「何を言ってもムダ……」?

 5月25日は全員協議会と議員運営委員会が開催されました。
 全員協議会は法的な根拠のない会議ですが、重要な会議で3つのタイプがあります。今回の全員協議会は3番目です。例のごとく『必携』から書き抜いてみます。
 1 本会議関連の全員協議会
 本会議の審議が行われている最中に暫時休憩によって開かれる会議。審議の過程で何か問題が起こったときに意見の調整を行うために開かれます。議事を円滑に進めるためと言われるが、何がどう問題でどう調整されるかは、秘密で行われるので傍聴者や市民には過程がわからない。
 2 自主的意見調整の全員協議会
 3 市長が意見を聞くための全員協議会
 行政上の重要課題について執行部の説明会。市はそれを「報告事項」としています。形式的には市長が議長に依頼し議長が召集します。前回の全員協議会は5月13日でした。前回と今回の案件を併せ見ると、市の言う「報告事項」は市が進めようとしている重点施策や影響の大きい重要課題であることが分かります。
 しかし、なぜ「報告」なのか? 「報告」の意味は何なのか。この「報告」の定義は何なのか?これについては、確たる説明をしている資料はなく、市の議会事務局の解説の中にもありません。「日高市議会先例集」にもありません。
 他の議員に聞いても経験的な説明の域をでません。重要な会議でありながらこの会議の性格がキチンと把握されていないのは、「法的に根拠のない」ことが影響しているのか。ずっとこのことが頭にあったので、新米議員故に分からないので、ということで統一的な見解を求めようと思っていました。
 会議中に、正にこの疑問を象徴する言葉がある議員から発せられ、グッドタイミングでした。

○前回5月13日全員協議会の「報告事項」
東日本大震災等における日高市の対応について…………………(総務部安心安全課)
・市民集会「(議題)家庭系可燃ごみの有料化について」の開催について
                      …………………(市民生活部環境課)

○今回5月25日全員協議会の「報告事項」
・消防の広域化について……………………………………………(企画財政部 企画課)
・高麗郷古民家(旧新井家住宅)等利活用事業実施計画書………(市民生活部 産業振興課)
・武蔵台・横手台地区の公共下水道化について…………………(上下水道部 下水道課)

 このように並べてみると、現在進行中の重要施策が並びます。「報告事項」について各担当部長から説明があります。
 この説明の後に議員の質問があります。手を挙げての早いもの勝ちの質問で、誰でも自由に質問ができますが、事項に関係のない質問や余りに重箱の隅的なものは議長に注意されたり、他の議員から質問停止の声が上がります。
 さて、表題「何を言ってもムダ……」の結末を先に書いてしまいます。
 何のテーマか忘れましたが、あるベテラン議員が質問の冒頭に「何を言ってもムダかもしれませんが……」と言ったのです。その後の質問(質疑か?)でもう一回使いました。
 思わず、これは聞き捨てならない言葉だと思いました。何回も全員協議会を経験したことから出た本音ではないか。前後に私が推測する言葉を補ってみます。
 「もう決まっていることだから、いまさら何を言ってもムダでしょうが……」ということになるのではないか。うーん、これは私の疑問の核心に迫る言葉です。
 即、私は手を挙げ言及しました。
 『いみじくもB議員が、質疑を行うことに関して“何を言ってもムダ”と表現したが、これは何を意味することなのか。われわれ新米議員は、執行部の「報告事項」について「報告」の意味が分からない。これをどう解釈したらいいのか文書で回答してほしい』と。
 2、3のやりとりの後、執行部に答えを促したところ、帰ってきた答えは、「真摯に検討します」ということだった。当然予想された答えだったが、大体、見当がつきました。2つの意味がありそうです。

 a. もうすでに決まっていて実行する、あるいは実行過程の施策である。したがって何を言われても変えるつもり はないが、重要なことでもあるので一応、議会にも報告しておく。
 ――「ムダ」発言に象徴される意味としてはこんなことでしょうか。議事録を取っているわけではありません。これは、やはり言いっ放しのガス抜きみたいなものか。それにしては重要な案件ばかりで、質問に値する項目も多い。
 b. いずれ議案として提出する事案だから、そのことに関して若干の情報を提供するので、そのつもりで検討して おいてほしい。
 ――議会に提案予定の案件に関して事前の情報を提供する意味があるようです。実際、今回の報告事項のうち、「武蔵台、横手台地区の公共下水道化」は条例を策定して行う予定でそれは次の定例会に上程、と説明がありました。
 『議員必携』では、このタイプの全員協議会を問題あり、としています。
 「事前協議型の全員協議会は、議会と(市)町村長が一歩離れて提案と審議そして議決と執行の権限を分かち合う大統領制の組織原理にももとり、議会の権威を失い、(市)町村長の責任体制も否定されることになりかねない。このような全員協議会開催の(市)町村長の要請には応じない気骨と心構えがあって然るべきである」と立派なことが書いてあります。
 また「行政上の重要課題について議会の基本的考え方を聞いて参考にする全員協議会の開催は、必要最小限にとどめることが肝要」とあります。
 これは、2つの非常に重要な意味があると思います。
 つまり「報告事項」は賛成、反対にかかわらず、「報告」したことで議会は了承したとみなされ実行されるわけです。また、ここでも「報告」から“逸脱”とみなす質疑に対しては制止がかかり、執行部の報告通りの思惑が働きます。各議員の発言に対しては、執行部は暗黙に「真摯に検討」して終わりです。
 もう1つは、一般質問との関連です。25日の「報告事項」は6月定例会の一般質問の締切りが過ぎた後でした。重要な案件であれば締切りの前に「報告」を行い、議会の審議の対象とすべきです。締切り時点で「報告事項」の内容は分からず、したがって一般質問では触れられずそのまま通過していきます。各議員の関心に応じて提出された質問項目に、たまたま関連する場合はあるかもしれませんが。
 これほど重要な会議であるのに言いっ放しで、会議録はありません。法的に根拠のない会議だから記録も作る必要はなし、ということかもしれません。どこに書いてあったか確認できませんが、『必携』によると、全員協議会への出席途上で何か事故があった場合は、労災(多分この表現だったか?)の対象にならない、とのこと。
 私の場合は、前回13日の全員協議会の「報告事項」の中に「ごみの有料化」という市民生活に関連する重要課題が含まれていたので、当初考えていた一般質問のテーマを変更して構成しました。
 慣例と前例にしたがって議会の諸会議が行われていますが、議会の機能が働かない仕組みが隠されていると思います。議会と事務局のある4階に入ると、慣例と前例の世界に入ってしまい、思考も自然にそこに吸い込まれて停止してしまう恐れがあります。そこから市民との遊離が起こってきます。