稲刈りの日の朝、今日もTVに足止め

 正式な名前は知りませんが、日曜の朝、よく“ちら見”するテレビ番組。企業経営者をゲストに、成功したビジネスノウハウを開陳してもらったり、ヒット商品の開発話しを披露してもらったりする番組です。森永“貧乏”評論家も時々出演し、世の中のものの動き、金の動きについての解説をしています。
 今朝も面白い話を耳にしたので、テレビを正面から見ました。
 途中から見たので分からなかったのですが、ある時点で、ゲストは住宅関係の人だと分かり、そしてもうしばらく見て、住宅建築会社の社長だと分かりました。
 その社長氏いわく、日本の家を作っているのは小さな工務店が70パーセント、残り30パーセントが大手ハウスメーカーとのこと。これには驚きました。漠然と思っていたのは、逆の状態ではないかと。武蔵台でも団塊の世代が定年退職し、数年前から改築・新築があちこちで進みました。それを見ると、大体が大手ハウスメーカーが多いのではないかと思っていました。しかし、統計的にはそうではなかったのです。
 ゲスト氏は、小さな工務店の力を伸ばすにはどうすればいいか、そのノウハウの開発に心血を注ぎ、技術と経営の体系的仕組みを編み出しました。そのために、住宅部材と内装材、機具などあらゆる製品をテストする家を5棟も作り、そこに次々と移り住んで吟味し、コストや品質をチェックしてきたという。
 その結果、いい家を低コストで建築することに成功してお客さんから喜ばれ、その評価は口コミで広がり大成功を勝ち取りました。それだけではありません、すごいのはここから。
 何と集積したノウハウを完全公開してしまったのです。普通はそれだけの時間と労力をかけた成功ノウハウは秘蔵のものとして、さらなる飛躍の武器とするのが競争にさらされる企業の常。すべてを折り込んだシステム集を全5冊?、500万円で売り出しました。“すべて”です。この通りやればうまくいく、というノウハウすべて、全部でなければ意味がないのです。
 この場面の後、これを購入した一人でやっている小さな工務店のレポートがありました。11年前独立した時は、年に2棟しか仕事がなかった。それが今や年22棟で売上も急上昇。「儲かってます」という表情は明るい。どん底のなかでの500万円の投資は厳しいものだったが、今思えば安いものでした、と若い工務店主氏。
 それはそうだろうな、と思いました。デザインの考え方や家のデザイン集まで、実際的なすぐ使えるノウハウ満載、しかも、吟味を経て取り入れられた部材の評価も含んだ見積もりシステムまで入っているという。それまでは見積もりに1週間かかりきりだったのが、1時間?で済むという(?は数字が記憶で少しちがうかもしれません)。
500万円で安い、2500も売れて125億円
 工務店がいい家を建てられればいい、と技術を公開したゲスト社長氏も、500万円のノウハウ集が2500セットも売れ総額125億円の売上げ。こちらも大成功でした。ウィンウィンの話を聞くのはいいものです。
 面白かったのでずっと見ていたら田んぼに行く時間が過ぎてしまいました。準備は昨日してあるので何とかなります。ふと思いました。ホームセンターの農機具担当氏のやり方もこれと同じようなことだろうと(http://d.hatena.ne.jp/hideoyok/20090916/p2)。いずれにしろ、当事者がみなハッピーになれればいいのです。
 もう一つの話。
 以前、住宅建設が進む地域で聞いた、請負工務店さんの話。住宅会社に専属らしい。
・全体の坪単価が安い枠組みの中で決められた額が坪数に応じて工務店に割り振られる。
・自ら請求書を出すのではなく、最初から決められた額でやる。
・決められた額で決められた期間で完成する。いずれも超過すれば自分で算段する。
・坪数は床面積のみ。建て坪ではなく、吹き抜けやベランダなどは入らない。
・機械や道具はもちろん自前だが、釘や金具も自前購入。
 「これを2ヶ月でやって○万円、いろいろな経費を引けば○万円。生活できないよ」。
 工事現場で私はよく話しかけてみます。かける言葉は「忙しそうで景気いいんだろうね」です。
 ところが返事は、「仕事やってりゃ景気がいいんだ、なんて思うなよ」「とんでもないよ」「隣りの芝生は青くないんだよ」「活かさず殺さずの下請けだよ」「機械を持っているからやっているようなもんだ」など。
 工務店土木工事業者のもう一つの一面です。詳しい実態は知りませんが、特に民間工事では、下請け関係の過酷な現実があるようです。

 稲刈りの朝、テレビを見てから急いででかけました。