非正規雇用」の姿とダブってきます。
 展示やテレビのテーマになってきたのは、調査や研究の成果が出てきたのだと思います。
 ところで、この『日本の歴史』シリーズ、本当におもしろい。ぱらぱらめくっているうちに面白くなり、時間はかからなかったけれども、2巻を読んでしまいました。
 考証は学者が行ってしっかりしているし、発掘や研究のその時点での最新の成果なども分かりやすく解説されています。シリーズを読めば、義務教育課程の基礎知識は頭に入りそうです。
 とにかく漫画がおもしろい。改めて漫画のすばらしさを認識しました。全巻を読んでみようと思っています。
 読んでいて気が付きました。ん?と、頭の中の蛍光灯が付きました。『日本の歴史』では各章はじめに、2人の子どもとおじいさんが登場します。各地に残されている遺跡などについて、現地探訪の形で3人が語っています。そしてページの途中でも、必要に応じて、ちょこっと欄外の隅っこに出て、読者に教えてくれます。
 蛍光灯が完全に付きました。これは手法として、NHKスクープハンターのゴーグル男と同じだ、と。なにやら大層な仕掛けでタイムスリップしているが、漫画ではページの欄外に顔を出すだけで用がたります。テレビは同時進行の動画としての臨場感と面白さはあります。
 そういえばNHK大河ドラマの最後のゆかりの地の探訪は、『日本の歴史』のアイディアそのものです。歴史の面白さがつまった漫画『日本の歴史』を読んでみよう。