勉強会の新しい試み

実現した大学と市民の共同研究発表会

 2月最初の「日高まちづくりフォーラム」勉強会。昨年来、市の財政課題を今までとは違った形で勉強しようということで、テーマの提起を行ってきました。難しい理論・理屈ではなく、もっと生活に即したあるいは日高市の実例に即した親しみやすいテーマ設定と学習方法の模索をしてきました。
 その結果、実現したのが、聖学院大学経済学部との共同研究の成果を発表する会です。
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 “大学と市民の共同研究発表会”
 「日高市財政と移送サービス」
  3月1日 13時30分〜15時30分 高麗の郷 生涯学習
  聖学院大学准教授 高端正幸氏の講演「日高市財政をどうみるか」
  高橋准教授の受講学生「日高市の交通弱者対策と移送サービスの可能性」
  日高まちづくりフォーラム「市民によるまちづくりと財政学習の意義」
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 講演と研究レポートと活動報告を織り交ぜたプログラムです。この企画のそもそもの発端は、市議の川田虎男さんが同大学の出身であり、高端先生との話の中で出たことが授業の目的にも適うということで、出発したものです。川田さんも、この企画で日高市のことが内外に知られることになるので非常にいいことだ、という思いで実現に努力されました。
 高端准教授の授業の目的が、学生自身でテーマを選び、学生に実地調査を行わせ、まとめる、ということでした。広くテーマを検証し選択するためにも、説明を日高市民にしてもらう必要があるとのことで、「日高まちづくりフォーラム」で個別テーマと財政を勉強していた私も、川田さんの誘いに応えてそれに参加することになりました。
 テーマについて高端先生が学生に課したことは次の4つです。
 1 日高市の具体的政策課題からテーマを一つ選ぶ(高齢者福祉、教育、産業、環境、市街地活性化などから)
 2 テーマとする政策課題の具体的な現状を実地調査、ヒアリング、資料収集を通じて明らかにする。
 3 政策課題の現状と日高市財政の関係(どのような施策にどのような形態でどれだけの支出を行っているか。財源の確保は十分になされているか。それらの背景として日高市財政の現状はどうなっているか。近年それはどう変化してきたのか)を同様の手法で明らかにする。
 4 具体的な政策提言を示す。
 川田さんと私が、学生の事前知識の修得のために、其々日高市の現状を講義しました。川田さんが福祉関係について、私が都市計画や産業、まちづくりについてです。


聖学院大学での講義。黒板に貼ってあるのは日高市都市計画図
 そして学生が選んだテーマについて助言し、実地調査のサポートを行って、現在まとめ中です。こういう過程は、「日高まちづくりフォーラム」も個別分野の問題発掘と財政の分析という形で行ってきました。その結果、問題意識を共有し、効果的に発表を行えるということで「共同研究発表会」となったわけです。

合併の検討のために財政研究

 この会の前身である「合併とまちづくりを考える日高市民会議」の時代に、財政のことを勉強したことがあります。合併を議論するには自治体財政のことを知らなければ十分な議論ができない、ということで始めました。
 あの当時は、自治体の全体的な財政指標が問題でした。合併を考えての対象自治体と比較してどうなのか、という観点から共通の比較指標の検討がまず第一の課題でした。
 それまでは自治体の財政には、誰も正面から向き合い、考えたこともなかったので、まずはどういう勉強をすればいいのかからの出発でした。
 1 どこにどんな資料があり、どうすれば見ることができるか。
 2 どんな視点からみれば自治体の財政がわかるのか。
 こういう基本的な問題からの出発で、勉強する者の学習出発地点をそろえることがまず課題でした。試行錯誤の勉強を1年間続けました。その際のテキストとして使ったのが、当時、『住民と自治』に連載されていた大和田一紘氏「これならできる市町村財政分析」です。この連載を輪読しながらの1年間の勉強で、用語や指標などの基本的な意味を理解していきました。

連載をまとめた本、カバーがとれて汚い
 その際、もう一つのテキストというか資料となったのが、自治体の決算カードです。大和田氏の自治体分析の手法が、この決算カードを徹底的に解剖することだったので、勉強会も日高市の決算カードを入手するところから始めました。決算カードは自治体の1年間の財政状況をいろいろな指標に集約したもので、国が定めた形式と報告義務があります。
 これをタテヨコ斜めから自由に読み解くことができることが理想です。必然的に統計数字と計算と指標比較のしんどい作業となりましたが、何とか連載分を“消化”したというのが実情でした。
 そして、この勉強の過程で、大和田氏を講師にお呼びしての講演会を開催しました。
 「これでいいのか、市のお金の使い方――財政から考える地域社会像」
  平成16年6月 生涯学習センター
 「日高市の財政は本当のところどうなっているのか。決算カードをもとに、日高市のお金の使い方を詳しく評価・解説します。日高市の姿がトータルにつかめ、現状の各市民サービスから市の将来像まで具体的な理解と共通認識がすすみ、協働と参加の一層の進展のあしががりとなります」
 これが宣伝のチラシでした。この講演会は好評で一つのきっかけになったと思います。
 大和田氏は低額の講演料にも関わらず、快く引き受けてくれました。体系的な資料を準備してくれ、もちろん実践的研究を踏まえた話は分かりやすいものでした。講演後の懇親会にも出席され、私たちと親しく話した飾らない姿は印象深く残っています。各地で市民や学生を指導して市民版の財政白書を作成したという記事が時々新聞に載ります。
 このように決算カードの勉強を―応済ませましたが、実際の事業の内容と数字の検証というところまではなかなか行かなかったのが実情です。
 この財政学習以後は、簡単に言えば、その辺の不足を補うべく各分野の政策や実態の勉強を今日まで続けてきました。それももっと面白く学ぶためには、日常的な感覚での個別の施策を捉えていくことでした。