デフレとあんパン戦線


 あんパンが好きで、買物の際には一つか二つ籠に放り込みます。
 あんパンは姿形は同じだが、味は結構ちがいます。それ程、味に神経質ではない私でもそう感じます。以前、あるコンビニの宣伝文句にそそのかされて買って食べたあんパンは、不満が残りました。はっきり言って旨くない。原料の小豆の質だと思いますが、あんがおいしくない。
 あんパンは三位一体の満足感が必要です。姿形、袋で持った時の感触、袋から出した時の感触、もちろん食味、おいしさなど。別にいつもこれらを意識しているわけではありませんが、瞬間的、全体的印象でしょうか。以前は主としてキムラヤのあんパンを買っていましたが、その場に応じてこだわらずに、いろいろ買ってみます。
 昨年の秋ごろだったか、スーパーのあんパン売り場に異変が生じました。88円のイトウ新顔が売り場を占領し、その他のイトウ菓子パンも88のはちまきをし、隊列を整えて、ヤマザキ陣地を攻略していました。これはすごい、あの日本パン市場で優位を占める大大名に反旗を翻し攻略の布陣を敷いた、の図です。
 デフレの値下げ合戦がついにあんパンに及び、熾烈な戦いになりました。庶民の嗜好に関わる大事件です。値下げは自分の取り分の利益のカットか、材料コストの圧縮か、二つに一つ、あるいは両方かも。
 味に影響必至か。88の迫力に押され買ってみました。しかし間髪を入れずに、ヤマザキは58の陣笠を大量に投入し、デフレの恩恵わが方からと時の声を上げ、後方を固めて人気先取りの戦略。
 そして、時を置かずに88を投入して正面からのガチンコ勝負。客層が異なるキムラヤも、札をチョコチョコと変えて様子見です。
 さて結果は? 双方入り乱れての陣地合戦のようですが、地力に勝るヤマザキが優勢か、分かりません、これは。調べたわけでなく、時々行くスーパーでの印象です。
 あんパンと言う身近な商品で繰り広げられた、恐ろしきデフレ合戦の感想です。全く個人的、主観的、感じたままの感想で客観的な市場背景を踏まえたものではありません。
 これだけの値下げでやっていけるスケールメリットが透けて見えます。仕入材料の値下げの圧力で泣く人々がいるのかもしれません。
 ところで、本当においしいあんパンはどこにありますか。地元パン屋さんに隠れた逸品があるのかもしれません。