ビジネスインテリジェンス研究会

 市ヶ谷の私学会館で開かれた日本ビジネスインテリジェンス研究会の勉強会に出席しました。会長の中川先生、顧問の石川先生の共編著『知識情報戦略――ビジネスインテリジェンスからナレッジサイエンスへ』が出版されたことを祝い、執筆者の報告も兼ねた勉強会です。出版記念パーティーは昨年11月に行いました。!! 実は編集の都合で刊行が遅れ、今月になってしまったわけです。
 しかし、遅れての刊行だけに充実した内容になりました。私も、出版社に原稿を入れるまえの構成・編集をお手伝いしました。目次を見ると、基本的な構成は踏襲されているようです。執筆者が増えて随分補強された内容となったのは非常によかったと思います。特に応用分野で専門家の原稿によって広がりが出ました。

 中川、石川両先生以外の執筆者は、フランス情報サービス産業協会日本代表の橋田久仁雄氏、日本IBMアプリケーション・ソルーション株式会社執行役員の成田徹郎氏、経済ジャーナリストの根上泰氏、元防衛大学教授の杉之尾宜生氏の各氏、当初より3人増えて充実しました。
 カバー袖には日本IBM最高顧問の北条恪太郎氏の推薦文があります。
 中川十郎先生の長年の夢を実らせた本です。1992年に日本ビジネスインテリジェンス協会は設立されました。当時、中川先生は総合商社ニチメンの新事業担当として多忙な日々を送っていました。ニチメンの会議室や帝国ホテルのロビー喫茶室で創設講演会やや初期の啓蒙イベントの打ち合わせを行ったことなど、17前の懐かしい思い出です。
 当時はビジネスインテリジェンスという言葉は全く日本に馴染みがありませんでした。欧米のビジネスや情報教育では当たり前の概念、実践手法として使われていたのにです。著しい落差があったわけですが、この現象にはほとんどの人が気がついていませんでした。日本では学問とビジネスをつなぐ実践が不足しており、特に情報概念、手法には全くと言ってもいいほどの空白状態でした。
 これにいち早く中川先生は注目しました。恐らく日本で初めてビジネスインテリジェンスを紹介されたと思います。それが17年前、以後、ビジネスをはじめあらゆる分野の、つまり意思決定を伴うすべての事柄に共通する根本的実践理念としてのビジネスインテリジェンスの重要性を、中川先生は訴えてきました。今回の出版はその成果です。
 17年間続いている勉強会は、それは私にとっては素晴らしい勉強の場でした。毎回、2〜3人の講師を招いての勉強会はあらゆる分野の先端知識を学習する機会を与えてくれました。と同時に、発表者がいかにインテリジェンスを踏まえた情報の取捨選択を行っているか、判断と選択の基準は説得的か――など、情報とインテリジェンスの能力とセンスが評価される場でもありました。私は、この勉強会で所属企業の知名度や肩書きや経歴とは別の、いろいろな意味での包括的な判断能力を養えたと思っています。
 一次情報を収集し、その中からいかに有効な情報を選択し、それを加工して二次情報とし、それを使っていかに最適・最高の意思決定を行うか――ビジネスインテリジェンスをワンフレーズで表現すると、以上のようになります。したがって、「ビジネス」という言葉が冠していても、全ての情報ステージに適用されるものです。
 もちろん自治体、行政の分野でも適用されるもので、多様な市民の要望が錯綜する行政の分野では、もっとビジネスインテリジェンスは認識され、日常のツールにならなければなりません。
 そいういえば、中川先生とNTTの香取さんが訳し、私が編集・発行した『グローバル時代の情報組織戦略』は、宮崎県職員の情報研修テキストとして随分早くから採用されていました。インテリジェンスの意義を理解した幹部がいたからこその研修科目としての設置であったと思います。
 それにしてもいつも参加されているドクター中松氏は本当にお若い。総アルミ製の家を新築し電磁波をバリアーしてますます健康そうです。
 一方、守誠さんもお若い。もう70代で病気も抱えているというのに、世界各地に出かけていく取材計画を話し、国際医療列車を走らせる夢を語ります。車を使わない主義で、どこに行くにも歩いて行くからもっているんだよ、とは守さん当人の弁。部屋を抜け出しロビーで久しぶりのおしゃべりでした。