机と中学生


 母の所にあった机を運びました。これはいわく付きの机です。
 一昨年、母が背中の骨の骨折で入院し、退院してからの介護保険の要介護審査で認定されませんでした。しかし、入院前は介護認定1で昇降装置付きの椅子が借りられたのが不可能になってしまった。
 このため、家具売り場を巡って代替できる椅子を探したが結局ない。ずいぶん探したが、家具ショップにはそもそもそういう椅子は置いていない。検討した結果、高めの机と椅子が立ったり座ったりしなくてよさそうということになって、机の上にいろいろなものを置くことも考え、リサイクル店で相当大きな机を買った。
 結局、それも使い勝手が悪く不要になり、そうこうするうちに認定1が付いて昇降椅子を借りることができ、今はそのお陰で日常が成り立っている。この机にはそういう経緯がある。
 しかし今書きたいことはそういうことではない。
 この不用品が、また格別に重い。部材が何か特殊な重い材料でできており、相当な力があるはずの私が動かすにも難儀なのである。思い切っての移動である。部屋から持ち出して軽トラに向かってズルズルと引っ張っていった。
 目の前を中学生くらいの男の子が横切っていったのは気がついた。その直後である。後ろから声がしました。
 「だいじょうぶですか。手伝いましょうか」と。
 後ろを振り向くと、団地1階の入り口に今通り過ぎた中学生が立っていた。言葉を発したのは彼でした。私は思わず「うん、だいじょうぶ。ありがとう」と返事をしました。ただ、これだけのことなのだが、非常に気分が良かったこの経験を書き留めておきたいと思った次第。彼は、高根中学校の生徒であろう。