国立女性会館で思ったこと

 荒川流域ネットワークのシンポジウムの案内を書いたら、森生さん(URL:http://blog.goo.ne.jp/rinjuki/)から次のコメントをいただきました。
 ――雑木林を揺さぶる北風は苦手ですが 野良の風街のかぜなら 毎日待っております更新をあまりなさらないので油断していたら突然のシンポジウム、お昼近いこんな時間ではもう参加できません。次回は、も少しお早めにお知らせ下さいね――
 はい、全くその通りです。私も書きながら「いくら何でも前日ではねー」と内心思っていました。ごめんなさい! でも気にして下さっていて嬉しいです。

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 民主党事業仕分けの対象になって、「私にも発言させて!」と叫んだ館長(神田道子氏)がトップの国立女性会館。すっかり有名になったが、あの時以来、初めての宿泊訪問です。通算で10回くらいの宿泊になるだろうか。
ネットでは、理事長の高額報酬(年収約1500万)や理念・使命論議しかない対応に対するジェンダー批判者の発言が盛んですが、当然ながら、意義と役割を重視する擁護の声も沢山あります。
 こんな世間の状況を反映して何か変わった所があるかな、と思って目を凝らしましたが、以前にも増して全体的に小ぎれいになった感じです。

パンフレットの一部。広い! 本当に広い。後楽園球場3つとか?。大規模な散在型複合施設です。今の時代だったらこういうタイプの施設は不可能でしょう。機能を集中させたコンパクト施設になるはず。昭和52年(1977年)開館と言う時代がこういう施設建築を可能にさせたと言えます。



広いだけに気持ちがいい。宿泊棟と研修施設を離した配置。雨の時歩いて行くのは大変だが、頭の切換えにはいいかも。



宿泊棟からの眺め。純然たる「国立」の時は手入れの行き届いていない荒れた感じでしたが、平成13年に「独立行政法人」になって以降、毎年少しずつきれいになっていった感じがします。これは、私の全くの主観、それも数少ない機会での感じだから違っているかもしれません。


 ロビーを一回りしました。神田理事長が埼玉新聞に書いた、会館の意義と役割を強調する記事5、6面が拡大されパネルにして掲示されていました。
 正面の展示物も行き届いていて、この会館の理念と理想にふさわしい広報が行われていると感じられます。レストラン前の掲示板に各地の催物のポスターが貼られているのは以前から同じです。「女性教育の振興を図り、男女共同参画社会の形成に資する」ためのイベントや研究調査報告、出版物などを中心に幅広い展示がされています。目的に沿ったアーカイブ(資料や情報が集積され閲覧できる場所)もロビーに併設され、自由に入室できます。
 景観の美しさと施設内外の瀟洒で清潔な印象は好感が持てます。理念と役割および意義を強調する広報は、展示もHPも行き届いていて、さすがアーカイブを標榜する国立機関であることを感じさせます。
 利用料金も安く面積も空間も広くて頭と身体の開放感も感じられ、日高からの適度なドライブ距離でもあります。私はそんな個人的感覚からも事業仕分けで縮小されてしまうことに、テレビを見ながら危惧を感じました。「なくなってほしくないな」と。
 攻める側と守る側の二人のアプローチの違いは明白。守る側は、理念と理想と意義・役割の強調です。先ほど書いた会館の内外に発する広報そのもので、それはそれで見事に一貫しています。攻める側は、会館から見れば、参画度が最も高い「国の政策形成に関与している」女性で、目的は一つ「お金」です。
 置かれた立場の違いもあって悩ましい問題がそこにあります。
 今回行って、ある質問をロビーの受付で発してみました。
 「事業仕分けので話題になった以降のメディアの報道が一括して参照できるものがありますか」
 受付の女性は、分からないとのこと。小耳にはさんだ奥にいた年配の男性が出てきて、情報関係は別の部署で行っているという。
 翌日、情報センターに電話で聞きました。その関係の記事は適宜、切り抜き、クリッピングしているが、一括した整理とまとめは行っていないという。うーん、民間企業ではありえないことかな。時の政権の政策と社会反響を睨んだ動向とリスクの分析は行っているのだろうか。この括りでの組織的情報の共有は? アーカイブの専門機関ながら余計な心配をしてしまいました。
 客商売だから予約専用の番号は、HPに当然出ています。情報センターも開館予定に合わせていますから連絡の電話が出ていました。しかし、その他のいくつかある部署は、どこにあるんだろうと探したら、会館の公式案内である「概要」の末尾25ページにようやく総務部の番号を発見。いわば代表番号はHPの深い森の中の底に一カ所あるのみでした。そこにも他の部署の電話はなくFAXのみでした。少し違和感が感じられたことです。
 会館周辺の国道254沿線は変わりつつあります。一山超えたところにホンダの基幹工場が建設されエンジン工場は稼働しています。これから、ますます経済が活況を呈するでしょう。会館は一般客も対象としています。不便なことが最大の欠点、とよく言われます。これも考えよう、この素晴らしい景観と環境は売りです。
 ジェンダーの旗印を一本高く掲げて、今後も進むのかどうか、別の旗印も掲げるのかどうか。会館がもっと栄えて発展することを願う者からすると、外野からの眺めながら気になります。
 地方分権(地方主権)が進みつつある現在、議会改革と行政改革が叫ばれ、公費を投入しての議員と行政の意識改革と様々な組織・手法改革が進められつつあります。国全体で大変な予算となります。
 一方の担い手である市民はどうか。税制の恩典もなく協働だNPOだとおだてられるだけで、個人の努力と小さな集団としての才覚だけが頼りです。今度の仕分けで福祉NPOへの補助金も大幅にカットされました。気が付いたら地方政府(自治体)に金も権限も牛耳られてしまい、言いなりになることになるかもしれない。市民も理論と行動から備えなければならないと思います。
 「国立女性会館」にそんな役割を期待できないだろうか。議会と行政は、膨大な公金をかけての再教育が始まろうとしています。具体的にはいろいろありますが、仕分け後に出かけた会館での夢想でした。
 シンポの報告はまたの機会です。