第二次巾着田整備事業?

 巾着田田はいま冬枯れの景色の中で静まり返っています。その中で新年からにわかに内外が騒がしくなったところがあります。天神橋たもと、白壁土塀の新井家住宅です。昨年秋に成立した補正予算約1憶6000万円で取得されました。最近門にところに車が停車し、建物の戸がが開け放たれ、裏山から人の声が聞こえたりします。改修や保存調査のために人が入っているようです。



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昨年の有料の観光マンジュシャゲは9月15日〜30日まで行われました。16日間の有料入場者数は14万1442人、収入は2715万400円で、昨年に比べ入場者数は1万7197人、収入は約365万円の減収となりました。これは前年より期間が4日短い数字です(文化新聞)。期間に増減があるのは年によって開花時期に変動があるからです。
 以前はあれほど激しかった渋滞は目立ってはなく、シーズン時には車が動かなくなることを想定して移動を考えていたのが嘘のようです。シャトルバスの利用者数も電車の利用者数も目立った増加はないようですから、この減少は自然減とみてよさそうです。
 期間中の天気、それまでの温度や日照時間によるつぼみの生長具合、早咲きと遅咲きのバランス、それらとお彼岸の休日との塩梅、等々の条件がうまく一致すれば前年比アップの入場者数が期待できるのでしょうが、固定されている条件は休日で、他は思う通りにはいきません。
 そういう条件とは性格の異なった変動要因もあるのかもしれません。最近は、花を売り物にする観光地が増えて観光に選択肢も増え、出かける人もここだからこそ、というのではなく移り気になっていることも考えられます。マンジュシャゲも、幸手市の桜の名所である権現堂堤が15万株と称して売り出し中です。
 社会的な背景や心理的要因も長期的にはあって、その萌芽が出始めていることも考えられます。観光の専門家でもないのでその辺のことはわかりませんが。
 また、その観光地がその地域特有のよさにどれだけ磨きをかけて、訪れる人にそれを分かってもらおうとしているか、人々は意外にその辺のところを感じ取るのではないかと思われます。その地域には備わっていないことで客集めをしていないか、無理をしていないかなど。巾着田にはマンジシャゲをはじめ地域特有の良さが複数ある(あるかどうか、その軽重の判断が人によって異なるのですが)わけですから、これからも“磨き”は十分掛けられると思います。
 いずれにしても、何か増減については、市の観光振興・産業振興の関係者が何らかの分析をしていることでしょう。聞いてみたいですね。
 さて巾着田の最近の様子です。平成19年から巾着田は「第二次巾着田整備事業」とも言ってよさそうな活況を呈しています。「第二次整備事業」という言葉は私が勝手に付けたもので、市や関係者ががそういう言葉を使っているわけではありません。しかし、事業の規模や種類の多様さを見ると、私には「第二次」といっても良いくらいだと思います。もちろん、それにかける「意気込み」も大きなものです。
 「第一次」は、何かというと、平成3年から開始され平成平成6年まで3年を費やして推進された「巾着田整備計画」です。約9億円の予算で整備され、現在の巾着田の基本的配置・骨格が完成しました。これについては、私も編集に参加して発行された、ボランティア団体のソクラテスの会の『提言 市民の財産巾着田を考える』(全90頁)に詳しく触れられています。この報告書を読めば、巾着田の歴史的経緯と特徴、課題の全体像を掴むことができます。
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 『提言 市民の財産巾着田を考える』目次
Ⅰ 提言の背景と趣旨
 1 提言の背景
 2 提言の趣旨
Ⅱ 政策としての巾着田
 1 きっかけとなった巾着田ダム湖計画
 2 巾着田整備はここから始まった
 3 巾着田の本格整備はじまる
 4 巾着田整備事業の概要
 5 「高麗地域の観光活性化に関する提言」
Ⅲ 巾着田の自然遺産と歴史文化遺産の評価
 1 巾着田の自然遺産
  ① 高麗川と河川敷
  ② 堤防の外側
  ③ 堤防の内側
  ④ 巾着田の外周景観
 2 巾着田の歴史文化遺産
  ① 『検地帳にみる耕地開発の変遷』
  ② 『農林水産業に関連する文化的景観に関する調査研究』
Ⅳ 巾着田のあるべき姿
 1 ソクラテスの会会員のアンケートから
 2 巾着田に関する公開出前講座
 3 記録映画「白神の夢」上映
 4 寺家ふるさと村を訪ねて
 5 景観三法
Ⅴ 提言――巾着田のあり方と施策としての方向性
 1 巾着田の自然遺産と文化遺産の評価を
 2 田の復元を
 3 現在ある資源の活用を
  ① 巾着田に至近の公共施設の活用
  ② 交通混雑に先進地の知恵を
 4 巾着田と日和田山地域の景観形成そしてまちづくりへ
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 最近の巾着田都市公園としての整備が進んで、その成果が表れてきています。全体が小ざっぱりとして観光地としての体裁が整ってきたように感じられます。今後も細かいところの整備が進んで、心地よさが増していくことでしょう。細かいところではない大きな事業もいくつかあります。
 1 天神橋たもとの新井家住宅の取得 修繕調査も含み  1憶6000万円
 2 あいあい橋の改修も含む巾着田田景観環境整備事業 約1億円
 3 管理事務所裏の土地の取得               1000万円
 4 その他
 正確な数字は不明ですが、表に出ている数字だけを足しても約3億円近い予算が投じられます。新井家住宅の改修や近隣の土地取得でさらにお金はかかりそうです。また懸案となっているトイレの改修・増築などの課題があり、それらの方針によっては、施設の再配置が起こり、予算の裏付けが必要となるでしょう。
 計画や現状の進行している計画が全体的な総合プランとしてどう位置づけられていくのか、まだ提示されていません。その点、平成3年整備事業は詳細な計画がありました。個別の進行でいくのかもしれませんが、個別案件がいろいろあるわけですから全体的なプランがほしいところです。