立教大学での木村秋則氏の講演に新たな感動

 10日は楽しみにしていた木村秋則氏の講演会がありました。立教大学で開催されるこの講演会について教えてくれたのは、立教大学大学院セカンドステージに学ぶSさんでした。Sさんは大学のイベントや学んだことを,私が持っている関心に応じていろいろメールで教えてくれます。
 講演会の情報は昨年秋だったと思います。私は、木村氏本人から「奇跡のりんご」について直接聞けるまたとない機会だと思いました。また折角の機会であるし、私一人で聞きに行くのはもったいないと思い、Sさんも私も所属するボランティア団体の会合でいっしょに行く人を募りました。
 呼びかけに応じて行くことになったのは、私を含めて9人ですが、当日の突発事情で2人が不参加となり7人でした、その他5人から行きたかったが予定が重なったという連絡をいただきました。
 この講演は、立教大学の連続シンポジウム【未来の声を聴こう】シリーズの一つとして行われ、木村氏の講演がシリーズの最後です。
 演題:奇跡のりんご――自然の摂理から学ぶ農と教育
 主催:立教大学コミュニティ福祉学部
 場所:立教大学8号館8101教室
 演者:木村秋則 木村興農社代表
 受講料無料 申込み不要
 昨年、所属のボランティア団体の研修勉強会で、私は木村氏の著書に触れ、読んだ時の感動を語り、自分の目指すものであることを強調しました。そしてTV放映等もあり、「奇跡のりんご」について、理解の程度はともかく何らかのことを知っている人が、私の周囲にも増えてきていることを感じていました。

会場まで3カ所に案内の看板

私が読んだ2冊
 木村氏の著書は4冊出ていますが、うち『奇跡のりんご』と『リンゴが教えてくれたこと』の2冊は読み、考え方については大体理解しているつもりです。参加者の中には3冊も読んでいる人もいましたし、TVで見たりして皆、おおよそのことは知っていました。しかし、今や日本中に知れ渡ったりんごの無農薬・無肥料栽培の木村秋則氏の話が聞ける2時間です。それぞれの思いと期待を込めての講演です。
 年末に連れだって行くプランを知らせてありました。会場での席の確保を考えて、私としては早めの電車を提案しましたが、それでも遅いという声もあり、会場に1時間前に着く予定にしました。
 正に予想的中!
 ネットによる講演会の告知と無料であること。いま日本で最も注目を浴び話題になっている人の講演です。大勢押しかけるであろうことを想像していましたが、これ程とは……。
 1時間前に到着と言うのに、500人収容の大教室はほぼ満杯でした。急いでバラバラに席を確保、何とか当初・所期の目的は実現しました。
 席を確保し昼食を取りに校外に出ましたが、駅に通じる歩道には、会場を目指して人の流れが続いています。戻ったら会場の外にまで人が溢れていました。開会時、主催者の発表によると、急きょ500人教室ともう1部屋確保したが、1000人以上の来場があったようです。
 主催者による紹介が済んで木村秋則氏の登場です。黒いとっくりのセーターに黒っぽい上着の木村氏。簡単な挨拶が済んで照明が落とされ、パワーポイントによる講演が始まりました。最初の挨拶の中でもあったと記憶しているのですが、2回ほど出た言葉が印象的でした。“売名でないこと、使命感があること”。
 この言葉には、私の解釈によると、木村氏が誰にもしゃべらない本当の意味、秘密の意味があると思います。それを私は、講演の帰途一人で入った喫茶店で読んだ別の著書を読んでいて発見しました。それを書くと長くなるので、また別途書きます。
 講演の内容は、2冊読んでいるのでどの話も覚えがありますが、講演を重ねているせいか、具体的な事例が実に分かり易くつながっていきます。時々、歯無しの話しなどユーモアが交じり会場が湧きます。
・一番先に腐るのは有機ニンジン(野菜が腐る比較実験)
・世界の炭酸ガスの排出は、農薬、肥料、除草剤が工場の○倍(3倍だったか30倍だったか?)
・オゾン破壊が進み地球が通り抜けられる程の穴が空いてしまっている
・昨年は異常気象で、東北は梅雨が明けないまま、夏になった
・今年は異常に雪が多い
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「肥料の大部分は大気中に消える」
 これらのエピソードを紹介したのち、無農薬・無肥料を目指したことに対する偏見の中で、「答えは必ずある」と信じてきたことを話し始めました。その内容についてはまた詳しく報告します。
 実に分かりやすく、諭すように話した2時間、感動を新たにしました。本を初めて読んだ時のような衝撃ではなく、自然栽培の偉大さと木村さんの偉業が深く心に刻まれました。
 講演の後の主催者の代表質問を経て、木村さんは万雷の拍手に送られて会場を後にしました。講演終了後、取材を試み、あわよくば記念写真をと目論んでいました。しかし、主催者の配慮による時間差閉会で木村さんは先に退出したため実現しませんでした。
 説明によると、どこの講演会場でも、聴衆に取り囲まれて身動きできなくなってしまうとのこと。私と同じことを考えている人は多いようです。帰途についた道すがら、「いい話だった」という声があちこちから聞こえてきました。

校門前で
 この余韻をと私たちもコーヒー店を目指しましたが、会場から流れた人たちでどこも満席。池袋駅前ビルの地下2階にあるゆったりした喫茶店にようやく入れました。そして楽しく大いに語り、駅頭で散会となりました。楽しくも有意義な一日でした。
 私はこの後、一人でジュンク堂書店に向かい、棚から棚へと久しぶりに本探しを楽しみました。目的の本は、木村さんの『自然栽培ひとすじに』ですが、他に『自家採取入門』『農へのまなざし・ただの風景の発見』『生き物のポスターは語りかける』など、久しぶりの新刊本の購入となりました。
 この後、駅前のロッテリアに入り、買った本の品定めをしてから、今日の参加者のNさんから借りた木村氏の『すべては宇宙の采配』を読み始めました。読み終えた時が閉店の時間。面白かった。
 この本が出たのは知っていました。出版社の思惑で出た本という感じがし、タイトルからし羊頭狗肉かもしれないという感じもあったので、後でもいいや、と読んでいませんでした。
 読んでみて発見しました。木村さんの“みえないものを見る目”とは何かということ。そして、何よりも、木村さんが、今日の講演で話した“使命感”ということ。読み終えて、バシバシっとその連関が見えました。木村さんが奥さんにも言わない、誰にも言わない秘密とは何なのか?
 私の直感と解釈に間違いはないと思う。