ピケティ『21世紀の資本』




池袋のジュンク堂にあったピケティの『21世紀の資本』の販売促進スポット。全部で3箇所もあった。この700頁、5940円の翻訳本が15万部。すごい、としか言いようがありません。
本が売れるときは、新聞、雑誌が騒いでテレビが取り上げて、出版元がドカーンと広告を打ってと、この大衆への波状攻撃の波が何回か続き、次第に終息し気が付いた時には静かに忘れられていく、というのがパターンです。
そして潮が引いたときには、返本の山で莫大な赤字という例もあります。過去のベストセラーを見ると、よく、まぁこんな翻訳本を、何で買ってまで読むのかな、と思うものもあります。最初からベストセラーをねらってブロックバスター(出版販売のメディアミックスの手法)で出て行く場合も多いですが、なぜ売れたのか分からないという、ケースもあります。
21世紀の資本』は、世界の格差構造の進展という環境がふくれあがった中での出版で、原書の英訳版は発売当初から驚異的な売れ行きだったようです。日本でもその事情は同様、訳者に山形浩生という人気評論家を採用したのも成功の要因かもしれません。ジュンク堂で本を手にとって厚みを実感して、これは積ん読本の崩れるのを防ぐ壁にいいかな、と思ったのですが、重いので持って帰るのが大義になりそうで買うのはやめました。
版元のみすず書房は岩波と並ぶ硬派出版社で、私も学生時代からここの刊行物を随分読みました。白地に簡単なあしらいを施すカバー装丁は今も昔も変わりない。目立たない地味な出版者ですが、刊行リストを開けばその出版資産の巨大な実績・功績が輝きます。ピケティ教授に世間が大騒ぎをしているのに、同社のHPは淡々としたものです。
山形浩生氏のブログを見ていたら、東大で行われたピケティ教授の講演会の様子が書かれていた。講演をぶちこわす東大教授への臨場感ある批判を含めメチャクチャ面白い。新聞の報道ではこんなことは全く書かれていない。
■[ピケティ]ピケティ東大講義:教授どもは機会を無駄にするな!http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20150131/1422715115
世界、日本のピケティに関する発言状況とそれに対するこの天才バトル評論・批評・翻訳家のコメントを読んでいると、ピケティが理解できたような感じになってしまいます。なんと言っても具体的な名前入りで、遠慮なし、手加減無しの発言だから面白くないはずがない。読んでいると、自分自身の誤った知識や認識不足を見透かされてしまったような感じにもなります。とは言っても自分は自分、天才は天才です。
沢山のピケティ解説本が出て、よく売れているそうだが、訳者の山形浩生自身が書いた草稿段階の解説もアップされており、自由に使ってくれ、ですと。これはいい。
■[ピケティ]ピケティあんちょこ、あげよう。http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20150131/1422682224
山形氏の格差是正論。金持ちと企業の負担をドーンと上げる考え方で、私にも理解でき、そうだな、と思わせることもいくつかあります。
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/
ピケティの議論をもとに、格差を減らす提案をいくつか考えて見た。
まず、技術の状態は重要だし、技術の方向性は内生的なので、それを頑張ろう。政府は、人間雇用を増大するイノベーションを奨励しよう。
消費者市場において労使間の交渉力のバランスを回復しよう。
所得税はもっと累進的に、トップ1%は最高税率65%に。
万人に生活できる賃金を政府が保証すべき。
雇用者は倫理的な賃金を保障すべき。これは政府調達の要件にすべき。
投資所得の税率を上げよう。稼いだ所得への課税を下げよう。
年次資産税を検討しよう。
相続税贈与税への課税を強化しよう。
政府は個人貯蓄への利率保証をしよう。
貯蓄者や負債者の利益を代弁する制度にしよう
万人に、成人になった段階で資本支払いを行おう。
EUは社会保護、特に子供のBIを導入しよう