種もみをいただきに再び小川町へ

 先日、有機稲作の講習会で小川町に行きましたが、また行くことになりました。今度は、有機農業の先輩であるYさんのお宅です。妻がいっしょに行くというので軽トラで出掛けました。Yさんは栽培する作物全てを無農薬・有機でつくっていて、小川町の有機農業農家集団の一員として活躍しています。
 実は、昨年の稲作の失敗でタネモミの保存がありませんでした。Yさんに相談した所、タネモミを譲っていただけることになりました。古いモミはいくらでもあるのですが、発芽しません。一昨年やってみて実証済みです。

【貴重な宝物です。大事に増やしていきます】
 Yさんの栽培しているのは、「農林45号」という一般の農家ではほとんど作られていない品種で、しかも、自然農に向いている特徴があるという。私が今まで作っていた、さっぱりとした食感のイセヒカリとは違って“もっちり”としているという。自然農に向いているとは素晴らしい。これを、毎年大事に作っていこうと思いました。
 稲葉光圀さんの講習会の話になって、Yさんも前日の講習を受けたとのこと。その時話に出たコシヒカリのことが話題になりました。
 コシヒカリは戦時中に作られた品種で、物資不足の中でいかに肥料を食わないで育つかを目的に開発されました。つまり放っておいても茎は固く太くなり、倒伏にはもともと強いのです。それが農協推奨品種となるにつれ、肥料を多投し農薬で防除することが必要であるとなってしまいました。いつのまにか誤った情報がインプットされ先入観がつくられ、一度それが刷り込まれたらなかなか抜け出せない。――稲葉さんの説明を思い出しながら、こんな話をYさんとしました。
 コシヒカリだけではありません。周囲を見渡せば、日常の中に同じようなことが多いことを感じます。最近、自治会の活動に関することや三団地の住環境を良くする会に関することで、特にそれを思うことがあります。知識を経験もある団塊の世代でも容易に先入観が形成され、自分で修正・制御する思考や行動をなかなか取らないのではないかと。
 Yさんにあった時、必ず聞こうと思っていたことがあります。麦の収穫のことです。知り合いの農家の人に聞くのですが、まちまちな話でどうもはっきりしない。具体的には、刈入れと脱穀の段取りです。いつ刈り入れていつ脱穀するのか、こんな基本のことが頭の中でイメージできませんでした。それがはっきりしました。
 刈取りは、麦が頭をこくりと垂れ、その首のところが青くなくなった時。それより前だと味がのらないし、それより後だと、実が落ちてしまう。小川は昔から麦の産地で、これが判断の基準として行き渡っている。――なるほど、“こくりと頭を垂れる”とはよく言ったものです。この表現に出くわしたのは初めてですが、実にリアルで分かりやすい表現です。
 脱穀は刈取りをして即やってしまう。日高では畑にしばらく置いて乾燥させるというのが多かったのですが、乾燥は脱稿をした後の粒の状態でとのこと。
 明快な話に納得。作業の機微は聞いてみないと、知識と経験の継承がない素人百姓にはなかなかわかりません。収穫の多かったYさんとの会話でした。いただいたモミからの収穫も楽しみです。