昨年の田んぼ、ヒエについての総括

 昨年の田んぼでヒエの発生が少なかったことについては、一応、総括したつもりでした。しかし、その後も気になって関連のことについては注意を払ってきました。ここで、最後のまとめをして、この問題についての区切りをつけようと思います。
 結論は、今まで考えてきたものとは、ちょっと違ったものになりそうです。
 その前に、昨年の実りと一昨年のヒエ田の様子を比較できるように写真を並べてみます。最初が昨年の田、次が一昨年の田です。一目瞭然、昨年は一面にそろった実りを見せていますが、一昨年はヒエのボーボーたる状況で、田んぼのふちでは稲があることが分かりますが、真ん中に行くにつれ、ヒエに隠れてあるかどうかも定かではありません。
 こう較べてみると良く分かります。一昨年まで6年間、写真以上のボーボー状況もありました。収穫もゼロから2、3俵。こんな状況で、よく飽きもせず、嫌にならずに続けてきたものです。最初からこうだったから良かったのかもしれません。そして、除草剤を使わない田の生物環境が素晴らしいこと、そのことのを楽しみながら感じ体験してきたことが続けてこられた最大の理由かな、とも思います。
 収入に即結びつく本業の農家ではこうはいかないと思います。そんなバカなことは第一できない。非生産的どころか採れないことに労働と資本を注ぎ込むことなど、そもそもあり得ません。
 ちなみに、有名なプロフェッショナル有機農業の米作りサイト「除草剤を使わない稲作り」(http://www2.ocn.ne.jp/~josonet/index.html)では、苗作りから除草まで実に細かい施肥設計や除草方法の話がされています。このサイトは個人から始まって今では、全国の有機米農家の心と技術の拠り所になっているところです。
 しかし無農薬米作りと言っても、その中に無肥料でやっている人はほとんでいません。収量が落ちることは経営に影響することですから冒険はできないのは当然です。完全無農薬無肥料を5年以上続けた人がいないのは当然です。だからこそ、木村秋則さんの経験が貴重な訳です。木村さんが唱える方法がいいかどうかは、木村さん以外にやったことがないので、いいと言われても否定気味の半信半疑が大体のところです。7、8年続けてみろ、と言われてもにわかに出来るものではありません。
 私のような素人だからこそできる実験であり、無農薬・無肥料農業の可能性に貢献することになるかな、とささやかな規模の試みです。しかし夢は大きいのです。木村さんほどではないけれど、不肖、私も意識だけは、その流れの端っこにいるんだという思いです。

◆昨年の田んぼ。見事にそろった稲穂です。ヒエはほとんど見えません。

◆ほぼ同じ地点から角度が少し違う一昨年の田んぼ。ヒエが高く成長し稲はその下に隠れてしまっている。


 さて、再総括の結論から先に言います。何が決定的な理由かは分からないが、いろいろな要素がいい方向に偶然重なったことである――これが結論です。何も面白くない総括ですが、自然相手では、このくらいの謙虚な言い方がいいのかもしれません。
 こう思うまでにいくつか考えたり調べたりしたことがありました。ある時テレビを見ていたら気象予報士の森田さんが出ていました。森田さんは予報の余興として、子どもたちに天候に関する質問をしていました。
 「今年の花粉発生は昨年より少ないがそれはなぜか」という質問だったと思います。答えは3つの選択肢から選びます。「1.日照時間が少なかったから。2.雪が降るのが少なかったから。3.……(忘れました)」
 正解は1なのですが、私も1を予想しました。解説によると、昨年の春から夏にかけての日照時間は、例年の81パーセントとのこと。やはり日が照らない異常気象だったわけです。その影響で杉の開花も例年に比べ少なかったのです。
 私は田んぼのヒエが出なかったのは、やはり自然現象であったのか、とその時は思いました。
 もう一つのことは、専門機関に聞いてみたことです。いずれは確認しようと思っていました。聞いた先は、埼玉県農林部の関係組織である「水田農業研究所」です。担当者の見解はこうでした。
・ヒエの発芽が悪いとか、何か地域的な特徴があった、などという報告は来ていないが、ありうる原因の一つとして考えられる。
・ヒエのタネが深くもぐったせいではないか。
・水持ちがよく水深が保てたことがいい結果になった。
・しろかきの結果がよく、減水防止になったのではないか。
 こういうことについては知識としては全部知っていたし理解しているつもりだったので、特に目新しいことは何もありません。やはり、何と言っても水がきれなかったこと――これが他のいい条件を引きだしたということが一番納得のいくところです。
 研究所の担当者も、気象の影響を完全に否定はしていません。複合原因の一つとしています。あれほどの劇的な変化に、私は自然の摂理、仕組みの作用を信じますが、誰も実証はできません。それは専門家であろうと同じです。彼らは条件の整った試験田で研究しているわけですから、自然の仕組みとは異なるところでおこなっていることになります。
 いずれにしろ、異常気象の故のヒエ発芽不良が豊作の理由としましたが、こんな経緯を経ての結論でした。