トウキョウサンショウウオ

 2、30年前は畑だったが、いまは草ボーボーの荒地を耕しました。大体、畑は不耕起かそれに近いやり方をしていますが、耕作放棄地を畑に復元する時は、やはり耕運機やトラクターで耕します。
 “荒地”と言いましたが、使い方によってはこの言い方は正しくありません。人手が入っていないことによる見かけ上から言えば、確かに荒れています。しかし、この“荒地”は豊穣の土地です。ほとんどの場合、耕作放棄の時間が長ければ長いほど、豊かな土地になっています。
 どのような意味で豊かなのか。二つあります。一つは、人手が長年入っていないためそれだけ自然相が豊かであること。谷津田であったところや水辺に近い場所は、特にそうです。
 もう一つは、農薬や肥料の人為的付加が長い間行われなかったため、それらの毒が完全に抜けています。そして有機物の堆積や生物の循環によって、非常に地味豊かになっています。
 ある時テレビを見ていたら、確か農業に関する番組でした、会社組織の農場の責任者と称する人物へのインタビューがありました。その人物は、荒地大歓迎、耕作放棄地OKというようなことを言っていました。それを聞いて、私は「お主、出来るな」と思わず言ってしまいました。その農事法人は、あの居酒屋チェーンの「わたみ」の関連会社でした。
 つまり、荒地は豊穣な土地なので、トラクターで1回耕して作付すれば高品質の野菜が出来ることをよく知っているのです。ここに、無肥料栽培の大きなヒントがあります。その話は追究すると自然農業の原理と体系に通じます。
 さて、今日の本題、“荒地”の豊穣の第一の意味、自然の豊かさに関してです。今日、私は写真の畑のさらに低地にある耕作放棄地を耕しました。その時現われたのが「トウキョウサンショウウオ」でした。耕された土の上でぐったりしていたのを見つけました。
 このトウキョウサンショウウオは日本固有の両生類で、現環境省編纂の『日本版レッドデータブック』の「絶滅のおそれのある地域個体群」に挙げられています。里山谷津田周辺や森林に生息しています。

耕した場所は、一段と低い所です。

トウキョウサンショウウオ。写真がぼけてよくわかりませんが、小さな出目でとても愛嬌のあるかわいらしい顔付です。