稲刈り機の技術

 稲刈りは5枚目の「農林48号」と4枚目のもち米「喜寿」を終了。稲刈り機で稲を快調に刈り進む気持ちよさ、これは初めての感覚です。もちろん、毎年、稲刈り機は使用し、一部は稲を刈りますが、ほとんどはヒエを刈っている状況でした。それは確かに刈っているのですが、稲だけを刈るのは、当然のことながら気分がいいです。
 昨年秋に散々、雑草刈りに稲刈り機を酷使したためか、機械の調子が悪く、さて今年はどうしようかとずっと思案していました。クラッチが切れず、方向転換ができません。この機械は相当古いもので、やはりオークションで買ったものです。

 目に見える可動部はすべて注油していて問題ないはず。それにエンジンは非常に調子がいい。クラッチが切れないのは初体験です。タイヤを外すと、内側にろくろで作ったような大きな円錐状の土の塊が車軸こびりついていました。これがワイヤの動きを邪魔していたようです。
 このコンクリートのような固い土を削ぎ落しました。多少、反応するようになりましたが、目立った変化はありません。こうなったら師匠に聞くのが手っ取り早い。軽トラに乗せて行きました。
 師匠はクラッチのワイヤを掴んで無造作にぐっと2、3回引っ張り、引っ掛かっていたようだと一言。エンジンをかけて移動させながら方向転換をさせてみると、直角に方向転換、問題なしです。いつものことながら、師匠の経験の深さに脱帽です。
 この稲刈り機は機能としては完成された農機具です。その機能には本当に感心してしまいます。ジョキジョキジョキ、バチーン、ポン。移動しながら稲を刈っていき、所定の量を刈ったら束ね、ひもで括ってバチンと切り、そしてポーンと外に放り出す。この作業を自動的にやってくれるわけです。
 鎌で刈って、束ねて稲わらで結束していく人手の作業と較べると、何という省力化だろうか。コンバインはさらに脱穀から稲わらを切り刻んでその場で田んぼにばらまいていく。今や機械による省力化と合理化は進む所まで行って、大規模水田稲作では、一度も田んぼに入らないで米作りが可能だと言われます。
 こんな機械が、人手頼りの米作り現場に出現した時、どんな驚きをもって迎えられたのだろうか、稲刈り機を操作しながらこんなことを考えます。そこで、師匠に聞いてみました。以前にも聞いたことがありますが、どうも捗捗しい返事が返ってきませんでした。2度目の質問です。
 「これを初めて使った時は驚きだったでしょう?」
 「最初っからこんなじゃなかったからな。初期のものは、どうして、どうして、今の機械のように思い通りに動くものじゃなかった。どこかの鉄工所が作ったようなものからいろいろあった。使って苦労した思いの方が強い」
 なるほど。機械は初期の揺籃期には、一攫千金をねらっての戦国時代。大小メーカーがしのぎを削る。そこから優れた製品を作り出したところが生き残る。現代は、電気自動車や環境機器がその段階のようです。
 一年に一度使う機械のせいか、田植え機と稲刈り機の省力機能は新鮮で、面白く感じます。無農薬稲作が広まるにつれ、田植え機は現在でも進化の過程にあり、日本の稲作の一つの方向性を左右する可能性があります。