鈴木修『俺は中小企業のおやじ』


 この本はずっと前から読みたかった本です。最近、2冊同時に購入し、寝る前の5分間読んでいました。鈴木氏の本は読み、宅急便の小倉氏は読んでいる最中です。
 この2冊は、実は沖縄での次男の結婚式に行った際、買いました。ホテルの近くにあった大きな書店を通り抜けるとき、偶然、2冊並べて目立つように平積みで置かれていたのが目につき、そこで即購入です。
 まさに書店員の目利きの勝利、2冊並べてディスプレイした効果で、私のような衝動買いを誘発するに十分な商品陳列でした。書店員も配列・構成の編集能力が求められる時代ですが、まさにピッタリコンの“あっぱれ”でした。
 私はスズキ会長兼社長の鈴木修氏の言動が好きで、この人がマスコミに出て吠えるのを見るのが楽しみでした。めったに出てこないのですが、大きな節目には必ず出現します。その時は、他のどんなニュースを見るより面白く、痛快で、見た甲斐があった?と思わせる満足感を感じます。
 この方の工場視察のテレビを見るのも面白かった。また、提携がまだ日本メーカーの生き残りを賭けての戦略として定着していなかったとき、早くからGMをはじめ世界大メーカーを相手の“がっぷり四つ”相撲の経過を見るのもおもしろかった。
 常時ウオッチしているわけではないので、見逃しているのも多いと思うのですが、マスコミも心得ていて、節目の時は必ずニュースに流してくれるようです。
 最近の節目は、2つありました。記憶で書いているので事実と違う点があるかもしれませんが、私の頭に残った“事実”であることをお断りしておきます。
 一つは、ドイツのフォルクスワーゲンとの合弁事業解消をめぐること。世界的大メーカーの、軽小メーカースズキを侮る傲慢なやり方に頭にきて、合弁解消を突きつけたこと。
 二つ目は、浜岡原発に近いエンジン工場と海に近い技術拠点を移転し、地震津波に備える態勢をとったこと。
 個々の経営判断の評価はいろいろあろうが、私はただただ、この方の言動に関心があるのだ。なぜかは分かりません。昔からそう感じていたので。 かと言って、何が面白いのかを言わないと、ここに書く意味がありません。
 一つは、経営者として結果としての独裁であっても独断ではないこと。
 二つは、全組織反対を押し切って、潰しにも抗して礎を築いたこと。
 一つ目は、意思決定にリーダーとしての責任をかけるまでに至る経過に、事実と合理への周到な判断があり、それが私のような部外者としての一ギャラリーに感じられることです。読んでみると、100%社内反対に抗して困難を排してきた歴史でもあった。これは知らなかったが痛快です。
 小学生の時、卵をふくらましたような形をした昔の360ccくらいの大きさの4輪車?(3輪車だったかもしれない)を時々みかけたことがあります。名前は「スズライト」。スズキが当時作っていた2サイクルバイクエンジンを流用した車です。
 4輪車戦国時代の到来を前の先駆け的な車です。車内に2サイクル動力を後輪に伝えるチェーンが通っていました。車のメカ大好き子供だった私の関心をとらえて、頭に鮮明に残りました。こんな記憶があるからもしれません。
 本を書いた2009年が79歳。いま81歳。「俺は中小企業のおやじ、生涯現役としてまだまだ走り続けます」。がんばれ、もっとテレビに出てほしい。元気の素です。
 よく世間は、若い者にやらせるべきといいます。総理も社長も市長も町長も、あらゆる組織の長を……。しかし、こんな通言を聞くことはあるまい。物理的に若いだけでは取り柄にもならない。取り柄になるものは、若さではなく価値観である。ロートルはしがらみに捉われるから、加齢臭ふんぷんになるのだと思います。
 というのは、鈴木氏の本を読んでの自戒の念。御同輩にも、そうではないかという問いかけたいですが……。小倉氏の本も同様の感想になるかと思いますが、もう少しで読み終わります。またいずれ。

俺は、中小企業のおやじ

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小倉昌男 経営学

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