犬のフン害

犬のフン害について相談を受けました。
ネットで調べてみると、怒りに満ちた声がインターネットに溢れています。どこの自治体でも、犬、猫のフン害の苦情には苦慮しており、条例を定めている所も多いが、罰則無しでいかんともし難いのが実情。
日高市では環境保全条例に規定がありますが、罰則無しの条例です。下に関係箇所を抜き書きしてあります。担当部署は市民生活部環境課なので話しを聞きに行ったら、生活環境担当が応対してくれました。まずは、市の警告看板なのですが、すでに御願い看板、警告看板は設置してあるので、事はそういうレベルではないことを説明。
取り除いても、毎日、毎日、繰り返されることについて、普通の常識ある市民にはなかなか理解できない行動です。これだけ、世の中に怨嗟の声が満ちあふれていても一向に減らないと言うことは、常識が壊れているとしか言えないのですが、飼い主の常識に訴えることしかありません。それ以上となると、役所への苦情となります。
役所は、その苦情や対策要請を行政サービスとして受け付けるのかどうか。市としてそのサービスについてこうすべし、という決まりがあれば、当然のことながら仕事となるわけです。
日高市の場合、下に書き出した環境保全条例の第84条の(指導)です。その前段に定義してあるフン害防止を行っていないときは、「当該飼主に対し、必要な指導をすることができる」とあります。
説明によると、飼い主が特定できれば、担当が出向いてフン害防止の指導、つまりフンを持ち帰ることを御願いする、とのこと。当事者同士のやりとりに代わって、条例という公的な裏付けによって行動できるわけです。それにしても、仕事とはいえ、こういう日常の常識・反常識に関わる担当はご苦労なことです。
それでは、役所の行動の規範である条例がなかったらどうなるのか。ネットを調べていたら、とてつもない文章に出会いました。「行政改革と市条例の必要性」という文章で、A4で22ページの重量級の文献です。
驚きました。タイトルからは想像できないのですが、全編これ、犬のフン害防止についての考察・論証です。しかも、です。お隣り、飯能市の住民による文章でした。
感心しました、本当に。犬のフンについてこれだけの「前提、実例、分析、論証、結論」……ざっと読んでみて“完璧”という感じです。すごいなぁ、と言うしかありません。私が、そのすごさを解説するより文章を実際見てみたらいいです。
と言っても分からないでしょうから、超簡単・簡潔に書くとこうなります。
・平成18年度飯能保健所廃止で、増加傾向にあった犬のフン害対策の持って行き場所がなくなった。
・市は「飼い主のマナー向上」の強調のみ。環境保全条例に指導権限を明記してない。日高市他近隣のように明記すべき。
・「行政が犬に掛かり切りになる」という議員の理屈もおかしい。
・条例という公的裏付けがあれば、住民と行政の協働で解決に向かう。
思い切って4センテンスで書くとこうなります。先に書いたように条例の必要性を説く論証は完璧です。これだけ、事実と状況を正確(と判断できます)に取り上げ、それに基づいた主張となると、反論の余地は無さそうです。
この文章は、飯能保健所廃止の直後に書かれているようなので、平成18年頃だと思われます。さて、肝心の飯能市環境保全条例に犬のフン害についての改正はいつあったのか。調べてみると、平成21年に条項が追加されています。文章が発表されて4年後でした。
筆者は、愛犬家、愛猫家で、立派なHPをお持ちです。いくつかの文章を読むと、市民社会で、動物と生と死を共にし共存して生活する意義と重要性について強調されています。犬のフン害は、そういう著者の思想に沿った市民社会のルールとしての訴えでした。
私が敬服に値すると思ったのは、とにかく事実を調査し裏付けをとり、冷静に分析・説得していくその論法と態度です。長年の動物愛護で普段からの考えがあったのでしょうが、かくあるべし、と思いました。
筆者のHPは愛犬と愛猫と犬のフン害等の文章が大半ですが、公共工事に関するものが一遍ありました。この書き方も同様です。
思いました。一般的に言って、こんな人が議員になるべきだと。

 
日高市環境保全条例(平成9年、平成13、14、18、23年改正)
第3章 生活環境の保全
第5節 飼犬のふん害等の防止
第82条 この節において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 飼犬 飼養管理されている犬をいう。
(2) ふん害等 飼犬のふん尿により公共の場所等を汚すことによって市民の生活環境を損なうことをいう。
(3) 飼主 飼犬の所有者等をいう。
(飼主の遵守事項)
第83条 飼主は、飼犬のしつけを適正な方法で行うとともに、飼犬を公共の場所等で運動させる場合は、ふん害等を防止するため、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 綱、鎖等でつなぎ、飼犬を制御できる者に運動させること。
(2) 飼犬のふん等を適正に処理するための用具を携行し、公共の場所等を汚したときは、他人に迷惑を及ぼさないよう直ちに処理すること。
(指導)
第84条 市長は、飼主が前条各号に規定する事項を遵守していないと認めたときは、当該飼主に対し、必要な指導をすることができる。